崩紫サロメさんのレビュー
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できるポケット Evernote 基本&活用ワザ 完全ガイド
コグレマサト, いしたにまさき, 堀正岳, できるシリーズ編集部 / できるポケットシリーズ
読書記録として、レビュー下書きとして利用する
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こんなペースでレビューをアップしているので、私は余程の暇人だと思われているのではないか、と思ったりする(笑)
が、そうというわけでもなく、スキマ時間の利用を心がけており、それにEvernoteが役立っ…ているという感じだ。
Evernoteはクラウドサービスの一つで、簡単に言うと
パソコンで書いていたものの続きをスマホで書くことができたりするので、
場所や時間を選ばず、作業ができる。その名の通りなノートだ。
Evernoteはとても自由度が高いので、どう使っていいかわからないという人も多いだろう。
いろいろ説明本が出ているが、これは基本の基本といえる操作から具体例まで丁寧に説明されている、
とてもオーソドックスなものだと言える。
私はもう4年くらいEvernoteを使っているので、技術的に新しい情報はそんなになかったが(そもそもシンプルなものなので)、「そういう使い方をする人もいるのか」と楽しく読めるところがたくさんあった。
コラムにもあったが”Evernoteは「使い尽くす」ことが必要なわけではない”という本書全体の姿勢に、好感が持てる。
Evernoteは梅棹忠夫が『知的生産の技法』で半世紀ほど前に紹介した「京大式カード」と発想が似ていると思うのだ。
それ自体は至ってシンプルなもの。
いつでも持ち歩いて、ひらめきをさっと記録し、あとで振り返る、そこで何かが生まれる、という感じが。
こう使わなければならない、ということは全く決まっていない。
本書にも読書記録としての使い方が紹介されているが、これとはまた別の私なりの読書記録の作り方を紹介する。
「メディアマーカー」という書誌情報を登録できるソーシャルサービスがあり、
これをEvernoteと連携させる(方法はメディアマーカーのサイト参照)。
それでEvernote内に1冊1項目の読書ノートを作り、空き時間にちょこちょこ書き込んでいく。
外出時に、読んだ本についてふと何らかの思いを抱いたら(←私はこれが結構ある)
忘れないうちにスマホからEvernoteの読書ノートを開き、書き込む。
ノートを探すのが面倒ならとりあえず「新規ノート」に思いついたことを書き散らして、
あとで該当書籍のページに貼り付ける。(マージという機能を使って複数のノートをくっつけることもできる)
Readerでハイライトをつけたところなんかも書き出してみる。
手書きメモなんかもスマホで写真を撮り、貼り付けておく。
スキマ時間に推敲し、それなりの形になったらReader Storeにレビューとしてアップ。
だいたい、こんな感じで私のレビューはできている。
本を開いているときよりも、本を開いていないときの方が、本について考えることの多い私にはEvernoteはとても便利。
メディアマーカーを併用するときれいにまとまったノートができるが、普通にEvernoteだけでも読書ノートは作れる。
興味を持った方、本書を参考にしながら、自分なりのEvernoteの使い方を見つけてみては?
続きを読む投稿日:2014.11.20
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イノサン 1
坂本眞一 / 週刊ヤングジャンプ
もう一つのフランス革命
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主人公のシャルルーアンリ・サンソンは有名な歴史上の人物であろう。
その名を知らなくとも、フランス革命期の死刑執行人で、ルイ16世や王妃マリー・アントワネット、ロベスピエールらを処刑した人物、といえば、…何らかのイメージを抱くのではないか。
では、具体的に死刑執行人とはどんな仕事をするのだろうか?
何故彼は死刑執行人になったのか?
どのようなことを感じて罪人を処刑していたのだろう?
