meatmanさんのレビュー
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72
このユーザーのレビュー
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向日葵の咲かない夏
道尾秀介 / 新潮文庫
奇妙な物語
1
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(あらすじ)
1学期の終業式、明日からは夏休み。
その日、S君は学校を休んだ。先生に、S君の家へプリントを持って行くように頼まれた僕は、S君の家でS君が首を吊って死んでいるのを見つけた。急いで学校に戻って、先生に報告したら、先生は警察に電話を掛けてから、S君の家に行った。
でもその夜、先生と警察が僕の家に来て、先生は僕にこう言った。
「先生、お巡りさんと一緒にSの家へ駆けつけたんだけどな――Sの死体なんて、なかったんだ。どこにも」
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物語全体が奇妙なものとなっています。あまり多くは語れませんが、小学生である主人公の主観が入っているためにこのような書き方となっており、そこに推理小説としての新しさを見てとれます。それでも、最後には客観的にみても合理的な種明かしが為されるあたりが上手い所です。その他登場人物も、全員が変わった性癖を持ち、所々気持ち悪く感じる場面が多々あると思います。
読みやすい文章ですが、主人公たちが早熟で、年相応でない感想や考察を述べるのが気になります。ところが実は、そこにも物語上しっかりとした理由がありました。
事件それ自体の謎の他、物語り全体に浸透している、不信であったり奇妙な点、そして、当然として受け入れられる事象にも疑いを持って、その真相に迫るのも面白いと思います。 続きを読む投稿日:2013.09.24
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カラマーゾフの兄弟 3
ドストエフスキー, 北垣信行 / グーテンベルク21
長い付き合いのできそうな本
0
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(あらすじ)
成金富豪、フョードル・カラマーゾフには3人の息子がいた。
父親同様、好色で遊び人の長男ドミートリー。
冷笑的で、学識豊かな無神論者の次男イワン。
気が優しく、誰からも好かれる修道僧の三男アレクセイ。
遺産、財産上の勘定における、父フョードルと長男ドミートリーとの不和を初め、この家族とその召使い、そして友を含めた人間関係は乱れきっていた。
ある夜、フョードルが何者かに殺され、とある者のために用意されていたという三千ルーブルも盗まれる。
ロシア全土に広まるこの悲劇的な事件を中心に、この家族に関係していた者達、そしてカラマーゾフの兄弟は何を思う。
****************************************************************************************************************
非常に内容が濃く、難しい本でした。
表向きは推理小説ですが、その物語自体が主体でありません。作者であるドフトエフスキー自信が、小説という形式をとって、様々な問題を提起し、自説を述べています。
その論題は、宗教、政治、経済、学問と広範囲に渡り、神の有無、性善説と性悪説、罪の救済、真なる制裁、民とその支配者、自由と幸福、世界的人類の統合、貧富の差、資本主義と社会主義、世界史等々、細かく挙げればきりがありません。さらに、これらに対する見解は、当然順序立てて体系的に書かれてはおらず、様々な場面で、各々の登場人物を通し、あらゆる観点から、部分的に、そして時に感情的に語られており、また各々の議題に対する見解がお互いに干渉しあうため、要約するのは非常に難しいです。しかしながら、読めば必ず何処かしらの部分で感銘を受けることでしょう。
おそらく、序盤の慣れないうちは直ぐに飽きます。また、一読では、ドフトエフスキーが述べようとした全てを理解するのは不可能です。あるいは何回読んでも不可能かもしれません。それでも、とりあえず一度、コンスタントに読み通す事をお勧めします。
そして、再び十年後に、もし読みたくなったら読むのが良いと思います。
人生における様々な思想が詰め込まれた本なので、再読のたびに、感銘を受けたり、理解し合点のいく点が変わり、自分の心の成長を知れるかもしれません。また逆に、若い頃には持っていたものの、歪められてしまった理想や信念が再び呼び覚まされ、今後の生活に新たな希望を見出すかもしれません。
きっとこれは、自分の送ってきた人生で培った心の変化、そして今後の運命を180度転換させるかもしれない思想の再構築を、何度も読むことで、一生涯に渡り楽しめる本なのだと思います。 続きを読む投稿日:2013.09.24
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カラマーゾフの兄弟 2
