Hachiroさんのレビュー
参考にされた数
186
このユーザーのレビュー
-
RDG レッドデータガール 全6冊合本版
荻原規子, 酒井駒子 / 角川文庫
合本版で正解
3
こんなにワクワクする楽しい読書体験はいったい何年ぶりだろう。第1巻はまだゆとりを持って読んでいたのだが、第2巻を途中まで読んだ頃には可愛い高校生たちの行動から目を離せなくなってしまい、仕事の合間を縫っ…て睡眠不足と戦いながら全6巻読了まで没頭してしまった。私の端末設定では2300ページ強、続けて読める合本版は正解でした。
また追記するかもしれないけど、とりあえずさっき読み終えてようやく一息ついたところ。久しぶりに玉置山を訪ねてみたくなった。日帰りでは山頂で満天の星空を見上げるのはちょっと無理かなあ。
――追記。お話の中身に触れます。
このお話は新設間もない特殊な一面を持つ私立中高一貫校の高等部を舞台にした現代日本ファンタジーです。タイトルはつまり「絶滅のおそれのある少女」という意味かな? 表向きは人間世界遺産候補の選定を巡る本命の陰陽師一派と対抗勢力の学園内異能バトル。でもその内実は、駅で切符を買ったこともない、なぜか携帯電話すらも使えない、世間知らずな一人の女の子の成長を見守る物語なのです。不器用ながらも生徒会執行部に所属し学園祭の裏方を務めていたら、いつのまにか…。
学園の所在地は東京都の八王子城跡付近でそれにちなんだ学園祭のテーマは戦国時代。他に舞台になるのは主人公出身地の奈良県十津川、夏休み合宿先の長野県戸隠。上でも書いたけど子どもたちがみんな可愛いのです。泉水子や深行たちはもちろん、人間じゃない真澄も和宮も、嫌いな高柳も、そして「姫神」までもがいつのまにか可愛く思えてきます。
そして何より、荻原規子さんのこの小説は、平井和正愛読者である私のツボをつきまくるのです…。「地球樹の女神」まんまの舞台設定。「悪霊の女王」アニマは「新幻魔大戦」ベアトリスなのかという展開。姫神が自分の理解者を求め千数百年前まで歴史をさかのぼってようやく出会った人物というのは、明言は無いけどあの人でしょう。
そしてやっぱりこれは、少女と少年の出会いの物語だったのだ。 続きを読む投稿日:2015.06.21
-
童話物語(下) 大きなお話の終わり
向山貴彦・著, 宮山香里・絵 / 幻冬舎文庫
人生はいつも旅の途中
3
ネット上のレビューなどが高評価だったのでキャンペーン期間中に上下巻を同時購入したものの、上巻「大きなお話の始まり」は主人公ペチカの視点でお話が進むのですが、文章は子供っぽいし主人公に魅力はないし失敗だ…ったかなと思ってしまいました。それでも次へ次へと読ませる不思議な力はあるようで結局上巻を読了。
下巻「大きなお話の終わり」ではもう一人のルージャンのお話とペチカのお話が交互に展開します。このルージャンのお話のほうが面白くて、またペチカのお話のほうにも花屋夫婦とか鉄道機関士の女性とか新しい登場人物が出てきて面白くなり一気に読んでしまいました。
ということで、上巻を読んだけど今一つかなという人でも上巻を読み切れたなら下巻は楽しく読めると思います。登場する町の位置関係などは上巻巻頭の地図を確認しながら読むとわかりやすいですが Reader ではこの地図が見にくいです。タブレットなどで地図を確認しながら Reader でお話を読み進めるのがいいかと。 続きを読む投稿日:2016.09.27
-
ボヘミアンガラス・ストリート 第1部 発熱少年
平井和正, 高橋有紀 / e文庫
電子書籍の歴史はここから
3
ストア入荷直後に衝動買いしちゃった。かつて酒見賢一氏が「陋巷に在り」文庫版のあとがきで絶賛していた伝説のオンライン出版小説がこの作品です。パソコン通信でこの小説が書下ろし配信されたのは1994年11月…だという。TXTを圧縮したファイルをダウンロードするシステムで当時の資料(単行本第1巻巻末の広告)によれば料金はネット会社により時間課金30円/分、または1冊700円となっている。私はまだパソコン持っていなくて3か月後にアスペクトから紙の本が出版されたのを買いました。
私がパソコンを入手し初めて Nifty Serve を利用したのはその年1995年の秋頃。書籍に使われていた高橋有紀さんのイラストのBMPファイルが Nifty でもダウンロードできて、そのファイルは巡り巡って今使っているパソコンの中にも入っている。縦480pxだから小さなイラストなんだけどね。実はそのイラストのうちモノクロの数枚を縦960pxに拡大して Reader のスリープモードのスタンバイ画面としてずっと使っている。だから実はほぼ毎日ブックカバーを開く瞬間とかに高橋有紀さんによるホタルや小雪ちゃんたちの顔を見ている。
で、この電子書籍だけど、イラスト高橋有紀とあるのでつい期待してしまったが、アスペクトの書籍に収録されている高橋有紀さんのカラー口絵やモノクロ挿絵は付いていません。新しく書き下ろされた表紙イラストのみでした。ちょっと残念だったなあ。e文庫の公式ツイッターがその情報を流したのはこの電子書籍が販売された1時間後だった。私はその前に買っちゃったぞ。まあ新しいイラストでホタル、小雪、伊福部、コスギ、…、と順にみんなに会えるのも楽しみだけどね。
