【感想】博士の愛した数式

小川洋子 / 新潮文庫
(2063件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
737
725
440
44
4
  • 哀しくて、切なくて、それでも心温まる一冊

     小川洋子さんの代表作品の一つ。映画化もされた有名な物語ですので、読んだ方も多いのではないでしょうか。

    【内容情報】(「BOOK」データベースより)
    「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていたー記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

     小川洋子さんの小説には、なんらかの障がいを持った人物が主人公として登場することがありますが、この物語も交通事故によって高次脳機能障害になったと思われる数学者が主人公として登場します。

     年老いた義姉が有する屋敷の離れに一人で住む彼は、記憶が80分しかもたないため身の回りの世話をするための家政婦が通っています。しかし、どの家政婦も長続きせず、義姉に次々と交代させられてしまいます。

     新しい家政婦として通うようになった「私」は、博士の数学に関する素晴らしい知識と愛すべき人柄に接していくうちに、息子とともに博士の”友だち”として心を通わせるようになります。

     静かで、穏やかで、少し哀しくて、でも心が温まるという結末が待っていますが、そこに至るまでの過程が丁寧に描写されていて、本を閉じたときに思わずため息が出てしまいました。

     名作はやはり読んだほうが良い。単純なことながら、あらためてそう思いました。皆さんもぜひ。
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    投稿日:2013.12.06

  • 優しさにすっぽりと包まれる

    優しく穏やかに進む物語
    何度読んでも同じように感動してしまう
    読後幸せな気持ちになりたいなら 是非!

    投稿日:2013.11.07

  • 純文学と数学と野球の三角関数

    沢山の伏線で、美しさと発見の喜びと喪失の哀しみの関係を結晶化させた作品。読んだときの自分の立ち位置(立場・経験・関心事等)によって見え方が異なり、何度も繰り返し読んでも、まるで新しい作品に出会ったかのような気持ちになれると思います。

    評者の場合、新しいことを記憶できないことの辛さに寄り添そうと、痴呆に苦しんだ祖母のことを想いながら読みました。

    小川さん、美しい作品をありがとうございます。
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    投稿日:2015.10.04

  • 読み返したくなる

    数式と言う小難しい題材を用いながら、自然に読ませてくれる。素数が好きになる。3人のことが好きになる。特に野球の試合を見に行ったときの博士がいい。読んで損はない作品。

    投稿日:2013.10.09

  • 映画もいいけど、小説もおすすめ!

    静かな感動が、小さな波紋のように押し寄せてくる小品。

    数学に秘められた「詩」や「物語」を、愛しさを込めて語る博士。

    自分の病気を当たり前に受け入れた彼は、限られた記憶の中で、自分の愛する数学とその周辺の人々を、やわらかな包容力で見つめ続けた「静」の人だと思います。
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    投稿日:2013.10.15

  • 小川さん独特の慈悲深い文章がたまらない

     ストーリーそのものに何か大きなトリックやどんでん返しがあるわけでもないのに、その文章の暖かみにグイグイ引き寄せられます。数式ネタは数学者の藤原正彦さん(「若き数学者のアメリカ」は、僕の青春の一冊!)によるものだそうですが、一つ一つのエピソードが光っている。
     色々な描写から、舞台は岡山なのだろうと思わせるところは、地元民にとってはツボです。
     全てが変わった日、1992年9月11日。忘れもしない阪神×ヤクルト戦(甲子園)の、八木の幻のホームラン・・・。 阪神ファンには忘れられない9.11を小説のターニング・ポイントに設定しているところもツボでした。
     読むだけで清涼な気持ちになれた一冊です。
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    投稿日:2013.10.04

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ブクログレビュー

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  • うけひこ

    うけひこ

    80分しか記憶が持たないという儚い博士の生涯を描いた物語。
    これはある意味、本当の意味での一期一会なのではないかと感じた。
    同時に過去や現在に縛られず「今」を生きるということの大切さを知った。

    投稿日:2024.04.27

  • ふっとぼーる

    ふっとぼーる

    数学に対する言語化できないような手触り、肌感覚が美しい言葉で表現されている。その繊細な数学の対極にあるような阪神タイガース。にもかかわらずうまくマッチしている不思議な世界。

    投稿日:2024.04.24

  • nao

    nao

    80分で記憶がなくなる数学博士との日常が描かれている。

    ずっと日常生活の描写が続くのに飽きることなく読める。
    登場人物の愛に溢れるキャラクターに惹かれるからかもしれない。

    数学博士は小難しく対応が難しそうだが、謙遜し、数学や人に対して愛に溢れる憎めない様子に思わず微笑んでしまう。

    それに博士の子どもたちへの無償の愛には感動する。
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    投稿日:2024.04.23

  • mowm0w

    mowm0w

    このレビューはネタバレを含みます

    そもそも、小説を中学生の朝読書ぶりに読んだけど面白かった。友愛数はハグしてるとか、双子の数のやつをお揃いの服きて手繋いでるとか、病院で博士泣いちゃうとことか、君が料理を作ってるのを見るのが好きなんだ とか……すごすぎる。綺麗な文だなと思ってそこの行だけ何回も読み直すシーンがいっぱいあった。面白かった。

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    投稿日:2024.04.22

  • ゆうり

    ゆうり

    私が中高生の頃、おすすめ100冊とかによく載っていたので、タイトルは知っていたが今日初めて読んだ。なんて暖かい、心を包まれるような物語だろう。数学って、どちらかというと無機質なんてイメージだが、ここではその美しさが暖かいつながりをうんでいる。

    博士の記憶は80分しか持たない。
    その80分の中で、数字が博士と家政婦の主人公、息子のルートをつなげてくれる。
    ルートと博士の友達としての絆が素晴らしい。
    そして、何とも美しい数学の世界。完全数とか考えたことなかったな。高校の頃、担任の数学教師が、黒板に書いた数式を見て、美しいだろ!って言っていたことをふと思い出した。最初、はぁ!?って思っていたが、びっくりするほどスムーズな式で解が出たとき、すごく気持ちよかった感覚は覚えてる。

    この物語、面白いのが登場人物の名前は1人も出ていない。博士、とか、ルート、とか、未亡人としか表現されていないが、ひとりひとりの姿がありありと頭に浮かぶのだ。これぞ、文学の力だなぁ。
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    投稿日:2024.04.17

  • ミルクコーヒー

    ミルクコーヒー

    このレビューはネタバレを含みます

    物語が進んでも博士の病気が治ることはないし、なにか奇跡が起こるわけでもない。反対に博士の記憶はどんどん短くなるし、タイガースは負けが続くようになる。でも、博士が生きた意味、出逢った意味は確かにあったのだと最後まで読んで1番強く感じる

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.14

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