ドストエフスキー, 北垣信行 / グーテンベルク21
長い付き合いのできそうな本
0
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(あらすじ)
成金富豪、フョードル・カラマーゾフには3人の息子がいた。
父親同様、好色で遊び人の長男ドミートリー。
冷笑的で、学識豊かな無神論者の次男イワン。
気が優しく、誰からも好かれる修道僧の三男アレクセイ。
遺産、財産上の勘定における、父フョードルと長男ドミートリーとの不和を初め、この家族とその召使い、そして友を含めた人間関係は乱れきっていた。
ある夜、フョードルが何者かに殺され、とある者のために用意されていたという三千ルーブルも盗まれる。
ロシア全土に広まるこの悲劇的な事件を中心に、この家族に関係していた者達、そしてカラマーゾフの兄弟は何を思う。
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非常に内容が濃く、難しい本でした。
表向きは推理小説ですが、その物語自体が主体でありません。作者であるドフトエフスキー自信が、小説という形式をとって、様々な問題を提起し、自説を述べています。
その論題は、宗教、政治、経済、学問と広範囲に渡り、神の有無、性善説と性悪説、罪の救済、真なる制裁、民とその支配者、自由と幸福、世界的人類の統合、貧富の差、資本主義と社会主義、世界史等々、細かく挙げればきりがありません。さらに、これらに対する見解は、当然順序立てて体系的に書かれてはおらず、様々な場面で、各々の登場人物を通し、あらゆる観点から、部分的に、そして時に感情的に語られており、また各々の議題に対する見解がお互いに干渉しあうため、要約するのは非常に難しいです。しかしながら、読めば必ず何処かしらの部分で感銘を受けることでしょう。
おそらく、序盤の慣れないうちは直ぐに飽きます。また、一読では、ドフトエフスキーが述べようとした全てを理解するのは不可能です。あるいは何回読んでも不可能かもしれません。それでも、とりあえず一度、コンスタントに読み通す事をお勧めします。
そして、再び十年後に、もし読みたくなったら読むのが良いと思います。
人生における様々な思想が詰め込まれた本なので、再読のたびに、感銘を受けたり、理解し合点のいく点が変わり、自分の心の成長を知れるかもしれません。また逆に、若い頃には持っていたものの、歪められてしまった理想や信念が再び呼び覚まされ、今後の生活に新たな希望を見出すかもしれません。
きっとこれは、自分の送ってきた人生で培った心の変化、そして今後の運命を180度転換させるかもしれない思想の再構築を、何度も読むことで、一生涯に渡り楽しめる本なのだと思います。 続きを読む投稿日:2013.09.24
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カラマーゾフの兄弟 1
ドストエフスキー, 北垣信行 / グーテンベルク21
長い付き合いのできそうな本
3
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(あらすじ)
成金富豪、フョードル・カラマーゾフには3人の息子がいた。
父親同様、好色で遊び人の長男ドミートリー。
冷笑的で、学識豊かな無神論者の次男イワン。
気が優しく、誰からも好かれる修道僧の三男アレクセイ。
遺産、財産上の勘定における、父フョードルと長男ドミートリーとの不和を初め、この家族とその召使い、そして友を含めた人間関係は乱れきっていた。
ある夜、フョードルが何者かに殺され、とある者のために用意されていたという三千ルーブルも盗まれる。
ロシア全土に広まるこの悲劇的な事件を中心に、この家族に関係していた者達、そしてカラマーゾフの兄弟は何を思う。
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非常に内容が濃く、難しい本でした。
表向きは推理小説ですが、その物語自体が主体でありません。作者であるドフトエフスキー自信が、小説という形式をとって、様々な問題を提起し、自説を述べています。
その論題は、宗教、政治、経済、学問と広範囲に渡り、神の有無、性善説と性悪説、罪の救済、真なる制裁、民とその支配者、自由と幸福、世界的人類の統合、貧富の差、資本主義と社会主義、世界史等々、細かく挙げればきりがありません。さらに、これらに対する見解は、当然順序立てて体系的に書かれてはおらず、様々な場面で、各々の登場人物を通し、あらゆる観点から、部分的に、そして時に感情的に語られており、また各々の議題に対する見解がお互いに干渉しあうため、要約するのは非常に難しいです。しかしながら、読めば必ず何処かしらの部分で感銘を受けることでしょう。
おそらく、序盤の慣れないうちは直ぐに飽きます。また、一読では、ドフトエフスキーが述べようとした全てを理解するのは不可能です。あるいは何回読んでも不可能かもしれません。それでも、とりあえず一度、コンスタントに読み通す事をお勧めします。
そして、再び十年後に、もし読みたくなったら読むのが良いと思います。