いろいろ書いたけど私、発売当時は途中経過はとても楽しくこの小説を読んだのですが、実はエンディングがよくわからなかったのです。当時最終巻に感動したというみんなの感想をよく見たように思うが、私はキョトンとしていた。今ならわかるかな? Reader での再読が楽しみだ。 続きを読む投稿日:2016.03.17
-
幻魔大戦 20 光芒の宇宙
平井和正 / 角川文庫
幻魔大戦、第一期完結
3
無印とか小説決定版といわれる「幻魔大戦」第一期はこの巻で終了です。30年前の私は何度読み返したかわかりません。さて平井氏がライフワークとした幻魔大戦シリーズは、次に何を読めばいいのかとなりますね。まあ…何から読んでもいいんですけどね。
順序からいえば本作の前に「新幻魔大戦」があり、その後に本作と「真幻魔大戦」が同時進行で執筆され相互補完関係にありました。「真」は第三部まで書かれましたが、第二部のラストシーンは舞台や登場人物は違えど本作のラストシーンと対になっているような感じです。この後「真」は引き続き第三部が発表され、本作無印「幻魔大戦」は第二期のタイトルを「ハルマゲドン」と変更して執筆するものの単行本三巻分まで書いたところで中断となりました。「真」第三部も「ハルマゲドン」も途中で書くのを止めてしまった感じで、次は17歳の東三千子を描いた「ハルマゲドンの少女」を執筆します。その後作者は他の作品に移ってしまい、幻魔大戦シリーズは長く書かれませんでした。
で、どの作品を読めばいいかということですが、
シリーズとして読むのならまず「新幻魔大戦」があります。これがシリーズの全ての始まりですので、本作を読んだ後だと話が戻る感じになりますが…。石ノ森章太郎氏による劇画も小説版も内容は同じです。途中からは江戸時代が舞台になりあの人も登場しています。
本作のストレートな続編は「ハルマゲドン」ですが、これは少し書きかけただけで発表していなかったものが後に出版されたものです。作品の助走部分だけで中断してしまっており別に読まなくてもいいと思います。
一方「真幻魔大戦」はぜひ読んでほしい。本作中の布石の意味はこれだったのかと「真」を読んでわかるものが色々あります。ただ残念なことに未だ電子化されておらず、現時点では古本で読むしかすべがありません。
とりあえずは本作角川文庫版をこころゆくまで再読するのが楽しいかも。読み返すたびに新しい発見があるかもしれません。
その後については全20巻合本版のほうにレビュー投稿してしまいました。 続きを読む投稿日:2015.02.02
-
古事記外伝 正史から消された神話群
藤巻一保 / 学研
古事記再考
3
日本の国誕生の神話「古事記」は面白い。物語としてとても面白いのだが、やはりそこには、編纂された当時の政治的事情が盛り込まれている。天皇家に伝わる物語、取り巻く中央豪族が伝えてきた物語、大和朝廷に服従し…た各地方の先住民の物語。それらを元に何者かの意図が絡んでいく。ある神は習合し同一神とされ、ある神は追い払われ、ある神は朝廷に祟る。「日本書紀」や「風土記」、また古い神社に伝わる由緒などとの比較から、古事記に登場する神の原像を推察していきます。
まずヒルコ(蛭子・日子)、まさに謎の神の代表ですよね。またアマテラスの考察は私の思いもよらないものでした。イザナキ、イザナミの国生みのルーツは? サルタヒコはどんな神? スサノヲは? オオクニヌシは? 古事記を読み解くきっかけの一冊として面白い本だと思います。 続きを読む投稿日:2017.04.01
-
暁のイーリス
内堀優一, 槇えびし / NOVEL 0
神の伝令
3
江戸の町で飛脚の熊八が知り合ったのはリュウバだかリョウマだかいう土佐の田舎侍。このお侍さん、郷里でも洟垂れ阿保垂れ寝小便垂れと馬鹿にされていた情けないヤツです。そいつがクマさんの死んだ弟に似てたばかり…に、ちょっと助けてやったことからすっかり懐かれ友達に。そして時代は、黒船がやってきて幕末の動乱となっていきます。まるで落語でも聞いているような軽快な語りにグングン引き込まれていきました。
で実はクマさん、白狐の神様に見込まれています。この神様はこれから起こる政(まつりごと)が見えてるらしい。クマさんが伝える神様の伝令を天命と信じその実行に奮闘する龍馬。うつけなはずの龍馬の行動が世の中を変えていきます。前半の軽やかさから後半は時代のうねりを感じる骨太な物語になっていくではありませんか。
でもね、歴史の事実として私たち読者は坂本龍馬が暗殺されることを知っています。そのあたりがどうなるのかなと気になりますよね。そして勝さんと西郷どんの会談、江戸無血開城に至る歴史的会談の真実やいかに。
あ、主人公はクマさんこと熊八です。韋駄天の飛脚ですが江戸の町で女房子供と平穏に暮らしたいただの町人です。 続きを読む投稿日:2016.09.29