金さんさんのレビュー
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いたいのいたいの、とんでゆけ
三秋縋 / メディアワークス文庫
オチが分かりにくい
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能力「先送り」、これが分かり難さの発端だが、それにも増してオチが分かりにくい。遊園地の件(くだり)から何の話が始まったのかさっぱり分からず、情景を思い描きにくい。最後まで読めば理解出来るが、兎に角、読…んでいる間、数十ページは混乱状態が続く。あとがきを含め、再読した方が理解は深まるだろう。二度も読まないけど。
暴力シーンは無駄に痛く、そしてそんな理不尽な暴力が溢れかえっている。正直救いのない物語だ。「いたいのいたいの、とんでゆけ」とそう唱えるしか救いがない。
穴の底で読んだら違うのかも知れないけど、少なくとも自分は穴にフタがされている物語で良い。 続きを読む投稿日:2019.01.09
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本日は、お日柄もよく
原田マハ / 徳間文庫
感動的な言葉にホロリ
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列挙したらきりがないくらい、良い言葉があふれ出してくる本。
エンターテイメントとしてもよく出来ていて、その構成の良さからかドラマ化もされている。
ただ政治家絡みな話しだけに、読者の政治信条によって…は不快な思い、複雑な思いを抱く部分も多い。その点では★-2だが、それを補って余りある言葉のステキさ。そして物語に登場する人々の気持ちよさ。★+1
政治の描写やOLの生態など、かなり時代背景が昨今とズレてしまっているのは勿体ない。 続きを読む投稿日:2019.01.05
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ただ、それだけでよかったんです
松村涼哉, 竹岡美穂 / 電撃文庫
幼い中学生の行動がそのまま本に
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作品上方のあらすじに「衝撃作」とか書いてありますが、それほどの衝撃は受けないでしょう。どちらかと言うと、どんどん期待から外れていく肩すかし感の方が遙かに大きい、そんな意味では衝撃。でも読み始めれば、結…末は相当気になりますよ。
オトナの考えで読んではいけない小説なんですよ。子供の、中学生レベルの発想、行動に共感しながら読まなくては、どんどん乖離していきます。本当に最後の最後まで、幼い中学生の考えと行動、それが物語を突き動かしています。
物語の〆も本当にオトナはズルイです。 続きを読む投稿日:2018.07.09
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伊藤くんA to E
柚木麻子 / 幻冬舎文庫
うん、岡田将生だ。
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映画未視聴、ドラマ視聴済み。
矢崎莉桜 役に木村文乃を持ってきている時点で、原作を破綻させているわけですが、この「伊藤くん」本当に「岡田将生」でピッタリ。珍しく小説を読むのに、ドラマキャストを思い描…いて読んでました。
前半は自己中の権化である「伊藤くん」に恋したり、恋されたり、ふったり、ふられたりと様々な女性との恋模様が描かれる。一人の「伊藤くん」を縦軸に物語が織りなされるので、当然、それぞれの女性達にもちょっぴり接点が生まれる。絡み合う物語。基本ライトで読みやすい。
しかし最後の「E」ラスボスである、ダメっぷりの見事な脚本家で師匠の矢崎莉桜、この人が出てきたとたんに難しくなる。突然に内面的な表現と展開が守勢を占め、内容は別の本であるかのよう。完全にA~Dまでは前座、前振り扱い。
「恋」こそしていないが「伊藤くん」にいろいろな意味で関わりあってしまっている「矢崎莉桜」が主役であることは間違いないだろう。そして「伊藤くん」に一番、振り回された人間だろう。
「伊藤くん」と言う最強モンスターを作り上げたつもりの魔王「矢崎莉桜」は、「伊藤くん」こそが真の魔王であり、無敗の存在だと知るのだ。
そしてエンディング。彼女にも希望の光がさす。
少なくともドラマ版では最後の「希望の光」はちゃんと昇華されていなかったように見えた。
映画やドラマを見た人も、小説はぜひ読んでみて欲しい。 続きを読む投稿日:2018.03.05
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新装版 不祥事
池井戸潤 / 講談社文庫
小説も痛快
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ドラマもなかな痛快であったが、あのイメージを残して読んでいても痛快。
キャストのイメージは微妙に違う気がするものの、すかっとする結末はどの短編も気持ちいい。
こんなきっちり作られた話、ドラマ化なん…て楽でしょうがなかっただろう。
ドラマとの違いはオチが付いたところで、ストンと終わる。無駄な後日談的説明はいっさいない。この辺もスピード感を維持して読み続けられる良さ。
読んでいて次から次へと面白い話が続く短編集。もの凄く濃い短編集だと感じる。その割りに読み進むのも早いという不思議。
ドラマなんて気にせず読んで、最高に楽しめる作品。
続きを読む投稿日:2018.02.22
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姫椿
浅田次郎 / 文春文庫
コース料理のような短編集
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前菜のようなファンタジーで始まり、次の表題作「姫椿」はスープのように体に染み渡る。
三話目「再会」はちょっとホラーっぽいが、ポワソンとしての「マダムの喉仏」はなかなかの味。
アントレ手前に「トラブ…ル・メーカー」でちょっとリセット。
アントレ「オリンポスの聖女」はしっかりとした味が噛みしめるほど来る。
シャレの利いている「零下の災厄」の後、口に運ぶまで予想しなかったくらい甘い味が広がるデセール「永遠の緑」。
ごちそうさまでした。
良くできた短編集です。ちょっとジャンルがあっちコッチするのでビックリしますが、コース料理と捉えればなかなかどうして良いシェフに出会えたものです。
短編集だけれども、一気読みをお奨めします。 続きを読む投稿日:2018.02.16