人生における様々な思想が詰め込まれた本なので、再読のたびに、感銘を受けたり、理解し合点のいく点が変わり、自分の心の成長を知れるかもしれません。また逆に、若い頃には持っていたものの、歪められてしまった理想や信念が再び呼び覚まされ、今後の生活に新たな希望を見出すかもしれません。
きっとこれは、自分の送ってきた人生で培った心の変化、そして今後の運命を180度転換させるかもしれない思想の再構築を、何度も読むことで、一生涯に渡り楽しめる本なのだと思います。 続きを読む投稿日:2013.09.24
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ドグラ・マグラ(下)
夢野久作 / 角川文庫
ドグラ・マグラ
0
“ドグラ・マグラ"はヴ――……ン、ヴゥゥ――……ン――という、最後に鳴った時計の音で始まります。
主人公はその音で目覚め、一切の記憶を喪失している事に気づきます。
舞台は大正時代の九州大学精神科病棟…。
担当医だと言う若林教授に連れられ、記憶回復の治療として、とある部屋に案内されます。
その部屋には様々な資料が並べられており、それらを見ていく事で記憶は甦ると若林教授は言います。
それら資料の中で、主人公は“ドグラ・マグラ”という物語を見つけます。
若林教授曰く、その本は、精神病患者が自分について書いた、記憶と精神に関するナンセンスな物語。若林教授が、精神医学分野を飛躍的に進歩させる治療法によって、主人公である記憶喪失患者の治療を試みようというもの。
主人公は“ドグラ・マグラ”に目を通します。
“ドグラ・マグラ"はヴ――……ン、ヴゥゥ――……ン――という、最後に鳴った時計の音で始まります。
主人公はその音で目覚め、一切の記憶を喪失している事に気づきます。
舞台は大正時代の九州大学精神科病棟。
担当医だと言う若林教授に連れられ、記憶回復の治療として、とある部屋に案内されます。
その部屋には様々な資料が並べられており、それらを見ていく事で記憶は甦ると若林教授は言います。
それら資料の中で、主人公は“ドグラ・マグラ”という物語を見つけます。
若林教授曰く、その本は、精神病患者が自分について書いた、記憶と精神に関するナンセンスな物語。若林教授が、精神医学分野を飛躍的に進歩させる治療法によって、主人公である記憶喪失患者の治療を試みようというもの。
主人公は“ドグラ・マグラ”に目を通します。
“ドグラ・マグラ"はヴ――……ン、ヴゥゥ――……ン――という、最後に鳴った時計の音で始まります。
主人公はその音で目覚め、一切の記憶を喪失している事に気づきます。
舞台は大正時代の九州大学精神科病棟。
担当医だと言う若林教授に連れられ、記憶回復の治療として、とある部屋に案内されます。
その部屋には様々な資料が並べられており、それらを見ていく事で記憶は甦ると若林教授は言います。
それら資料の中で、主人公は“ドグラ・マグラ”という物語を見つけます。
若林教授曰く、その本は、精神病患者が自分について書いた、記憶と精神に関するナンセンスな物語。若林教授が、精神医学分野を飛躍的に進歩させる治療法によって、主人公である記憶喪失患者の治療を試みようというもの。
主人公は“ドグラ・マグラ”に目を通します。
“ドグラ・マグラ”はヴ――……ン、ヴゥゥ――……ン――という、最後に鳴った時計の音で始まります。
主人公はその音で目覚め、一切の記憶を喪失している事に気づきます。 続きを読む投稿日:2013.09.24
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ドグラ・マグラ(上)
夢野久作 / 角川文庫
閲覧注意
7
――ン、ヴ――……ン、ヴゥゥ――……ン――
何処かの部屋で目覚めた「私」
一見、肩透かし、ご都合主義でご法度とも言えるようなタネにして、そのタネの現実的な信憑性を確立し得る程、厳密に記述されたディテ…ィール。
単調でありながら、実は何層にも積み重なる複雑怪奇なプロット。
今しがた自分の読んだ話は、“いつ”、“どこ”で“何”について描かれた物語なのか?
物語のみならず、今自分がこうして手にしている書物までもが、この奇想天外な物語の一端を担っているのか?
全てが解明されると同時に、何も解明されずに終わり、始まる。
混沌とした雰囲気抜群の、傑作ミステリー小説です。しかしながら、単なるミステリー小説にとどまらない上、一般的な幻想小説とも、まただいぶ異なる趣です。
さらに、その奇妙な印象を、作中の表現などで抱かせるのではなく、ストーリー全体を通した、この“本”そのものに抱かせる辺りが、日本探偵小説三代奇書の一つに選出される所以だと感じました。
これを読むと、一度は精神に異常をきたすと言われているそうですが、確かに、私もこれを読んでいる間に3度ほど悪夢を見ました。…その当時は、はたして「あれは夢だった」と認識していいのかすらわからず、混乱させられた悪夢を。
若干、読みにくい文体も出で来ますが、物語の表層自体は複雑ではないので、時間をかけて少しずつゆっくり読んでいっても差し支えないと思います。
複雑でないのは、あくまでも表面だけですが・・・。 続きを読む投稿日:2013.09.24