明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記
平山亜佐子(著)
/左右社*
作品情報
日本の新聞黎明期。女だからと侮られ、回ってくるのは雑用ばかり。婦人記者たちは己の体一つで、変装潜入ルポ〈化け込み記事〉へと向かっていった── 観察力が光る文才、鉄砲玉のような行動力、私生活でもまばゆいばかりに破天荒。徒花(あだばな)とされ軽視されてきた彼女たちの仕事を時を超えて再評価し、型破りな生きざますらも肯定する、唯一無二の近現代ノンフィクション!
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商品情報
- シリーズ
- 明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記
- 著者
- 平山亜佐子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 左右社*
- 書籍発売日
- 2023.06.20
- Reader Store発売日
- 2023.06.12
- ファイルサイズ
- 33.6MB
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この作品のレビュー
平均 3.5 (11件のレビュー)
-
現在でも新聞・通信社記者のうち、女性の割合は男性の1/4程度(2022年の統計)だというが、戦前はさらに少なく、社内に片手で数えられる程度しかいなかった。運よく狭き門をくぐったとしても、担当となるのは…家事やファッションなどの「家庭的」な記事ばかり。スクープなどの花形記事は男性記者の特権だった。
そんな女性記者の仕事事情に風穴を開けたのが、本書で取り上げる「化け込み」。いわゆる潜入ルポのようなもので、「本来の素性を隠して、すっかり別人のさまを装」い(日本国語大辞典)、内情を記事にしてすっぱ抜く、というもの。
男性記者による化け込みもあり、対象は日雇い労働者や香具師、屑屋といった下層労働階級だった。対して、女性記者はカフェーの女給や個人宅の奉公人に化けた。なるほど、これは男性記者にはできない。
こうした化け込み記事はなかなかの人気を博し、明治から昭和初期、一種の化け込みブームが起きた。本書は女性記者による化け込み記事、そして記事で紹介された職業を取り上げる。
個性的な女性記者たちや、現在では存在しない時代背景を背負った仕事が興味深い。
この時代、新聞記者の社会的地位はさほど高くなく、「でもしか」的な存在だったという。大学を出たものの、官庁や大会社に就職できなかった者がする仕事。市井の醜聞を拾う、インテリ界のヤクザのような位置づけだった。
女性の場合はまた事情が違う。そもそも職業婦人として選べる仕事はそう多くない。教育を受けられる層も限られていた。採用は縁故が多く、スカウトのような形もまれにあった。
男社会の中で、なかなか長続きしない女性記者も多かった。恋愛問題が引き金となって辞める者も少なくなかったようだ。
女性記者には高等教育を受けた優等生もいたが、はねっかえりもいた。鼻っ柱が強くないと、化け込みのような企画は思いつかなかったかもしれない。
先駆けともなった女性記者は、フランスの雑誌から化け込み取材のヒントを得て編集長に直談判。行商人に化けて富裕家庭に潜入する連載を始める。世間一般では上流階級と見られているような家でも、掃除が行き届いていなかったり、ケチだったり、奉公人が主人の悪口を言ったり。全般に下世話な内容なのだが、まぁこういう話はいつの時代も読み手がつくのだろう。
人気コンテンツとなった化け込み記事は、他の女性記者にも引き継がれる。
中には危ない目に遭う記者もいて、カフェーでストーカーまがいの男に付きまとわれたりする。さらに危ない例になると、家出娘の化け込みをしていた記者が中年男に連れ込み宿に無理やり連れていかれたりする。いずれも、辛くも逃れてはいるが、一歩間違えば、事件になりかねない。とはいえ、際どければ際どいほど、読者の受けはよかったのかもしれない。
化け込み記事からピックアップされた職業紹介には、三味線弾き、電話消毒婦、百貨店裁縫部、ダンサーなどがあり、時代の空気を感じさせて興味深い。電話消毒婦の仕事というのは、花柳界の公衆電話の脇に置かれた消毒器に液を補充するというもの。近代、さまざまな伝染病が流行したが、電話の受話器の不衛生さに注目して考案されたのがこれである。通話の前に受話器部分を消毒器の蓋についたスポンジで拭う。さて、どれほどの効果があったものか。あまり意味のないことに皆が気づいて自然消滅していったのかと推測される。
化け込みブームが下火となるのは、1930年代末ごろという。戦争の足音が近づき、それどころではなくなっていったのだろう。
とはいえ、「化け込み」的な精神は今でも完全に廃れてはいないようにも思われる。
変わった視点の近代史、なかなかおもしろい。続きを読む投稿日:2023.12.25
女性がメディアで働くということが
当たり前ではなかった時代、
一種のキワモノ的な潜入記事で
切り込んだ女性記者のドキュメント。
世相史としても女性記者の置かれた
環境の歴史としても貴重な記録。
組織の…中で、ある程度、
数がいないと「普通に」仕事できない。
北村兼子の章を読み、今も構造は消えていないのでは?と思った。続きを読む投稿日:2024.02.24
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