実は、サンソン家はムッシュ・ド・パリと呼ばれる死刑執行を行う役人の地位を世襲している。
故に、主人公のシャルルは、選んだのではなく、家業として15歳で初めての処刑に臨む。
これが、この物語の始まりだ。
この物語は安達正勝 『死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男』 (集英社新書)をベースにしている。
そして、安達氏が元にしているのは、シャルルの孫が書いたサンソン家の回想録などである。
死刑執行人というのはどこの国や時代にもいるが、サンソン家のように、当事者としての立場から記録を残している例は稀有で、多くの場合は、歴史の闇の部分として消えていったのだろう。
私も、上記新書でシャルルーアンリ・サンソンという人物を初めて知り、強く惹かれた。
職業への激しく理不尽な差別に苦しむ。
死刑制度廃止を願うが、それが叶わぬならせめて死刑囚の苦しみを減らそうと医学の研究にいそしむ。
敬愛する主君ルイ16世に出会うも、役人として王を処刑せねばならない運命。
安達氏の本でサンソン家の運命に強い関心を持ったにも関わらず、安達氏の描き方にどこか物足りない気がした。
安達氏は上記新書に限らず、物語的な描写をする。
しかし、サンソン家の負っているものが、文章に収まりきっていない感じがしたからだ。
だから、この漫画を読んだとき、「これだ」と思った。
1巻後半から2巻前半にかけて、15歳のシャルルの最初の処刑の仕事の場面だ。
彼の心理をどんな絵で表すのか、どんな言葉で表すのか、と思いながら読んでいったのだが、それは、絵でも言葉でもなく、漫画という媒体だからこそ可能な表現だった。
漫画にはコマがある。そのコマ割りが、こんな役割を果たすのか。
自分が死刑執行を見ているような、また、見られているような奇妙なリアリティ。
目眩と吐き気がしてきた。
死刑執行の場面を描いてすっきり爽やかなら、漫画家の力量か読者の感受性が、どちらかが欠如しているのだろう。
この耐えがたい感じは、表現として成功している。
血に塗れ、群衆から悪魔と罵られながらも、
「僕は無垢だ」
と涙を流すシャルルの表情は、本当にイノサン(無垢、純真)だ。
そりゃ、国家の正義を実行する役人なんだから、悪いことはしていない。
だが、目の前の惨状は…。
何故この子はこんな状況にあるのだろう?
何故、こんな状況にあってもこんなにも美しく悲しい涙を流すのだろう?
この、最初の処刑の場面を見ると、シャルルが死刑廃止を強く望んだこと、
しかし、自分の職務に対して誇りと責任感を持って生きたという、後半生のイメージとしっかりつながる。
作者はシャルルを美しく描く。
史実で美形設定は特になかったと思うが(笑)
それは、所謂耽美的なものと似ているが少し違う。
シャルルを美しくしているのは、職務に対する崇高とまで言える責任感であり、決して人の死や苦しみを自己の喜びとしない。
人の悲しみに涙を流すシャルルの姿が美しい。
もしかしたら、美しい人というのは、人のために涙を流すことのできる人なのでは、と思った。
そうした「美」の描き方に、好感を持てる。
現在7巻まで出ており、ぼちぼちルイ16世やマリー・アントワネットなども登場する。
彼らは、日本でも様々な歴史エンターテイメントの世界に登場するが、本作品での描写はまた新鮮なものがある。
シャルルの長い人生を思うと、この作品も長いものになるのではないかと思うが、
激動の時代の中で、シャルルがどのように「イノサン」であり続けることができるのか、続刊が楽しみである。
続きを読む投稿日:2015.02.28
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18歳の著作権入門
福井健策 / ちくまプリマー新書
著作権とは何のためにあるのか
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著作権についてのわかりやすい入門書。ちょっと、以下の文が○か×かを考えてみてほしい。
「社会的事実は著作物ではないので、事実を描いたノンフィクションの文章には著作権は発生しない」
「料理のレシピはア…イデアなので、人のレシピを真似して料理を作っても著作権侵害ではない」
本文が先にあり、確認する形でこのような問題がある。知識を整理しやすい。
「著作権とは何か」についてしっかりと掘り下げてある本書、○か×かでは答えられない問題も取り上げられている。
例えばオランダの絵本作家ブルーナのキャラクター「ミッフィー」とサンリオのキャラクター「キャシー」。
どちらもウサギの姿をしたキャラクターだ。
ブルーナはキャシーはミッフィーに酷似しているとして告訴した。
さてここで、それまでのところにでてきた「ありふれた・定石的な表現」は著作権にあたらないという情報をあてはめてみる。
・動物の擬人化
・直立するウサギ
両者にはこういう共通項があるが、その点に関しては、定石とも言えるかもしれない。
サンリオ派の意見を代弁する形でピーターラビットや鳥獣戯画の図版が紹介されている。
しかし、ブルーナ派としては「単純化のテイスト」こそがミッフィーの独創であり、
サンリオがそれを真似している、という。
さて、どう考えるだろう。(ちなみにこの後も各要素の検証が続く)
アップルとサムスンの訴訟なども思い出す展開であり、
こうした訴訟はこれからも絶えないだろう。
本書はこのような○か×かで答えられない問題も多く取り上げ、読者に考えさせる。
その中で「著作権とは何のためにあるのか」を考えさせる構造になっている。
そういう意味で優れた入門書であると言えるだろう。
高校生以上の読者を想定して書かれたものであるが、
それより下の年頃の子どもを持つ親が読み、子どもに考えさせるのにもよい素材だと思う。
ちなみにミッフィーとキャシーの争いは、なかなか「いいはなし」に終わった。
そちらにも興味があれば、是非本書を読んでみてほしい。 続きを読む投稿日:2015.04.17
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文語訳 新約聖書 詩篇付
鈴木範久 / 岩波文庫
日本語のゆたかさを感じる、初の電子版文語訳!
