guriさんのレビュー
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国境の雪
柴田哲孝 / 角川文庫
国境を越えた先に広がる風景
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近いのに遠く測り知れない国、北朝鮮という国の、怖いもの見たさの好奇心で手に取ったのが切っ掛けです。アクション映画を見ている様な適度なスピード感と次の展開への期待と焦燥で一気に読んでしまった作品です。ク…ライマックスは...、あまり詳細には語れないけれど、雪のように美しい結末です。読後は、朝鮮半島や中国など、お隣の国々が、ちょっと気になる存在となった様な感じです。 続きを読む
投稿日:2017.01.23
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イスラーム国の衝撃
池内恵 / 文春新書
こいつらって一体、何? これが手にした切っ掛けです。
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何故、シリアとイラク、二つの国にまたがって占拠できているのか?何故、地元住人たちは従属せざるを得ないのか?そもそもイスラム教とは何なのか?
穏健なはずの本来のイスラム教が、何故、過激思想に発展し、残酷…な処刑方法をも厭わないのか?
遠く離れた場所での出来事だった為、漠然としか考えていなかったが、今回、邦人が巻き込まれた事から、その恐るべきテロリストの実態について興味を持った。
私達には、馴染みのない宗教に基づいているし、また世界的規模の大問題な為、理解するのに、少々難解な部分があったが、読後は、わだかまっていたものが少しはすっきりした。
常日頃から、こいつら一体なんなんだろう?と思っている人は、読んでみるのもいいでしょう。 続きを読む投稿日:2015.03.10
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太陽は動かない
吉田修一 / 幻冬舎文庫
スパイシーな香りと、エキゾチックな雰囲気満載のスパイ小説
3
普段、余りスパイものを手に取る事はないが、この作者の作品は、今まで大きく期待を外された事がなかったので、思い切って読んでみた。
舞台が、近隣のアジア各国やアメリカにまで及んでいる為、内容や設定が残虐で…閉鎖的であっても、スケールの大きさや、空間的な広がりを常に感じながら味わう事が出来た。
タフな登場人物も魅力的だし、ラストの展開も適度な焦燥と充足感があって、一読の価値はあるでしょう。
さすがに、芥川作家! ★は4評価を付けたが、本当は4半位。
続きを読む投稿日:2015.02.06
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その女アレックス
ピエール・ルメートル, 橘明美 / 文春文庫
「このミス」の評判に、だまされたかな?
12
かなりハイスピードなサスペンス映画を観た様な印象。映像であれば、登場人物のキャラクターの濃さとショッキングな展開と次々に移り変わる画面の迫力で、内容は薄くても飽きる事なく、腑に落ちない部分があっても自…分勝手に想像して楽しむ事が出来るが、活字となるとやはりそうもいかない。ラストも、もしかしたら作者は、締め切りに追われ、中途半端に脱稿したのではないかと思うような終わり方。翻訳本であるから訳し方にも、問題があるのかもしれないが、期待が大きかっただけに却ってがっかりした。読んでつまらない作品ではないので、ヒマつぶしにはいいでしょう。だけど、グロテスクな場面も多く含んでいるので要注意。 続きを読む
投稿日:2014.12.30
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紙の月
角田光代 / ハルキ文庫
紙のように白く薄い月
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平穏な日常生活を送る主婦が、偶然の出来事と、ある切っ掛けにより犯罪に手を染めて行く。しかし、彼女は、犯罪とは考えていない。知らずのうちに出来てしまった心の空虚を物欲で満たすように、搾取した金は後から補…填すればいいと簡単に考えていたから。金銭感覚のマヒは、余程、堅実でない限り、女性であれば誰もが陥りやすい。どれだけの労力と貴重な時間を提供して金銭を得ているかを、常に肝に銘じていればいいのだろうけど、自分自身を高める為に華美に装って、そして、もっと人に良く見られたいと思う気持ちになるのは共感できる。主人公である梨花や、その友人らが買い物をしている場面では、余りの潔さに羨望と爽快感すら覚えた。だが、読後は、いつもより金の価値をシビアに考える様になった。
兎に角、先の展開が気になって、一気に読んでしまいたくなる作品。
宮沢りえさん主演の映画も、観に行きたいと思った。 続きを読む投稿日:2014.11.11
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月と蟹
道尾秀介 / 文春文庫
試しに、海水をなめてみた時のように、しょっぱい思い出
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なぜ、自分は自分なんだろう?と、漠然とした疑問が心の奥底に、常に潜んでいた小学生の頃。私は、主人公のように「少年」ではないけれど、けがれない瞳に映った世界は、心の泉を良くも悪くも染めて行ってしまい、時…には、前後の見境もなく行動を起こしてしまったりする姿などには、既に、忘れかけていた子供時代の「純粋さ」を、思い出させてくれました。
所々、子供の目線からの比喩、隠喩が鏤められ、傷付きやすいけれど、冒険心に富んだ少年の心模様が、分かりやすい言葉で描かれていると思います。
冒頭から登場するおじいさんの、孫である少年への愛情は、温かく、そして時には切なく感じられ、読後の印象は、すがすがしさで一杯でした。
ピュアな物語がお好きな人にお勧めです。 続きを読む投稿日:2014.10.03