らくがきさんのレビュー
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この恋と、その未来。5 -二年目 秋冬-
森橋ビンゴ, Nardack / ファミ通文庫
いつもながら心に響く作品
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5巻目だが、いつものように一気に半日で読んでしまった。
全てを失ったと思っていた四郎だが、その心の隙間を埋めてくれる人々の存在、父親の言葉の重み、そして離れていったはずの未来の優しさを感じる場面など、…これまたいつものようにとても面白く、心に響く作品だと思った。
が、今回最も心を揺さぶられたのは「あとがき」を読んだ時だった。
このシリーズは、テーマがテーマだけに爆発的に売れることはないだろうと、1作目を読んだ時から思っていた。
まさに、「マイノリティ」が重要な要素であるからだ。
しかし、このシリーズを通して存在する、「最も親しいけれども絶対に心寄り添う可能性のない相手に恋愛感情を抱いた時、どうすればいいのか?」という絶望的ともいえる感情の表現は、思春期の恋愛を扱った作品としては秀逸であり、テーマと関係なく優れたものと評価できると感じている。
次の1巻で完結することが作者の構想の中にあるようだが、ラストまでしっかりと読了し、このシリーズの素晴らしさを実感したいと切に願うものである。
第6巻も是非読みたい。きっとまた半日で読んでしまうだろうが、発刊を心より楽しみにしている。 続きを読む投稿日:2016.06.30
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天使は奇跡を希う
七月隆文 / 文春文庫
設定の斬新さに驚かされます
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タイトルが面白そうだったので読んでみました。
最初は、単なるファンタジーがらみの天使と男子高校生の恋愛ライトノベルかなぁ?と思っていましたが、途中で話の設定が明らかになると、「そうだったのか!」って…かなり驚かされました。
友情や大切な人を想う気持ちが作品全体を通して伝わってくる、温かくて泣ける作品です。
一つの願いのために文字通り全てを捧げる勇気の素晴らしさが描かれています。そういった作品をお探しの方にはお奨めです。
今治や瀬戸内の魅力がふんだんにちりばめられているのもお奨めポイントの一つです。 続きを読む投稿日:2017.07.14
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三日間の幸福
三秋縋 / メディアワークス文庫
自分の価値(っていうか値段)?
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三秋先生の作品2つ目。
この原作がWEBで話題だったことを知らずに読みました。
生きる希望を失った主人公が、3か月だけ残してたった30万円で売り払った人生。その顛末を見守る「監視員」ミヤギ。
二…人の交流を通じて、生きている価値という言葉の意味を考えさせられる作品です。ただ生きているだけの人生でいいのか?残り時間が決められてしまった時、どのように生きていくべきなのか…。
三秋先生の構成力がいかんなく発揮されていると思います。読み始めてしばらくあまりにもおチープな展開を想像していた自分のことを、ただただ恥ずかしく感じるばかりです。
そして、原題を改題した「三日間の幸福」というタイトルにぴったりの結末。感動します。この部分だけさえ素晴らしい作品です。文句なしにお勧めです。
気になる点をあえて挙げるなら、「ヒメノ」はあの後どうなったのか?ってところでしょうか? 続きを読む投稿日:2017.07.12
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自殺するには向かない季節
海老名龍人, 椎名優 / 講談社ラノベ文庫
タイムスリップものですが
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読み終わってみて、どこかに消化不良感というか、「なんで?」っていう疑問が残る作品でしたが、よくあるタイムスリップものよりプロットは凝っていて、面白いつくりだと思います。
タイムスリップを決意する理由…、その方法と限界の特殊性など、それらの要因を何とかして乗り越えようとする主人公の姿には好感が持てます。
消化不良感の原因は、いくつかの事象にちゃんとした説明というか理由付けが描かれていないことですが、その部分は枝葉末節だという作者のわりきりかもしれません。
歴史(というほど大それたものではないですが)改変のためにタイムスリップする作品を好まれる方にはお奨めです。 続きを読む投稿日:2017.07.06
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下読み男子と投稿女子 ~優しい空が見た、内気な海の話。
野村美月, えいひ / ファミ通文庫
爽やかな青春ストーリーです
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爽やかな青春ものです。
方向性は異なるものの、自分の夢にまっすぐな男女が描かれていて、その姿がとても清々しく、読んだ後に得も言われぬ爽快感が残る良作です。
人のいいところを見つけ、それをちゃんと評…価して伝えてあげること。文字にすると簡単ですが、それを実行することがいかに難しいか、誰もが知っていることでしょう。
その困難な行為を、持ち前のまっすぐな心で誰に対しても行える主人公と、その思いを受け止めて自分の夢をあきらめずに進むことができたヒロイン。
こんな人間でありたいと何度も思いながらどんどん遠ざかって今に至る自分の情けなさに涙が止まりません(^^;
作品そのものは言うまでもなく素晴らしくて文句なくお奨めなのですが、本作のもう一つのお奨めポイントは、出版業界の裏側、っていうか下請けのお仕事である「下読み」について描かれていることです。大量の投稿があって玉石混交のはずのライトノベルですが、こういう皆さんの支えがあるからこそ、世に出る作品にはある程度の質が保たれているのだ、と思うとこの方々にはただただ感謝の言葉しかありません。 続きを読む投稿日:2017.08.31
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親友の彼女を好きになった向井弘凪の、罪と罰。
野村美月, 河下水希 / ダッシュエックス文庫DIGITAL
ラストで明かされる真実に驚愕します
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野村美月先生初のダッシュエックス文庫です。
「文学少女」や「ヒカル」とはだいぶイメージの異なる作品です。筆力のある方なのでレーベルに応じて作風を使い分けてるのかな?って感じるほどです。
すべてを備…えて明らかにモテ要素しかないイケメン親友を持つ、どうもパッとしないけどいわゆる「いい人」である主人公の視点で話が進みます。
二人の間に横たわる、中学生時代のあるトラウマ。そのためにずっと彼女を作らなかった親友に、ついにできた彼女。間違いなく喜ばしいことだったはずなのに、その子が自分が好きになった子だったという事実が主人公を苦しめます。
過去の過ちを繰り返すまいと誓うものの、捨て去ることのできない恋慕の情に苦悩する主人公。
ここまではありがちな青春の悩みのように見えますが、クライマックスで明かされる、過去および現在の親友の複雑な心情の告白に、たとえようもない衝撃を受けました。
野村先生の他の作品とはかなり雰囲気が異なるので好みが分かれるところですが、抑えようと思っても抑えきれない恋心のジリジリ感、みたいなものを好まれる方にはお奨めです。ハッピーエンドで終わるのもポイント高いです。
それと、自分的には途中でいろいろブッコまれるSF小説ネタがツボです(^^) 続きを読む投稿日:2017.08.31