44αさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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風林火山
井上靖 / 新潮社
井上靖特有の気持ちの悪さ
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井上靖の小説を読んでいていつも感じるのは、主人公に対する気持ちの悪さだ。動機が常人には理解しがたい変態的なものであるため、どうにもしっくりこない。
だが、その違和感こそが、「現代ではない別の時代を読む…」という感覚に繋がるのだと思う。
この小説の主人公・山本勘助も、それらの例に漏れずなかなかに変態的な思想の持ち主だ。由布姫や信玄をあがめるさまは、どこかキティちゃんを愛でる女子高生のような滑稽な感じがする。
爽快な時代小説とはいいがたい湿った作品なので、井上靖のファンでない層にはあまり受けないかもしれない。
なお、原作とはいえ大河ドラマとはほぼ別物であるので、そのあたりは要注意。 続きを読む投稿日:2013.12.08
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十三番目の人格 ISOLA
貴志祐介 / 角川ホラー文庫
主人公がイマイチ
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多重人格ものということで、「24人のビリーミリガン」を意識して読まずにはいられなかった。
が、途中からはいい意味でそれが裏切られた。イソラの招待はなかなかのトンデモ設定であるが、個人的には伏線を活かし…たいい仕掛けだと思った。
ただ、主人公が、他人の感情を読めるエンパスであり、それなりに修羅場をくぐってきたにもかかわらず、いかにも善良なお嬢さんであるのが、腑に落ちなかった。著者の作品に登場するヒロインは、経歴がどんなに悲惨であれ、根が純粋で心優しい美女であることが多いが、この小説の主人公もまったくその通りといったところ。
そのためか、恋愛シーンがとにかく退屈で仕方がなかった。
読後も薄っぺらい印象が拭えない。 続きを読む投稿日:2013.12.07
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黒い家
貴志祐介 / KADOKAWA
ホラーというよりミステリだ
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犯人が誰か、と推理・探索するシーンが半分以上を占めているため、個人的には、ホラーではなくサスペンスやミステリに分類したくなる。
私はホラーを目的に読みはじめたために中弛みしてしまったのだが、恐怖シーン…に入ってからは一転、犯人の行動力と執拗さは相当の恐ろしさだった。
難局をいちど乗りきらせて安心させておいて、再びそれ以上の恐怖をもって畳みかけてくるところもいい。
サスペンスとホラー、両方が好みであれば、かなり楽しめる作品だと思う。 続きを読む投稿日:2013.12.07