つたもみじさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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妖怪と小説家
野梨原花南, けーしん / 富士見L文庫
うっかり怪異な世界に紛れこむ、現代文豪ファンタジー。
8
サックリ読了。小説家・太宰先生と担当編集・水羊がうっかり怪異な世界に紛れこむ。太宰、中原、谷崎、菊池、宮澤。文豪ファンタジー(ちょっぴり史実あり)。小説家の先生たちのイメージはそのままで、誇張した感じ…も楽しかった。著者さんどんだけ宮澤賢治が好きなの。真実と虚構が曖昧で、多少ごちゃごちゃし過ぎな感もあるけど、現代なのに昭和初期を思わせる雰囲気などは良かった。石川啄木の金銭的クズっぷりも別方向でだけど書かれてて笑った。
太宰のキリストとユダに着想を得た短篇って「駆け込み訴え」かしらね。割と好きだわ…あの愛憎劇。 続きを読む投稿日:2016.01.03
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ジャイロスコープ
伊坂幸太郎 / 新潮文庫
多様な世界観。
8
全7本の短篇集+著者インタビュー。相談屋の稲垣さんとバイトの浜田青年「浜田青年ホントスカ」緩さの中にあるサスペンス性が好き。「一人では無理がある」松田くんのうっかりミスすらプラスに変えてしまう謎の人事…部。新幹線の清掃員チーム「彗星さんたち」ほっこり。鶴田主任が引用するパウエル国務長官の言葉が良い。全体的に好みの作品が多かったです。ラスト「後ろの声がうるさい」それぞれのストーリーに登場した人物が交錯する。偶然に隣り合わせで座った二人(互いに相手を認識して、それを表に出さず)の会話も良かった。心地よい読了感。 続きを読む
投稿日:2016.02.10
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薔薇十字叢書 桟敷童の誕
佐々木禎子, THORES柴本, 京極夏彦 / 富士見L文庫
原作に近い雰囲気
8
百鬼夜行公式トリビュート・薔薇十字叢書シリーズ。全体的に薄暗い雰囲気は原作に寄せた感じで、パロディやオマージュというよりは、パスティーシュに近い感じがしました。関口の“押し掛け弟子"である天城から、映…画館に繁栄をもたらす妖怪・桟敷童の噂を聞いた榎木津が、下僕達を従え妖怪探しに乗り出す…が、そこで見た物とは。というストーリー。意外性は少ないけれど面白かったです。贅沢を言えば、もう少し文章に遊びがあったら良かったかなぁと。 続きを読む
投稿日:2015.11.06
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殺人喜劇の13人
芦辺拓 / 東京創元社
テンコ盛り
8
著者のデビュー作にして、森江春策シリーズ第一弾。京都D**大学の文芸サークル「オンザロック」の仲間達が暮らす、元医院を改装した古い洋館「泥濘荘」で起きた連続殺人。縊死、刺殺、毒殺、誘拐…。密室、時刻表…、アリバイトリック、暗号…。とにかくテンコ盛り。犯人は仲間のうちの一人なのか…それとも。物語は、作中人物・十沼の手記という形での事件の一部始終と、森江春策の再登場からの解決パートの二部構成。あらゆる伏線の回収は見事でしたが、犯人と、動機の大元になった出来事に対する糾弾やら語りが無く、個人的にはスッキリとした読了感ではなかった。枕の殺人の件は、別にソレはベッドに横にならなくてもでき…いえ、なんでもないです。
続きを読む投稿日:2015.12.05
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神去なあなあ夜話
三浦しをん / 徳間文庫
繁ばあちゃん最強説…。
8
「なあなあ日常」後日談。連作短篇集。高校卒業と同時に横浜から三重県の山奥・神去村へ来た勇気も二十歳に。林業への思いと共に、ヨキとみきさんとの馴れ初めとか、過去の事故、失せもの探しのお狐様とか。こちらの…方が村での日々の日常っぽく感じられた。繁ばあちゃん曰く、あだるとだから夜話かね。なあなあ。クリスマスの話は仄々として良かった。山太も良い子だし、山太の為にツリーを作ったりパーティーを開いたり、勇気を始めとした周りの大人たちも楽しそう。直紀さんとの恋愛事情も一喜一憂。勇気…頑張れ。そして繁ばあちゃん最強説。 続きを読む
投稿日:2016.09.04
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黒猫館の殺人〈新装改訂版〉
綾辻行人 / 講談社文庫
他の館シリーズと比べると…少しアッサリ風味かも?
8
シリーズ第六弾。火災で重傷を負い記憶を失った老人・鮎田冬馬の依頼により、その手記から『黒猫館』の存在を知る事になる鹿谷門実と江南孝明。人里離れた森の中に建つ館に潜む真実とは…。全体的にアッサリ、今まで…のシリーズとは少し違うイメージを受けました。鮎田の手記に最初に違和感を覚えたのは、胃凭れで「身体の左側を下にして」とあった時。右だろ? と、胃痛持ちの私は思った。それから手記部分を丁寧に読み、違和感と、鮎田が彼である事に気付くも、ラストでの謎解きまでスッキリとはいかず。最後はやっぱり成る程…の一冊。 続きを読む
投稿日:2015.10.11