クラフト★ビア★マンさんのレビュー
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BIOMEGA 1
弐瓶勉 / ウルトラジャンプ
”シドニア”作者の本当の姿が見える超ハードSF
8
最近「シドニアの騎士」のアニメを毎週楽しみにしてます。
売上もじわじわ伸びているようで、リーダーストアで目にする機会も増えたなぁと思います。
そのシドニアの作者、弐瓶勉さんの本当の姿が見える、超ハード…SFが本作「バイオメガ」です。
設定、ストーリー、作画、セリフすべてがまったく読者に媚びず突っ走りまくり、超パースのきいた構造物の描写にしびれます。
何度か読んだのですがどんな作品か人に説明する自信がありません・・・。
(説明文読むだけでも設定の複雑さが伝わると思いますが・・・世界観はシドニアと共通点あり)
シドニアよりだいぶ前に読んでいたので、シドニア読んだときは同じ作家と思えませんでした。
シドニアは、作画もストーリー展開も全く違い、かなり大衆寄りというか、わかりやすさをとりこんだなあと。
バイオメガを読むと、まさかこの作者がハーレム描写とかラブっぽい描写を書くとは全く思えない・・・(笑)
正直誰でも楽しめる作品ではないので、SF小説とかSF映画とかに耐性がある人か、どれだけぶっ飛んだ作品なのか怖いもの見たさで試したい人、
弐瓶勉という作家を深く知りたい人にお勧めします。
(内容は他に見ないすごいものですが、一般受けしないという意味で星は3つで。好きな人は5つけるのじゃないかなぁ。) 続きを読む投稿日:2014.06.19
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知っておきたい「味」の世界史
宮崎正勝 / 角川ソフィア文庫
辛味、甘味、塩味、苦味、酸味、旨味から紐解く人間の欲望と世界史
8
五大味覚と言われる辛味、甘味、塩味、苦味、酸味に加え、日本人が発見した旨味。
当たり前だと思っていたこれらの味わいが100年単位で流行り廃りを繰り返し、現代まで繋がっていることを実感することができる良…著。
世界史や地理、文化人類学の観点から見ても面白い。
トマトとこぶだしにグルタミン酸の共通点があったりして、人類が美味しいと感じる味には共通項があって、それを別の場所で、違う方法で見つけて大事にしてきた文化があることが文化人類学冥利につきるというか、好奇心をそそる。グルタミン酸(昆布など植物系)とイノシン酸(カツオだしなど動物系)を組み合わせると「うま味の相乗効果」で飛躍的にうまみが増すとのことだが、日本のだしは、なんと合理的なものだったのか誇らしい気持ちになる。
フランス革命と現代のフランス料理・レストラン文化という、「社会体制」と「味」の民主化が連動しているのが目から鱗だった。美味しいものは貴族が独占してたんだなあ。旨いものは価値があり、莫大な金が動いていたと。奴隷制度の必要性もそのあたりにあるとすると、なんだかフェアトレードなんかにも興味が湧いてくる。
ものを食べるということを新しい視点で捉えたいひとは是非。雑学自慢としても使えます。 続きを読む投稿日:2015.09.07
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キッチン
吉本ばなな / 幻冬舎
喪失のなかにこそ希望って見えてくるわけで
8
自分にとって初のよしもとばなな作品「キッチン」。
まず驚いたのは、1988年発表だというのに言葉遣いや登場人物が古くさくなく、むしろ今っぽいこと。同じ80年代を描いた「イニシエーションラブ」がところど…ころトレンディ過ぎて(笑)読むのに赤面したことを思うと雲泥の差だ。
特に、主人公が転がり込んだ雄一の人物造形はまさに草食系で、その当時はかなり珍しいキャラだったんじゃないか。今だと割りと「あーあーいるいるこういうがっつかないのに気付くと知らない女の子と飲んでるやつ」という感じだけど。まあ、勝手に女子が寄ってくるモテキャラな訳です。
物語そのものは、身近な家族の死を少しずつ受け入れていく悲痛さを、主人公みかげが最も落ち着く場所、キッチンを軸に、リズミカルでふくよか、時に残酷な文体で紡いでいく、喪失と再生の話。
唯一の肉親である祖母を失って何もかもやる気がなくなる描写はとてもリアリティがあって、そんななか唯一できたことが料理で、それを糧に緩やかに回復を見せるみかげの心象は誰もが共感できるものだろう。意外と、何もかも失った時にこそ、最も大切な自分の軸が見つかったりするわけで。この点、うんうんうなづきながらじっくり読ませてもらいました。
