hisashi9さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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アメリカひじき・火垂るの墓
野坂昭如 / 新潮文庫
傷を癒すために、誰かに伝えるように
3
ジブリ好きで、読んでみました。ぜひみなさん読んでください。
命の尊さとか自由平等とか言いますが、つい70年くらい前は紙切れのように命は軽かったんでしょうね。物語はあくまで虚構であると分かっていますが…、どうしてもノンフィクションの部分に思いが巡ります。清太や節子を可哀想に思うけれども、日本中に清太や節子が溢れていたんでしょうね。誰か清太のような子たちを非難できるのでしょうか。戦争をすることのいかに愚かなことか、を思います。
他数編、収録されているいずれも心打たれる物語でした。戦争によって負った傷は永い時間が経過しても、いつまでも消えないんだと思いました。
読むにはたいへん、たいへん辛い本書ですが、ぜひ多くの人に読んでほしいです。 続きを読む投稿日:2014.12.08
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嫌われる勇気
岸見一郎, 古賀史健 / ダイヤモンド社
いろいろ疑問と多少の不満
5
みなさん好意的なレビューですが、私は多少批判的に書いてみます。そのために最初に断っておこうと思います。何人かの方と同じく、私も「売れてるから読んでみた」という1人です。アドラーという人をまったく知らな…かった自分にとって、その入門書として、アドラーの考えを理解するのにはとても良い本だと思いました。以下、感じた疑問をいくつか。
一つ目の疑問:哲人が言う「アドラーはこう言います」「アドラーはこう考えます」という部分は納得できるし、実際にそのように振る舞えたら、すごく幸せだろうし、みんながアドラー的世界観の住人であれば、世の中はもっと違った所になるんだろうな、と思いました。
でも、アドラーやその伝道者が「他者の課題」に対して介入する事に積極的でないので(課題の分離)、「共同体的感覚」はあくまでも個人の主観による幻想でしかないように感じます。実際の共同体(構成員全体)が「共同体的感覚」を持ち得て、「住みよい世の中になったな」と感じたり、「他者信頼」や「他者貢献」を実行に移したりするかどうか、は重視されません。あくまでも、個人の問題のみに議論が終始して、「個人が変われば、みんなが変わる」というような結論に少しがっかりしました。
二つ目:「他者信頼」と「他者貢献」に加えて、同じく重要視される「自己受容」について。そのような心的態度を醸成したり、自然と習得したりできるような環境ってあるのでしょうか。実際の家庭や学校、職場では現在のところ「競争」や「縦の関係」の思想がある程度定着してますよね(もちろん時代とともに共同体のありようは変わっているわけで、将来において「他者信頼」や「横の関係」が根付く可能性は否定しませんが)。現時点では「自己受容」が「ライフスタイル(アドラーの言う性格)」として自然に身についたりはせず、まさにアドラーの伝道者のように、それを教える人が必要となると思うのですが、そこについては「馬を水辺に連れて行く」ほどのことしか説明されません。実際、例えば現在の日本の学校現場なんかを見ていて、説明不十分な気がします。
三つ目の疑問:そこで本書のようなアドラー解説書の必要性が出てくると思うのですが、読み終わってみると「嫌われる勇気」というタイトルには、強い違和感を覚えました。目を引くタイトルですが、そして実際に売れているようですが、本書の言い表したいことを端的に示しているとは思えませんでした。
四つ目の疑問:対話形式について。ソクラテスの対話篇に似せて作られた事があとがきでも述べられています。私はソクラテスの対話篇を目にしたこともないのでそれについてはよく分かりませんが、青年と哲人による本書の対話は、リアリティに欠けるように感じました。特に青年は生身の人間ではなく、哲人が思うように議論を進めるための道具(または哲人の分身)のように感じます。結局、哲人の思うとおりに議論は進んでいくのです。そして青年は自分の疑問を忘れたかのように、哲人の望む段取りで、次から次に話題を提供していくのです。他の方のレビューではこの対話形式が読みやすいとされていますが、私自身はダメでした。
私自身は哲学や心理学についてまったくの素人です。そして最初に述べたように、アドラーの考え自体は興味をもって読むことができました。本書で私がハイライトした箇所は100近くになりました。
ですが。だとしても、アドラーを知るために、この本でなくてもいいと思いました。 続きを読む投稿日:2014.11.10
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疲れすぎて眠れぬ夜のために
内田樹 / 角川文庫
寝る前に読むには面白すぎます
9
内田樹の本はこれで3冊目です。いつもの通り面白く、一気に読めました。サザンのことを書いているレビュアーもいらっしゃいますが、私としては3箇所ほどある村上春樹論もなるほど、と思いました。
それにしても、…いつも思うことですが、覚えておきたい言葉がたくさんありました。中でも、
「愛想がいいというのは、すごく良質な文化です」
「「レイバー」はそれ(ビジネス)とは違います」
「「個性的である」というのは、ある意味で、とてもきついことです」
「武士が歩いているとき、その意識は「背中」にあった」
「マジョリティとともにあることは決して安全を意味しない」
などなど(まだまだありますが、きりがないのてやめておきます)、気になる言葉があちこちにありました。
あとがきにあるように、この本は話した事をもとにテープ起こしして、それを加筆修正することで出版されるという経緯を辿っていて、そういうこともあってのこのタイトルなのでしょうが、寝る前に読むには十分に深くて濃すぎる内容です。私は通勤電車の中で読みました。 続きを読む投稿日:2014.10.22
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上下関係がわかっていない部下が言いがちなNGワード
播摩早苗 / 幻冬舎
うちの職場のあるある
0
相当、悩んでるのかな?と、購入ボタンを押しながら、つい思ってしまいました。
実は職場の後輩で1人困った子がいて、どう接したらいいか迷いつつ、自分の心を乱されたくなくて、しばらくそっとしておくことに決め…たのですが、やっぱりこういうタイトルの本を買ってしまうって、相当、ですよね。
読んでみて、やっぱりオドロキでした。ここにある事例すべて当てはまっているんです。悩まなくて良かったんだ、と思えたことがこの本を読んで一番に感じたことですが、たぶんここに書いてある対処法を実践しても私の後輩には何の変化も起こさないだろうということも感じました。 続きを読む投稿日:2014.10.18
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性愛英語の基礎知識
吉原真理 / 新潮新書
性愛英語の基礎知識
吉原真理
盗み見的な楽しさ
1
興味本位とリビドーと、学究的な欲求に突き動かされて(踊らされて)読みました。英語が極端に苦手でなければ、すんなり読めます。
紹介されるフレーズそのものもそこまで多い訳ではなく、どちらかと言うと、それぞ…れの言葉にまつわる背景知識や男女の恋愛における習慣や様式、著者の好きな映画やドラマの話題の方に多く紙幅を費やしています。全体を通してみたら、非常にあっさりと爽やかに読み通すことができて、ああ大人の恋がしたいなぁ、と思いました。 続きを読む投稿日:2014.10.09
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三四郎
夏目漱石 / 青空文庫
最後まで読めずにいました
5
やっと読み切りました。初めて手にしたのは高校時代でした。なぜか途中まで読んでそのままにしてしまっていました。それ以降何度か読みかけては挫折していた本書を、ついに読破することができました。
高校当時の自…分はなぜ読み切れなかったんだろう?もう理由も状況も忘れてしまいました。でも読み終わったいまは、やっぱり高校時代に読んでおきたかったなと思います。三四郎の考え方とか行動って、現代でもすごく共感できる人、特に若い人で多いんじゃないでしょうか。 続きを読む投稿日:2014.09.24