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代償のギルタオン
神高槍矢, おぐち / 集英社スーパーダッシュ文庫
熱血スーパーロボットもの……ではない
2
異世界を舞台に、強大な力を持つロボット"ギルタオン"に乗って戦いの日々を送るパイロット達を描いたSFファンタジー。
こう書くと、熱血スーパーロボットものを彷彿とさせますが実はその逆を行く作品。
…旅の途中、ギルタオンを操るテロリストと軍の戦闘に巻き込まれた兄妹が、敵のギルタオンに対抗するため、新たに発掘されたギルタオンに搭乗することを軍から迫られるも……実はギルタオンには、強大な性能と引き換えにパイロットの大切なものを奪うという恐ろしい性質があった……。
愛する者を守るため、多大な犠牲を強いるロボに乗るか乗らないかという点に焦点を合わせた作品で、極限状態のなかで狂い、自らの保身のために脅迫してまでロボに乗らせようとする大人達の描写がエグい。
乗れば不幸になり、乗らなければ全滅という状況のなかで主人公が下す決断とは。
新人離れした高い筆力で人間の汚さがあますところなく描かれ、読後感が非常に重い作品なので覚悟してください。
続きを読む投稿日:2014.06.06
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クレイとフィンと夢見た手紙
友野詳, スオウ / MF文庫J
女性向けのようにみえて意外と本格的なSF
1
昨年からちらほらと登場するようになったMF文庫Jの異色な作風のライトノベルシリーズ。
これもその一つにあたります。
女っ気のない表紙から分かるように男性向けの萌え要素はあまりないのですが、かとい…って「女性向け」といって敬遠していてはもったいない作品です。
人狼や吸血鬼といったファンタジー世界の住人が人類と共存する20世紀初頭の地球に、人々の想いの詰まった「手紙」を届けていく二人組の冒険を描いた短編連作集なのですが、その背後にはかなりしっかりとしたSF要素が見え隠れしています。
リンカーンが異種族解放政策を掲げていたり、各国が異種族を懐柔しようと画策していたりといった史実と上手く絡めた展開にも注目。
さらには歴史の裏で暗躍する闇の蒸気の勢力との戦いもあり、今後がますます楽しみなライトノベルSFです。 続きを読む投稿日:2014.02.26
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蒼天のサムライ 第一部 端琉島脱出戦
田代裕彦, naji / オーバーラップ文庫
硬派なファンタジー戦記
4
ライトノベルコーナーにおいて異彩を放つ表紙に惹かれた方もいるのではないでしょうか。
最近流行のファンタジー戦記ものですが、中世ヨーロッパ風の世界観を採用するものが多い戦記ものの中では珍しく、第二次…世界大戦のような近代的世界観を採用しています。
ドラゴンと飛行機が激突する世界を舞台に、ドラゴンとともに戦場を駆け抜ける兵士達の戦いが、歴史小説風の文体で描かれます。
戦記ものなら当然ですが、人死にが多く萌えのなさそうなストーリーですが、ドラゴンとの熱い信頼関係に萌(燃)えていただければ。 続きを読む投稿日:2013.12.31
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はなとゆめ 電子ビジュアル版
冲方丁, 遠田志帆 / 角川文庫
宮廷は女の戦場!
2
予備知識として平安時代の宮廷文化や覇権争いについて知っておかないときついところがありますが、それを乗り越えてしまえば大変面白いというか、凄い作品です。
清少納言と中宮定子の心温まる交流、宮廷で繰り…広げられる壮麗な催し、そしてその裏で繰り広げられる男たちの政争……。
宮中の女性たちが、華やかな振る舞いや言葉の力で、辛く厳しい現実に立ち向かう様がとても感動しました。
清少納言にとって中宮定子は、己が生きる意味を見出してくれた唯一の希望なのだなあ、とラストでしみじみとしてしまいました。
新聞連載時の挿絵を全てフルカラー収録してくれたのも大変うれしい。少し値段は張りますが、イラスト付きのほうが断然お勧めです。
また、少し穿った見方をすると、清少納言×中宮定子のソフト百合本としても楽しめますよ!
中宮定子が、清少納言不在のときにあれこれ手紙を送ってよこすシーンとかキュンキュンしちゃいます!
続きを読む投稿日:2013.12.22
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電気サーカス
唐辺葉介 / アスキー書籍
デジタル黎明期の薄暗い青春
1
唐辺葉介は『死体泥棒』『ドッペルゲンガーの恋人』などで、マニアから高い評価を得ているライトノベル作家。
唐辺葉介初の一般文芸進出作である本作は、インターネット黎明期を舞台に、一家離散を経験した青年…の暗く甘い青春を描き出す大作です。
紙だと500P超となる分厚い小説ですが、その分読みごたえはあり。
まだブログもtwitterもなかった時代、インターネットに希望を見出した者達の物語をごゆっくりとお楽しみください。 続きを読む投稿日:2013.12.22
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王子降臨
手代木正太郎, mov659 / ガガガ文庫
バカすぎるようで意外とまともなSF時代劇
1
2013年のライトノベルの奇書と名高い一作。
上のあらすじの時点でもうこの無茶苦茶っぷりはなんとなく伝わりますが、本編はそんなもの比じゃないくらいのカオスっぷり。
圧倒的な「美しさ」だけであらゆる敵に…立ち向かう「王子」の八面六臂の活躍がすごい。
敵を圧倒的美しさで懐柔する。
圧倒的に美しいので敵の攻撃が当たらない。
泣いたら枯渇した泉がまた湧いた。
ギャグだろ、と思うかもしれませんが全然茶化す気がないし、ストーリー自体は非常にシリアスでグロ描写もあります。
「美」というテーマだけを偏執的なまでに追い続けて大法螺を吹いた結果がこれだよ!
この無駄な大法螺はバリントン・J・ベイリーの『禅銃』やキルラキルの元ネタとして知られる『カエアンの聖衣』、山田風太郎作品に通じており、これらの作品が好きなら絶対読むことをおすすめします。 続きを読む投稿日:2013.11.26