金さんさんのレビュー
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人生の一椀 小料理のどか屋 人情帖1
倉阪鬼一郎 / 二見時代小説文庫
期待通りのどかに進む
3
流行り物?なのか、料理人を中心とした人情物の時代小説。剣術物ではどうしても「切った張った」な殺伐とした空気がありがちだが、やはり食べ物が絡むとなんとも平和。
終盤に店の主に危機が訪れるが、それもまた予…定調和。実に平和で、長閑だ。
リラックスして江戸の時代にタイムスリップしたような気分を味わいたい、そんな時にサラッと読むのがいい。 続きを読む投稿日:2013.12.29
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遠くでずっとそばにいる
狗飼恭子 / 幻冬舎文庫
自分を見つめ直して人生をやり直す、そんなことが出来たら。
2
事故に遭い17歳に若返った主人公。
記憶が綺麗に10年無くなって17歳のある日として目が醒めたとしたら、肉体的にはどうであれ自覚は17歳でしかない。
知らないことの不安。
そして、17歳の主人公は無く…した記憶を求めて、27歳の自分を「彼女」と呼び探し求めるはじめる。
たとえ何があった10年だとしても、とても自分の趣味だとは思えない服、部屋、その生活。
知れば知るほど「彼女」は自分じゃない、自分とは違う人間と思える人だった。
誰からも好かれていなかったんじゃないのか、それどころか嫌われて居たんじゃないだろうか。
「彼女」の彼氏は本当に「彼」だったのか、高校の時からの親友の友情は本当なのか、、、向けられる愛、親切と疑心暗鬼。
主人公はゆっくりゆっくりと真実の扉の前に近づいていく。
「彼女」を取り巻く周りの人々はごく普通の善人(負の感情はあるが悪がない)ばかり。
(※ドラマを盛り上げる意図的な邪悪が無い世界なので安心して読める。)
そんな普通の人々に、暖かさに囲まれ「彼女」は、甘えワガママな生き方をしてきたようだ。
いやワガママを自覚しても、どうしようも無いモノに取り憑かれ、振り回されてしまった。
だからこそ17歳からやり直したかった、そんな思いが人の記憶を消す。
知識はある、覚えていない、忘れたことにする、忘れてしまった、記憶とはどういうモノなのか。
自分を見つめ直して人生をやり直す、そんなことが出来たら。。。
「彼女」は17歳からやり直して幸せになれたのか。
それはこの本を読んで確かめてみて欲しい。
続きを読む投稿日:2017.02.14
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つばさものがたり
雫井脩介 / 角川文庫
最初から着地点は見えている話
2
物語の世界を楽しんで下さい。
あらすじと読み始め暫くで、基本的な話の着地点は見えてしまうと思います。トリックもなくその通り進みますから、話の筋に奇想天外逆転など期待をしてはいけません。
この極々普通…な日常生活と、ちょっと不思議な「妖精が居る?」世界を楽しみましょう。
悪人の出てこない物語ですから、暖かい人々に囲まれた安心感を堪能して下さい。
妖精の試験シーンでは、主人公も読者である自分も、見えるわけではないのに興奮してしまいました。
最後のシーンより、途中途中の人々の優しさや思いにホロリ。
続きを読む投稿日:2014.11.26
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最後の医者は桜を見上げて君を想う
二宮敦人, syo5 / TO文庫
医療ドラマ風 仲良し三人組の成長物語
1
「死」「余命」とテーマは重い。そして当然、奇跡の救いがあるわけでもない。
日々そんな「死」と一番近い場所にいる「生」をもつ人間「医師」。
「熱さ」を纏う者、「冷静さ」を偽る者、「苦悩」から逃げる者…。
医学生時代に共に青春を過ごし、今は同じ病院の勤務医として働く三人の医師の成長物語。
紹介内容などとは異なり、相反する二人ではなく三人の医師が絡み合う。当初、誰が主人公なのか?と悩まなくてはならないが、三人が三人組で主人公であると思って読み始めれば良いと思う。
この三人の医師としての成長を書くために「患者が死ぬ」。そんな意味ではちょっと辛い本かも知れない。そしてそんな辛い思いをする割りに、ほんのちょっぴり成長する医師たちの物語なんだから、読者は割に合わない。
テーマは重く、これを読んだ後に自分でいろいろ考えるには良いが、この本そのものの内容は割りと「浅い」。この本はきっかけにしか成らず、何か新しい「解」を読者にもたらしてくれはしない。
逆に難しくなく、そんな意味では読みやすいと言って良いのか。 続きを読む投稿日:2018.01.31
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大事なことほど小声でささやく
森沢明夫 / 幻冬舎文庫
沢山の「イイ言葉」が詰まった本。
1
風圧で人をも飛ばしてしまう程のウインクを持つゴリマッチョなオカマのゴンママと、学級委員系メガネ女子 コスプレ風黒服バーテンダーのカオリちゃんが、巧みなコンビネーションでジム仲間の面々の悩みを解決。
…ゴンママの素敵な言葉達が、カオリちゃんのカクテル言葉とともに語られ、一人一人の人生を好転させていく。
プロローグと最終の第6章はゴンママなので、主人公はゴンママなのだが、第1~5章では、それぞれジム+スナック「ひばり」の常連一人一人が主人公となり、ゴンママは狂言回し的役割に。
第一章の本田宗一がゴンママと出会い、紹介される常連の面々が次章以降の主役。
こんな素敵な言葉を使うなんでもお見通しなゴンママでも、自分のこととなると目が曇るようだ。
ゴンママが言葉で救う人々の中には、カオリちゃんは勿論、実はゴンママ自身も、と言うところが第6章の締めである。(書籍紹介にも書いてあるからネタバレじゃないよね)
兎に角、こんな心地よい人たちと巡り会えるのなら、スポーツクラブSABにも直ぐに入会したいし、スナック「ひばり」にも通いたい。そう思わせる、素敵な話の数々。
助ける人数を増やせばいくらでも話は作れるだろうが、この位で、本当にちょうど良い感じ。終わりもしっかり締まる。
涙なしには読めないので、読書の場所は選ぼう。 続きを読む投稿日:2017.12.10
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翳りゆく夏
赤井三尋 / 講談社文庫
「いま目にしていることが嘘であって欲しい。心の底からそう思います。」
1
ドラマの方を先に見てしまっていたので、ラストの展開は分かっていたのですが、やはり感動的です。
面白いです!お奨めします!
この手のラストの謎へ向けて絡み合ったモノが全て動いていく、解けていく系は書評が…書きにくいんですよね。あまり書くと、書評寄せ集めればなんとなく見えて来ちゃいますから。
誘拐犯の娘が新聞社に内定を受ける、そこから始まる20年の時を越えたドラマとしか。
面白いことは間違いありません。
読む時間がないならTVドラマでも遜色ありません、良くできたTVドラマです。
ただ、全5話なので、読書の方が早いと思いますよ。
続きを読む投稿日:2017.01.28