【感想】マリアビートル

伊坂幸太郎 / 角川文庫
(1078件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
437
418
124
16
3
  • 新幹線の揺れ

    この作者らしい、時系列をあえて入り乱れさせた技巧的な構成と軽妙な会話がとても目立つ作品である。使いつくされた舞台であるが新幹線車内という舞台は緊張感を盛り上げるのに適している。同じ作者の「魔王」でも描かれていたが、面白半分に人の心理や行動を自在に操る人物の造形が大変に際立っている。特にこの作品では「中学生」という形を取っているので悪魔的で更に目立つ。あまりにも真に迫ってうまく描かれすぎているので、嫌悪感を催してしまうほどである。
    ところで新幹線の揺れが大きな役割を果たしている。東北新幹線ってそんなに揺れたっけ?
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    投稿日:2022.09.24

  • 主人公はマリアビートルでした

     東北新幹線の中が死体で一杯になってしまう物語です。ぞっとしますねぇ。
     沢山の殺し屋が登場し、物語は同時進行で展開していきます。これだけの登場人物がいる物語を映像で同時進行させたら無茶苦茶になりそうですが、その点小説は凄いですよね。そして、読み手である我々の頭も凄いよね。ちゃんと同期させることができますものね。
     あまりにも登場人物が多くて、しかも、次々と殺されていきますから、誰が主人公か最初はわかりませんでした。読んでいる最中は、この本のタイトルを意識していなかったからで、主人公は、ちゃんとタイトルに示されていました。
     てんとう虫は、マリア様の七つの悲しみを背負って飛んでいく、これはどっかで使えそうなフレーズですな。
     物語は東北新幹線の中で、殺し屋達の緊張感あふれるやりとりが読みどころとなっていますが、私は、というか、おそらく多分、誰もが思ったかもしれませんが、あの「王子」という中学生がず~と鼻持ちならない存在でした。だから彼の最後がどんな風だったか、もっと詳しく知りたかったなぁ。なんて、ちょっと残虐になっている自分がいます。
     それにしても、結局最後に残ったのは、ついていないとぼやいていた主人公でありました。人生とは結構そんなものかもしれませんね。自分は不運の星の元にいるのだと信じていれば、どんな状況になっても冷静に対処できるのかもしれません。おまけのように掲載されている短編が、また面白かったですよ。
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    投稿日:2020.09.03

  • 殺し屋なのに憎めない。

    殺し屋なのに、読んでるうちに誰も死んでほしくないと、思ってしまう。なぜ人を殺してはいけないのか。それを殺し屋の立場から答えさせるのは、なんだかとても皮肉ってて、面白いなあと。鈴木先生の、”殺人を許したら国家が困るんだよ”という考え方、あー、なるほど、と。テンポもよくサクサク読めます。ただ、最後の結末が、もっとクリアーにしてくれ〜!と、私は思うのです。もちろん、この後はAXにいきたいと思います!続きを読む

    投稿日:2017.11.30

  • エンターテイメント?

    久しぶりに伊坂幸太郎の作品を読みました。

    小さな子供がいるので(いや、いなくても)木村の息子のエピソードは、可哀想で可哀想で、他人事じゃない気持ちで切なく悲しく、胸がムカムカと気持ち悪くなりました。だからこそ、いつもの伊坂作品のように最後にスカッと勧善懲悪で終わらせて欲しかったけど…
    スッキリしないよ!一番の悪が中学生だからハイ、殺しましたって訳にもいかないのかもしれませんが。

    初期の頃は、散りばめられた(伏線と気付きにくい)伏線が最後に回収されていくのが非常に気持ち良かったのですが、読みすぎたのでしょうか、だいたいの伏線がぷんぷん匂うようになり、やっぱりそうくるよね、という予定調和な感じ。こんな性格の悪い読み手がいるから、いかにもな「鍵」のダイイングメッセージは肩透かしにしたのかな。
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    投稿日:2016.07.13

  • エンターテイメント!

    『グラスホッパー』の方が物語としてはよくできていたと思うけど、とにかく理屈抜きに楽しめる。
    ぶっそうな殺し屋の対決の話なのに、キャラの立った登場人物が皆生き生きとしていて魅力的!
    個人的は、王子と七尾が好きだったな。
    くすっと笑えるところもあるし、とにかく飽きさせない。
    『グラスホッパー』の登場人物も登場して、にやっとしてしまうし。
    『グラスホッパー』を読んでなくても十分楽しめると思うけど、読んでればなお楽しめるかなぁ。
    最高のエンターテイメント!
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    投稿日:2016.01.24

  • 新幹線での静かな激闘

    東北新幹線『はやて』の中で、愉快な殺し屋たちのブラックユーモアが交差する、色々な面白さが詰まった作品のように感じました。独特の伊坂ワールドは健在です。もちろんマリアビートル単品でも面白いとは思いますが、グラスホッパーを読まれてない方は、そちらを読まれたあとにマリアビートルを読むと、より広く深い彼らの世界が覗けるのでは、と思います。続きを読む