雄一とその母(元父)えり子とのみかげの関係性は「おばあちゃんの行きつけの花屋の仲良し」というだけなのに、家に転がり込ませてあげるえり子と雄一の感覚ってとてもおかしいのだけど、えり子の人生がもっとぶっ飛んでいるのでこんなもんかと変に納得してしまう。
よしもとばななという作家がずっと人気な訳が少しつかめたような気がしました。
とにかく、カツ丼が猛烈に食べたくなります。 続きを読む投稿日:2015.02.13
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東京喰種トーキョーグール リマスター版 14
石田スイ / 週刊ヤングジャンプ
発売から2週間。何度読んでも咀嚼しきれない
8
東京喰種。初見では寄生獣の現代版で亜人の劣化版マンガ、くらいの印象でそこそこ面白いのでテンションはあまり高くないままなんとなく購入していた。
アニメ化でオープニングのかっこよさと月山さんのキレッキレぶ…りに一つ興味度が上がった。そこで、本刊である。
あまりの密度についていけず、適当に読んでいた過去巻を読み漁るが、わからないことばかり。一気に2014年度トップのマンガに躍り出た。衝撃。
1巻で5~6巻分の展開があり、ふつう1話かける重要なシーンを淡々と1ページで進んでしまう。
グールならではの詩的な表現と狂気が織り交ざり現実が釈然としない。
悪い夢を見ているままもう全部終わってしまうと思ったら想像だにしなかった現実が突然頭をもたげる。
これで混乱しないわけはない。しかも何年も前にちゃんと伏線が引かれていたという・・・。
まだ読んでいない人は、この巻を読むためにシリーズを買い始める価値、ありますよ。
どうやら、続くらしいけど。 続きを読む投稿日:2014.10.27
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伝染(うつ)るんです。(1)
吉田戦車 / ビッグスピリッツ
シュールという概念を教えてくれた4コマの金字塔
8
私は、「行け!稲中卓球部」と「伝染るんです」の笑いが共有できる人はまず仲良くなれる自信がある。
もう発売から20年は経っているのだけど、今読んでも破壊力抜群。
当時中学生だった自分に「シュール」という…概念を教えてくれた本。
「ふつうこう」というフォーマットを逆手に取ったズレを楽しむメタ的な笑いというか、高度なコンテキストが共有できないと笑えない、洗練された作品。
サブカル的な作品ではあるのだが、吉田戦車の本作は安易なシュールではなくて、ズレの強弱がとんでもなくセンスがあったり、ふつう説明のあるキャラや場面の背景を徹底的に描かないことで生まれる奇妙な空気(ちょっと味付けするとホラーになりそうな感じは松本仁志の「ビジュアルバム」と共通した感じがする)がたまらなく上手で、サブカル耐性がない人でもしっかり楽しめるだろう。1巻は結構試し読みできるのでまずはそちらを(あと、是非2巻の最初の話も!これやばい)。
4コマに限らず、あらゆる漫画好きな人にはぜひ読んでほしいギャグマンガの金字塔。電車の中で読むと吹き出すと思うのでご注意を。
他の似たような作品とは一線を画している(相原コージの「コージ苑」は今読むと大分古くてつらいし(涙))。
というか本作の影響でシュールなギャグ漫画というのが流行ったのだと思う。シュールという言葉もこの漫画の頃からではなかったか?
伝染るんです、とはよく言ったものだ。 続きを読む投稿日:2015.03.31
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喰う寝るふたり 住むふたり 1巻
日暮キノコ / 月刊コミックゼノン
なんだこの破壊力は!
7
付き合って10年、同棲8年のカップル。
男女両方の視点から描かれる何気ない日常。
なぜ10年もの間、この人を選んでやってこれたのか?という疑問を持ちながら、安心できる着地点に落ち着くのがとても心地よい…。
男女両方の目線から書かれていて、両方とも「ありそう」と思わせるリアリティがある。20代後半から30代くらいの、結婚を意識する世代には看過できない、立ち止まって考える瞬間があります。
男子がイケメン過ぎないのがいい感じ。そのおかげか、「リア充死ね!」ともならないと思います笑
青年コミックに属しているけど、やや女性コミック寄り。でも、性別問わず楽しめます。 続きを読む投稿日:2014.09.12