レビューネーム未設定さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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オイレンシュピーゲル壱 Black & Red & White
冲方丁, 白亜右月 / 角川スニーカー文庫
これぞまさしく冲方丁
2
冲方丁といえば、『天地明察』『光圀伝』が有名ですが、隠れた名作としてこのシュピーゲルシリーズを推したいです。
シュピーゲルシリーズ最大の特徴は、「/」「+」「=」を駆使した、無駄を省いた独特の文章表現…。一般的な小説の物とはまるで違うので、最初は面食らうかもしれませんが、慣れてしまえばむしろ普通の小説よりサクサク読めます。
ストーリーも非常に硬派。一言で言ってしまえば、「ISの皮を被ったメタルギアソリッド」。
様々な勢力や国家の思惑や政治経済が絡む重厚なストーリーは完成度が高く、特に4巻以降はそれが顕著になります。
キャラクターもしっかり作られており、一癖もふた癖もある美少女が大量に登場。
姉妹作である「スプライトシュピーゲル」のキャラとのクロスオーバーも楽しみの一つです。 続きを読む投稿日:2013.10.04
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ハーモニー
伊藤計劃 / 早川書房
過大評価されがちだが、わたしは好きだよハーモニー
2
作者死去とともにブームが過熱し、「過大評価なのでは?」とも「正当評価だ」とも言われる論争が(一部で)繰り広げられている『ハーモニー』ですが、死去後に改めて読み直すと、作者自身の「生への執着」がひしひ…しと感じられてしみじみとしてしまいました。
徹底した健康管理という過剰な優しさを押し付ける「生府」のある世界で、二人の少女が冒険する果てに導きだされる驚くべき結論には、嘆息せざるを得ません。
『虐殺器官』は正直メタルギアソリッドからの借り物感が強かったのですが、『ハーモニー』になって作者独自のカラーが出たのではないでしょうか。もう読めないのは、残念です。 続きを読む投稿日:2013.11.13
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はなとゆめ 電子ビジュアル版
冲方丁, 遠田志帆 / 角川文庫
宮廷は女の戦場!
2
予備知識として平安時代の宮廷文化や覇権争いについて知っておかないときついところがありますが、それを乗り越えてしまえば大変面白いというか、凄い作品です。
清少納言と中宮定子の心温まる交流、宮廷で繰り…広げられる壮麗な催し、そしてその裏で繰り広げられる男たちの政争……。
宮中の女性たちが、華やかな振る舞いや言葉の力で、辛く厳しい現実に立ち向かう様がとても感動しました。
清少納言にとって中宮定子は、己が生きる意味を見出してくれた唯一の希望なのだなあ、とラストでしみじみとしてしまいました。
新聞連載時の挿絵を全てフルカラー収録してくれたのも大変うれしい。少し値段は張りますが、イラスト付きのほうが断然お勧めです。
また、少し穿った見方をすると、清少納言×中宮定子のソフト百合本としても楽しめますよ!
中宮定子が、清少納言不在のときにあれこれ手紙を送ってよこすシーンとかキュンキュンしちゃいます!
続きを読む投稿日:2013.12.22
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代償のギルタオン
神高槍矢, おぐち / 集英社スーパーダッシュ文庫
熱血スーパーロボットもの……ではない
2
異世界を舞台に、強大な力を持つロボット"ギルタオン"に乗って戦いの日々を送るパイロット達を描いたSFファンタジー。
こう書くと、熱血スーパーロボットものを彷彿とさせますが実はその逆を行く作品。
…旅の途中、ギルタオンを操るテロリストと軍の戦闘に巻き込まれた兄妹が、敵のギルタオンに対抗するため、新たに発掘されたギルタオンに搭乗することを軍から迫られるも……実はギルタオンには、強大な性能と引き換えにパイロットの大切なものを奪うという恐ろしい性質があった……。
愛する者を守るため、多大な犠牲を強いるロボに乗るか乗らないかという点に焦点を合わせた作品で、極限状態のなかで狂い、自らの保身のために脅迫してまでロボに乗らせようとする大人達の描写がエグい。
乗れば不幸になり、乗らなければ全滅という状況のなかで主人公が下す決断とは。
新人離れした高い筆力で人間の汚さがあますところなく描かれ、読後感が非常に重い作品なので覚悟してください。
続きを読む投稿日:2014.06.06
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パニッシュメント
江波光則, 海童博行 / ガガガ文庫
ライトノベルを越えたスーパーヘビー級小説
1
イラストに騙されてはいけません。
あらすじを読む限り、ラブコメディに思えますが、そうではありません。
本作のテーマは「父殺し」と「信仰」。しかも、上辺だけ軽く触れたようなものではなく、作品の根底までそ…れが影響している凄まじく重厚な作品です。
これまでのラブコメ的展開から一気に様変わりし、「家族とは何か」「信仰は悪いものなのか」というテーマを徹底的に突き詰めていく後半は壮絶の一言。
「ラノベ版ドストエフスキー」と云われるのも頷ける作品で、「ライトノベルだから・・・」という理由で敬遠するのはあまりにももったいなさすぎる一作です。 続きを読む投稿日:2013.09.25
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王子降臨
手代木正太郎, mov659 / ガガガ文庫
バカすぎるようで意外とまともなSF時代劇
1
2013年のライトノベルの奇書と名高い一作。
上のあらすじの時点でもうこの無茶苦茶っぷりはなんとなく伝わりますが、本編はそんなもの比じゃないくらいのカオスっぷり。
圧倒的な「美しさ」だけであらゆる敵に…立ち向かう「王子」の八面六臂の活躍がすごい。
敵を圧倒的美しさで懐柔する。
圧倒的に美しいので敵の攻撃が当たらない。
泣いたら枯渇した泉がまた湧いた。
ギャグだろ、と思うかもしれませんが全然茶化す気がないし、ストーリー自体は非常にシリアスでグロ描写もあります。
「美」というテーマだけを偏執的なまでに追い続けて大法螺を吹いた結果がこれだよ!
この無駄な大法螺はバリントン・J・ベイリーの『禅銃』やキルラキルの元ネタとして知られる『カエアンの聖衣』、山田風太郎作品に通じており、これらの作品が好きなら絶対読むことをおすすめします。 続きを読む投稿日:2013.11.26