hisashi9さんのレビュー
参考にされた数
103
このユーザーのレビュー
-
教師格差 ――ダメ教師はなぜ増えるのか
尾木直樹 / 角川oneテーマ21
現場が分かってる人の教育論
3
教育関係者は読むべき良書。本書は(著者も、ですが)すでに紹介する必要もないほど世の中に知れ渡っており、今さら感を抱きつつ読みました。読後感は非常に良かったです。現場感覚とのズレがまったくない(まあ、言…うまでもないことですが)確かな教育論で、ある意味、当たり前のことしか書いてありませんでした。その、当たり前のことが学校の外の世界には見えにくい。見えていないモノを感覚的にいじろうとして、かえっておかしくなっちゃった、というのが2000年代以降に教育界が抱えたひとつの問題でしょうか。第一次安倍内閣の教育再生会議がその後の日本に与えた影響についても、改めて振り返ることができました。 続きを読む
投稿日:2014.01.29
-
ファシリテーション力が面白いほど身につく本
高野文夫 / 中経出版
タイトルどおり、ファシリテーションを知りたい人のための本
3
職業柄、単独で仕事をすることがほとんどなく、異なる世代の人と協力して事に当たらなければなりません。とこう書くと、多くの人も同じ思いではないでしょうか。
会議がスムーズに進んだり、チームの生産力や推進力…、発展的人間関係をこの上なく渇望しています。と言うと、これに関しても、多くの人が共感されるのではと思います。そんな人にはこれは便利な本だと思いました。
本の内容は表紙が物語っていますが、そしてわざわざこの本にたどり着いた人には言うまでもないことでしょうが、このファシリテーションという比較的新しい、聞きなれないタームが、なんだか魅力的なんです。
本文中にもあるのですが、コーチング技術が1対1ならファシリテーション技術は1対多で、ファシリテーションによってチーム・組織・会社全体の活力向上を目指すという考え方です。これはもう、集団を形成する者にとっては常に必要な技術ですよね。
技術というよりも発想の転換というか、いつもの振る舞い(癖や習慣)を変えてみる、思考パターンを変えてみる、みたいな感じで、自己啓発的な話に若干偏り気味にも感じましたが、明日からちょっと変わってみよッ、と思わせてくれる熱意みたいな何かはありました。
図やイラストも各セクションふんだんに掲載されていて、ファシリテーションの手法や分析が視覚的にも理解しやすいです。ただリーダーでは、そういったキャッチーなはずのページの表示能力があまり高くなく、視認性も悪いと言わざるを得ませんが…。
とにかく、読んで良かったと思いました。 続きを読む投稿日:2015.04.07
-
父親力 母子密着型子育てからの脱出
正高信男 / 中公新書
「イクメン」ではなく親父であること
3
非常に面白かったです。もちろん、笑い転げるわけではありませんが。
まもなく二児の父親になる身で、上の子は1歳半。できることがどんどん増えてきています。父親として、子どもらにたくましく強く成長してほし…いと思う一方で、子育てにそれほど知識があるわけでもないので、こういう本を読みたいなと思っていました。そういう人には、すごくオススメです。
初版はもう10年以上前ですが、そして本書で扱われている調査データはそれよりさらに少し昔ですが、主張はちっとも古びれていません。むしろ流行り廃りでないところに共感できます。
傾向と対策みたいな、マニュアル的な、あるいはノウハウ伝授型の本ではありません。「こんな時どうしたらいいの?」に答えてくれるわけでもありません。(でも、安易にそういうものを求めがちですよね)この本を読んだ人が、それぞれ自分の父親力をいかにして発揮しようかと思えるように、背中を後押ししてくれる本でした。
貧弱な子どもにしたくはなく、そして貧弱な父親としての自分でありたくもないので、読んで良かったです。 続きを読む投稿日:2015.03.13
-
半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義
半藤一利, 宮崎駿 / 文春ジブリ文庫
骨太の愛国談義
3
映画「風立ちぬ」を見て、この本を読もうと思いました。
はっきり言って面白かった。2人の生々しい人間性が、対談という形を通して浮き上がって見えてくる感覚に、思わずのめり込み、引き込まれました。
2人とも…にずいぶん年齢を重ねて来られたのに、若い頃、小さい頃の事をよく覚えておられて、私の知らない昭和史を分かりやすく、時に面白く語りかけてもらっているような感覚になりました。
この人たちはどうしてこんなにはっきりと当時の事を覚えていらっしゃるんだろう、と不思議に思いつつ読み進めていきました。人が記憶している事は人に伝えたい事でもあるのですよね。昭和のある一時期、日本は間違った方向に進んでしまった。二度とあんな過ちを繰り返してはいけない。そういう思いで、何があの時代にあったのか、私たち次の世代に伝えたくて、その事を記憶してこられたのでしょう。私たちの世代には、その記憶をできるだけ正確に理解し、また次の世代に伝えていく責務があります。
太平洋戦争を経験した人の話を聞くということを、その大切さを改めて痛感した本でもありました。 続きを読む投稿日:2014.07.05
-
コーチングの技術 上司と部下の人間学
菅原裕子 / 講談社現代新書
コーチングの技術 上司と部下の人間学
3
今さらコーチングという感もあると思いますが、この著者の他の本を読んで、こちらも購入してみました。
先に読んだ方は家庭での子育て支援に関わる内容で、コーチングのスキルを生かし、子どもを生き生きと伸ばして…いく働きかけとはいかにあるべきか、が書かれていたのに対し、こちらはその活用場面が世間一般でより認知されている、職場でのコーチングの活用法が紹介されています。私は基礎的なことが分かりやすく、具体的に書いてあると感じました。同僚や上司・部下など、職場の人間関係を改善したい人や、コーチング面白そうだけど、まだあまりよく知らないという人、自分自身をセルフコーチングして高めたい、という人におすすめです。 続きを読む投稿日:2014.01.08
-
アメリカひじき・火垂るの墓
野坂昭如 / 新潮文庫
傷を癒すために、誰かに伝えるように
3
ジブリ好きで、読んでみました。ぜひみなさん読んでください。
命の尊さとか自由平等とか言いますが、つい70年くらい前は紙切れのように命は軽かったんでしょうね。物語はあくまで虚構であると分かっていますが…、どうしてもノンフィクションの部分に思いが巡ります。清太や節子を可哀想に思うけれども、日本中に清太や節子が溢れていたんでしょうね。誰か清太のような子たちを非難できるのでしょうか。戦争をすることのいかに愚かなことか、を思います。
他数編、収録されているいずれも心打たれる物語でした。戦争によって負った傷は永い時間が経過しても、いつまでも消えないんだと思いました。
読むにはたいへん、たいへん辛い本書ですが、ぜひ多くの人に読んでほしいです。 続きを読む投稿日:2014.12.08