崩紫サロメさんのレビュー
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三国志ジョーカー 1
青木朋 / ミステリーボニータ
正史三国志×SF!
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何故このタイトルなのかは、1話で語られる通り、中国でよくあるトランプのジョーカー2枚は諸葛亮(孔明)と司馬懿(仲達)だから。
では、何故表紙の仲達は黒スーツを着ているのか?それは、おいおい明らかになっ…ていくのだが、少々(?)SF的な話である。
が、「三国志」という名前を使っただけの荒唐無稽な話かといえばそうでもない。
きちんと正史三国志に見られるエピソード(意外に『三国志演義』系のものには採用されていないものも多い)に基づき、物語が展開していく。
このあたりは、他にも中国史の基礎をふまえた上で漫画を描いている作者らしい。
仲達が主役なので、魏の人が多く登場する。特に、主君にあたる曹丕の描き方は魅力的。
曹丕はゲーム・『三国無双』でメジャーになったような気がするが(?)、そちらからのファンにもおすすめ!
それと、5巻のあとがきだったか、「古代中国語で三国志の人名を読んだら・・・」みたいな表がある。
現代語ならどこでも見ることができるが、これは結構貴重!
続きを読む投稿日:2014.09.13
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煙か土か食い物
舞城王太郎 / 講談社文庫
「文圧」からの解放感
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舞城王太郎の作品について評価する際、よく「文圧」という言葉を聞くが、まさに本作品はそれを感じさせてくれるものだった。
いろいろとおかしいのだ。連続主婦殴打生き埋め事件そのものもだし、それ以上におかしい…のが、
主人公の思考回路。頭がいいとかを通り越して、そんなことを瞬時に考えてしまうなんてやっぱり変!という域。
そこで、感じるのだ、「文圧」を。それでも読者に読み進めさせる、何かがあるのだ。
しかし、本当に「文圧」を感じたのは、
文圧なんて必要としない、「平凡な」展開になった時だ。
ごく普通のことをごく普通の言葉で語る。この変な話(失礼)にもそんな場面が訪れて、
そのとき感じるのだ、「文圧」からの解放感を!
そうか、「普通のこと」に高揚感を与えてしまうようなものなのだ、この人の「文圧」というのは。
正直展開的には理不尽なものがありすぎたが、ふしぎな解放感と高揚感。
このためだけにでも読んでよし、だった。
続きを読む投稿日:2014.09.21
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夢の雫、黄金の鳥籠(11)
篠原千絵 / プチコミック
本編加筆部分+もやっとすること
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多くの読者同様、私もこの話の展開には少々イラッとするものがある。
が、毎号雑誌版で読むくらい篠原千絵ファンで、オスマン帝国ファンなので、「もう少し……もう少し待って、きっと面白くなるから……!」と必…死に訴えている(どこにだ)
さて、今回は『天は赤い河のほとり』番外編、ザナンザが登場!ということでそちらが本編のような盛り上がり(私の周囲だけか?)だが、本編の方も雑誌掲載版と比べて書き下ろしページが4頁あるので、一応コメントしておく。
・「歴史書を読んでいました」のあとのヒュッレムとスレイマンの会話見開き。
・イブラヒム邸でのヒュッレムとイブラヒムの会話見開き(「友人のアルヴィーゼがハディージェさまに会いたいと言うので……」あたりから)。
何か、イブラヒムにイラッとする方向で描いているんですよね?と思うところなのですが(苦笑)
この話のもやっとするところが、もともと
ヒュッレム→イブラヒム←スレイマン
だったところ、8巻あたりで「スレイマン様に負けた」とヒュッレムが引き下がる(←この展開は個人的には好きだ)。
しかし、少女漫画において、主人公が恋愛面で敗北するからには、相当の説明が必要なはず。そこの説明(つまり、イブラヒムとスレイマンの絆なり、ヒュッレムのスレイマンに対する思いの変化なり)が足りていない、そのあたりが非常に気になる。そこの三人の関係を整理しないままアルヴィーゼか……?と思ったり。子世代も気になるけど、親世代消化不良で子世代……?なども。
細かいかも知れないけど、11巻末でハンガリー遠征(1526年)ということなのでミフリマーは4歳くらいのはず。流石に本編のいろいろな発言は大人過ぎる~。
ただ、やはり今後に期待したいという思いと、表紙のスレイマン様麗しすぎるということで、☆3に。
続きを読む投稿日:2018.07.31
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天智と天武-新説・日本書紀-(11)
園村昌弘, 中村真理子 / ビッグコミック
狂気の行きつくところに……
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10巻・11巻で副題「新説・日本書紀」の意味が明らかになってくる。
9巻までのどこかで「何事!?」と挫折しかけた人も、最後まで読んで欲しい。
ラスト2巻で描かれるのは、今まで繰り広げられてきた…「何事!?」な歴史が、我々の知る「歴史」へと書き換えられる過程(もちろんこれもフィクション)。
フィクションではありながら、歴史が勝者によって書き換えられていくことはしばしば行われることであるだけに、一定のリアリティを持つ。しかし、この兄弟の異常な熱気を伴う愛憎を、リアリティの枠組みに治めず、最後まで狂気を維持した(妙な言い方ではあるが)ところも圧巻。
そして、このタイトルで最終巻なので、もちろん、最後は「あの二人」が飾ってくれる。その演出も、ここまで読んできた人には涙ものだと思う。 続きを読む投稿日:2018.07.31