    投稿日:2015.09.04

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ブクログレビュー

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  • アカバナ

    アカバナ

    このレビューはネタバレを含みます

    王子慧の醜悪さが終始響いていて、なんだかんだ勧善懲悪の伊坂氏がどう鉄槌を下すのか(それとも下されないのか)ハラハラしながら読んだ。
    寝起きの悪い伝説の殺し屋夫婦がまぁ〜〜カッコイイ!雄一さんも生きててよかった。さすがの生命力である。
    鈴木と槿の登場は前作からのファンとしてはとても嬉しかった。ある問答を通して王子に一矢報いる(?)鈴木がかっこいい。槿のちょい役としての存在感もすごい。
    檸檬と蜜柑のプチ復活もよかった。ほっこり。

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    投稿日:2024.05.06

  • ゆな

    ゆな

    このレビューはネタバレを含みます

    うわ〜〜!うわ〜!!すごいわくわくしながら頁をめくった1冊だった!
    前作『グラスホッパー』もさすが伊坂幸太郎な1冊だったけど今作はもうなんかレベちにおもしろかった…(相変わらずの語彙力)
    続編めちゃめちゃおもしろ〜!となったのは中山七里の御子柴弁護士シリーズ以来。
    殺し屋シリーズ、シリーズものとは言うものの登場人物は被らないと思ってたら『グラスホッパー』で登場した押し屋の『槿』と『鈴木先生』もふんわり良い感じに登場してて、読んでなくても問題ないけど、前作読んでる勢を嬉しくてさせるくらいの量で出できてまんまと嬉しかった。

    殺し屋たちだからクズが出てきたり緊迫する場面や残酷な描写もあるのに、そこここにちょっと笑える場面があって、それを主に担ってた『天道虫』なる七尾が有能でかっこよかったな〜。

    「運が良ければ? 冗談で言ってるんだろ」七尾は笑いこらえる。「俺を誰だと思ってるんだ。俺にとって『運が良ければ』って言葉は『絶対起きないけど』って意味と同じだよ」

    上記描写が地味に好き。
    もう自分の運の悪さを諦めまくって開き直ってる。
    基本オドオドしてるのにめちゃくちゃ腕が立つ。

    『蜜柑と檸檬』の退場は寂しかったけどこの2人は作品内ではいかすキャラでも普通に悪だからね、仕方ないね…
    「近所の知り合いが〜」とか「悪いディーゼル車」とか、2人の間で通じる隠語めいたもので展開が変わっていくのが、あまり仲良くなさそうなコンビの絆を言葉なく見せられててさすがだった。

    殺し屋たちを上回る悪意としての『王子』は、さすがに中学生だからか直接的な制裁描写はなかったけど、ちゃんと退場させられたみたいですっきりした。おまえが寝起き悪くて有名な悪人かよ、伝説のジジイ!でもかっこいいよ〜!!

    「なぜ人を殺してはいけないのか」をしたり顔で質問しては「フン、こいつも凡庸な人間か…」ってなってる王子に対しての鈴木先生の回答はすごくよかった…こんな厨二病ぽい質問、と思いつつも確かに明確に何故かは答えられないなと思ってたけどなるほど、「経済が回らなくなるから」かと。その法則で考えると安楽死法も実行はされないんだなーと思った。

    それぞれが交わってひとつのストーリーになってく今作もほんとにおもしろかったー!伏線回収やばい!
    女装男性とおじさんのコンビもなんかあるのかなと思っけどこの2人はなんもなかったね。

    おもしろすぎて興奮のまま書いてしまったけど、
    次の『AXアックス』もたのしみ!
    というか映画『ブレットトレイン』て『マリアビートル』をハリウッド化したものなんだね…!観てないけど観たいと思ってたから観なきゃ!

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    投稿日:2024.05.02

  • ゆう

    ゆう

    伊坂幸太郎らしい先の読めない展開が非日常の世界へと連れていってくれた。伊坂作品の中でも強烈な悪人である王子の振る舞いは読んでいて怒りと苦痛を感じたが最後には制裁が下される展開に気持ち良さを感じた。それぞれの登場人物の発言にもキレがあり日常に退屈しそうになった時に読みたい一冊である。続きを読む

    投稿日:2024.04.29

  • 佳

    幼さやあどけなさを武器に好き勝手やってきた王子さまが、1番侮っていた人生経験豊富な大人2人に成敗されるの良すぎる

    投稿日:2024.04.29

  • シンカ

    シンカ

    このレビューはネタバレを含みます

    グラスホッパーよりもマリアビートルの方が面白かった。
    バッカーノ!の1931年の列車編を思い出しながら読んだ。
    機関車トーマスのキャラに詳しくなれる。
    蜜柑と檸檬が好きだったがあえなく脱落。

    木村一家がぱない。強い。
    木村が撃たれたときの章で木村の印鑑が斜めになってるのはあとから知った。

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    投稿日:2024.04.27

  • k

    k

    このレビューはネタバレを含みます

    わたしは納得いかない終わり方!
    蜜柑vs王子をもっと見たかった
    檸檬がいなくなったあとの檸檬の生き方をなぞる場面をもっと見たかった
    蜜柑と檸檬の復活の仕方も、王子がどうなったのかあやふやなのも納得いかないー!
    木村家が強すぎることだけは確かで良かった
    王子は死んでいてほしい

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    投稿日:2024.04.25

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