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本書は、キリスト教について知りたい人よりも、日本語の美しさや奥深さを感じたい人に薦めたい。
何故なら、キリスト教や聖書の内容について理解したいなら、
格調高くはないが、わかりやすく原典に忠実な新共同…訳がメジャーであるし、
そのスタディー版ならイラストや用語解説も豊富で初心者にやさしいし、
引照付きは研究者にも使いやすい。
他にもいろいろな訳が出ており、わかりやすさ・正確さにおいては文語訳よりも優れたものが多い。
だが、文語訳の良さはそこではないだろう。
これは、明治から大正にかけて、日本で初めて訳された聖書である。
西洋の文明をいかに取り入れるか。
日本にはない概念をどのように日本語にしていくか。
解説にあるとおり、翻訳の際、様々な問題にぶつかった。
欧米人の宣教師たちは、訳に「わかりやすさ」を求めた。
しかし、日本人の翻訳者たちは聖典に相応しい荘厳さ、つまり漢文的な格調を求めた。
どうすればそれを両立することができるか?
その一つが「漢字+ふりがな」の秀逸な使い方だ。
「審判」に「さばき」、「汚穢」に「けがれ」、「復活」に「よみがえり」、
「患難」に「なやみ」など、耳で聞けばわかりやすく、目で見れば適度な格調がある。
戦後、日本では漢字のルビの使い方に随分制限をかけてしまったが、
この頃の柔軟さと語彙の豊かさには、改めて感心する。
他の言語では表現不可能な重層性が、この訳にはある。
日本語の面白さ、漢字の面白さを感じる。
ただ、日本聖書協会から、文庫サイズで同じ訳・内容(新訳+詩篇)のものが出ている。
ステンドグラス風のおしゃれな装丁でハードカバーだが、辞書のような薄く上質な紙なので厚さが半分くらいで、岩波版とそんなに値段は変わらない。
文語訳に限らず、日本聖書協会は四季折々(?)いろいろなデザインのオシャレ聖書を出しているので、見た目・軽さ重視ならば、そちらがいいかもしれない。
だが、岩波版は電子版があり、日本聖書協会版は電子版がない。
そして今のところ、電子版文語訳は岩波版のみだ。
当たり前だが、電子版は世界最薄・最軽量の日本聖書協会の聖書よりもさらに軽い。
そして、自分の好みに合わせて文字を拡大することもできる。
SonyReaderT3(赤)の落ち着いた雰囲気が、文語訳聖書とマッチする気がする。
よって、電子版文語訳ならソニーで岩波版一択ということになる(←!?)
ただ、キリスト教徒が礼拝で使うには、この電子版は少し不便かもしれない。
何故なら、礼拝などでは聖書の指定箇所をすぐに開かねばならないので、
そういう場合は紙でめくるか、iOS/Androidの聖書アプリを使った方が絶対早い。
この電子書籍は「マタイ伝福音書」などの「書」単位のジャンプはできるが、それよりも細かい単位である「章」や「節」で指定できない、いわゆる普通の電子書籍であるからだ。
各書冒頭にジャンプして、そこからタップしてめくっていたら
その間に聖書拝読の時間は終わってしまうだろう。よって教会では使えない(苦笑)
SonyReaderT3が礼拝に持ち込んでも違和感のないデザインであるだけに、ちょっと残念。
まあ、うちの教会は新共同訳使用なんで関係ないが(笑)
だが、そうではなく、文学的に読んでいくには
電子版文語訳というのは問題ない。
むしろやたらジャンプせず、腰を据えて読むに値する訳だ。
冒頭の系図はさっと流して(笑)、「イエス・キリストの誕生は左のごとし。」
以降の、格調高くもわかりやすい日本語を楽しんでほしい。
他の訳が気になるのであれば、Google Play(App Store)で「聖書」で検索するといろいろなアプリがあるので、それと見比べながら読むのもありだと思う。
YouVersionというところのアプリは多言語対応、口語訳収録で使いやすい。
他の訳と比べることで、文語訳の深さを感じる人も多いだろう。
一つ残念なのは、岩波版は紙版も電子版も「新字旧かな」で表記していること。
できれば、漢字も当時のまま(旧字)だとよかったと思う。
(日本聖書協会の方は旧字旧かな)
比べると残念ではあるのだが、電子書籍として読んでいて、違和感はないし、読みやすい。
これだけ文学的に優れたものが電子書籍のラインナップに加わったことを、
素直に喜び、☆5とする。
続きを読む投稿日:2015.02.24
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若者はなぜ3年で辞めるのか?~年功序列が奪う日本の未来~
城繁幸 / 光文社新書
恵まれた人の話ではあるが、ポジティブな姿勢には好感
