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五木寛之自選文庫〈小説シリーズ〉 晴れた日には鏡をわすれて
五木寛之 / 角川文庫
本音はね、誰だってそう思ってるのよ
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皮膚の数ミリのでこぼこが人の一生を左右する不条理を言い繕うために、人は色々なことを言っている。
曰く、顔だけが綺麗でも心が優しくないと
曰く、大事なのは中身だよ
それをあっさりすっぱりひっくり返し…て平然としていられるのはさすが五木寛之。しょぼい作家だったら差別主義だの非人道的だのバッシングされて二度と出てこられないかも。
美しいと誉められることで人は優しい気持ちが持てる
きれいな人は根性が悪いなんて嘘だ
美しいというだけで、この世は明るく住み良い
いやーここまで言い切られるといっそ爽快で、ボロを着ててもなんて言うのは本当に偽善的な、美醜という本人にはほとんどどうしようもない事をあげつらうのは下品だというお行儀の仮面を被った建前そのものだということがよくわかる。 続きを読む投稿日:2016.10.03
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ツリーハウス
角田光代 / 文春文庫
ほっとした
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この人のは、「この本が世界に存在することに」だけ、読んだことがあります(^ー^)
満州開拓や引き揚げの話は宮尾登美子の「朱夏」の迫力が一番だと思いますけどΣ(-∀-;)、これはあれほど読むのに気合…は要りません(^-^)
あと、いきなり冒頭「それはないわ(-。-;)」と思ったのが
自宅で亡くなった人を「救急車で」「病院に」連れていって「遺体を預ける」こと。
病院で亡くなったらこちらの都合も聞かず一刻も早く連れに来いだし、今は霊安室のない病院も多いです。救急車は生きてる人間しか乗せてくれません。
医者を呼ぶのは正解ですけど、あそこは葬儀屋に電話、寝台車依頼霊安室搬送、もしくはドライアイスあてて自宅通夜、ですな(-.-)
ずるずるだらだら人に寄生して暮らす人の話というのは読んでいて気持ちのいいものではないので、最後はほっとしました(⌒‐⌒) 続きを読む投稿日:2016.10.03
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スウィート・ヒアアフター
よしもとばなな / 幻冬舎
疲れたときには甘いもの
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この人の本が読みたくなるときは、心が疲れているときです。何がどうというわけでもないのに泣き出したいような、明日なんか来なきゃいいと思うような。
だけどそんなときには体が頑張ってくれている、というのは…この人の作品にはいつも出てきますね。きれいな水だったり、温かいミルクティだったり、そのおいしさに気付けたとき、心も少しだけ元気になっている。
出てくる人たちは皆親切で善良で、決して踏み込んでこない繊細さを持っていて…綺麗事です。
主人公は生きるか死ぬかの目に遭っても、その後の暮らしには全く心配のない身分です。私だったら1週間仕事行けなかったら家賃が払えずアパートを追い出されます…甘々です。
ああ、いつものパターンだな、と頭のどこかで醒めていながら、今、この時間だけでいいから自分を甘やかしてやろう、でないとこの不機嫌で周りを不快にしてしまう…子供のための甘い水薬、そんなお話です。 続きを読む投稿日:2017.02.19
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N・P
吉本ばなな / 幻冬舎
歪みや欠けを愛でるのは日本人の特性だけど
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約30年ぶりに読んだのだが、すっかり忘れていた。再読して、そういやこの人、昔はこういうのだったわ、と思い出した。
迷惑なまでに己に正直忠実、アクが強いクセが強い、どこかしらが歪んでいびつ、だけど底無し…に無垢で透明な魂の持ち主で、困りながらも惹かれずにいられない…
あいにくと私はそういう複雑なものを美しいと感じる繊細な感性は持ち合わせていないので、そういう設定というだけで半ばうんざりなのである。 続きを読む投稿日:2017.02.24