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思った以上にポジティブな本で驚いた。
著者は、従来の年功序列の弊害とその崩壊による更なる弊害で、若者があまりにも報われない社会(会社)になっていると述べる。
その部分はそうだなあ、と思う。成果主義と…いってもやはり「年功序列」的なシステムの上の成果主義。
若者にも中高年にもやさしくない状況だ。
多分本書は就職して3年くらいの若者をターゲットとしているのだろうか。
「レールを降りることの意味」として次のように励ましている。
それは、一言でいえば、「自分で道を決める自由」である。レールの先にはどうやら明るい未来は少なそうだが、
代わりにどこでも好きな方向へ歩いて行けばいいのだ
という。
そしてそうした若者の例として、ソニーを辞めてコネクティを創立した服部恭之社長など、
「レールを降りて好きな方向に歩いている」若手起業家を紹介している。
彼らレールを降り自分の足で歩いている人間は、それぞれの動機と常に正面から向き合っている、と言う。
自分の胸の奥にある動機に従うか、それともそんなものは忘れて、
昭和的価値観に身をゆだねるか。
決めるのは上司でも友人でも親でもない。自分自身だ。
その選択に際して、本書が多少なりとも参考になれば幸いである。
とのこと。
いい話だと思うのだが、本書を参考にして、
そういう選択をできる人間というのは、既に「レールに乗ることができた」若者である。
著者の経歴を見てみたところ、東大法学部卒→富士通入社→社内で新人事制度の運営に携わる
→退社→コンサルティング会社設立、
ということで、例に挙がっているような人々と同様、大企業の正社員になれた人である。
若者の離職に関して言うと、著者のように「自分の胸の奥にある動機」に従う場合だけでもないだろう。
ソニーや富士通の正社員という、そんなレール自体が最初からない人が殆どだろう。
もっともっと追い詰められた状況、例えばブラック企業の問題などもある。
離職も何も、就職すらできない若者もいる。
だから、少々、「恵まれた人」の話という気がするが、
それでも、働くことに対して「自分の胸の奥にある動機」と正面から向き合うことが大事だ、
という主張には共感するし、働く上で忘れてはいけないことだと思い直す機会となった。
続きを読む投稿日:2014.12.24
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疲れすぎて眠れぬ夜のために
内田樹 / 角川文庫
面白いのだが、寝る前に読む系ではないと思う(笑)
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ヒルティの『眠られぬ夜のために』をもじったタイトルから、かの書のような厳粛で敬虔な人生論をイメージするかもしれない。が、違う。
例えば、「交換は愉しい」という章。
ドストエフスキーの『死の家の記録』…に出てくる究極の拷問について紹介されている。
それは、半日かけて穴を掘って、半日かけてまた埋めていくという「無意味な労働」である。
しかし、同じような労働であっても、そこに他者との「やりとり」があれば人間は生きていける、と著者は言う。
その通りだろう。人間が仕事に求めているのは、突き詰めて言えば「コミュニケーション」です。ただ、それだけです。
なるほど、そうだろう。でも、これだけじゃ、ちょっと普通の社会学の話かな?
と思っていたら、「イライザ」の話が出てきた。
アメリカの人工知能プログラムで、「私、今日疲れているんです」と打つと「あなたは今日お疲れなんですね」と答えてくれる。
これを神経症の治療に使ったら効果があったとか。
で、さらに著者は「恋人同士の会話というのは「イライザ」と神経症患者の対話とあまり変わりません」と言う。
笑った、が、確かにそうかもしれない(笑)
とまあ、社会学やら言語学やら心理学やら、いろんな引き出しからものがぽんぽん出てくる感じが楽しい。
一つ一つがそれほど深いわけではないのだけれど、だからこそ気軽に読めるし、気になったことを調べてみたくなる。
私の場合、「イライザ」がiPhoneに搭載されているSiriのお仲間であることを思い出し、
Siriを起動し、「イライザって誰?」と聞いてみた。
Siriさんは「Elizaは私の親しい友人です。優秀な精神科医でしたが、今はもう引退しています」と答えてくれた。
確かに、癒やされるかもしれない(笑)
ということは、逆方向の『死の家の記録』、読み直してみようかな・・・?
てな感じで、眠れなくなる本である(笑) 続きを読む投稿日:2014.10.05