【感想】明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記

平山亜佐子 / 左右社*
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
1
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6
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ブクログレビュー

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  • ukaiya

    ukaiya

    女性がメディアで働くということが
    当たり前ではなかった時代、
    一種のキワモノ的な潜入記事で
    切り込んだ女性記者のドキュメント。
    世相史としても女性記者の置かれた
    環境の歴史としても貴重な記録。
    組織の中で、ある程度、
    数がいないと「普通に」仕事できない。
    北村兼子の章を読み、今も構造は消えていないのでは?と思った。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.24

  • スズ

    スズ

    写真資料や注釈も多く読みながら情報量が凄いと思っていたが、巻末の主な参考文献の量に圧倒された。
    丁寧に説明はされているが、自分に当時の情勢などの知識が足りず読むのに苦労した。
    関連資料を読んで知識をつけてからまた読み直したい。続きを読む

    投稿日:2024.02.08

  • 匿名

    匿名

    なかぬか面白かった。化けこみ記事の存在を知らなかったのでなかなか読み応えがある。「婦人記者」のプライドの高さが透けて見える記事の内容に、色々思うところはあるが、ひとつ東京や大阪のような都市部の風俗を知るという意味でも楽しめる。続きを読む

    投稿日:2024.01.15

  • ぽんきち

    ぽんきち

    現在でも新聞・通信社記者のうち、女性の割合は男性の1/4程度(2022年の統計)だというが、戦前はさらに少なく、社内に片手で数えられる程度しかいなかった。運よく狭き門をくぐったとしても、担当となるのは家事やファッションなどの「家庭的」な記事ばかり。スクープなどの花形記事は男性記者の特権だった。
    そんな女性記者の仕事事情に風穴を開けたのが、本書で取り上げる「化け込み」。いわゆる潜入ルポのようなもので、「本来の素性を隠して、すっかり別人のさまを装」い(日本国語大辞典)、内情を記事にしてすっぱ抜く、というもの。
    男性記者による化け込みもあり、対象は日雇い労働者や香具師、屑屋といった下層労働階級だった。対して、女性記者はカフェーの女給や個人宅の奉公人に化けた。なるほど、これは男性記者にはできない。
    こうした化け込み記事はなかなかの人気を博し、明治から昭和初期、一種の化け込みブームが起きた。本書は女性記者による化け込み記事、そして記事で紹介された職業を取り上げる。
    個性的な女性記者たちや、現在では存在しない時代背景を背負った仕事が興味深い。

    この時代、新聞記者の社会的地位はさほど高くなく、「でもしか」的な存在だったという。大学を出たものの、官庁や大会社に就職できなかった者がする仕事。市井の醜聞を拾う、インテリ界のヤクザのような位置づけだった。
    女性の場合はまた事情が違う。そもそも職業婦人として選べる仕事はそう多くない。教育を受けられる層も限られていた。採用は縁故が多く、スカウトのような形もまれにあった。
    男社会の中で、なかなか長続きしない女性記者も多かった。恋愛問題が引き金となって辞める者も少なくなかったようだ。

    女性記者には高等教育を受けた優等生もいたが、はねっかえりもいた。鼻っ柱が強くないと、化け込みのような企画は思いつかなかったかもしれない。
    先駆けともなった女性記者は、フランスの雑誌から化け込み取材のヒントを得て編集長に直談判。行商人に化けて富裕家庭に潜入する連載を始める。世間一般では上流階級と見られているような家でも、掃除が行き届いていなかったり、ケチだったり、奉公人が主人の悪口を言ったり。全般に下世話な内容なのだが、まぁこういう話はいつの時代も読み手がつくのだろう。

    人気コンテンツとなった化け込み記事は、他の女性記者にも引き継がれる。
    中には危ない目に遭う記者もいて、カフェーでストーカーまがいの男に付きまとわれたりする。さらに危ない例になると、家出娘の化け込みをしていた記者が中年男に連れ込み宿に無理やり連れていかれたりする。いずれも、辛くも逃れてはいるが、一歩間違えば、事件になりかねない。とはいえ、際どければ際どいほど、読者の受けはよかったのかもしれない。

    化け込み記事からピックアップされた職業紹介には、三味線弾き、電話消毒婦、百貨店裁縫部、ダンサーなどがあり、時代の空気を感じさせて興味深い。電話消毒婦の仕事というのは、花柳界の公衆電話の脇に置かれた消毒器に液を補充するというもの。近代、さまざまな伝染病が流行したが、電話の受話器の不衛生さに注目して考案されたのがこれである。通話の前に受話器部分を消毒器の蓋についたスポンジで拭う。さて、どれほどの効果があったものか。あまり意味のないことに皆が気づいて自然消滅していったのかと推測される。

    化け込みブームが下火となるのは、1930年代末ごろという。戦争の足音が近づき、それどころではなくなっていったのだろう。
    とはいえ、「化け込み」的な精神は今でも完全に廃れてはいないようにも思われる。
    変わった視点の近代史、なかなかおもしろい。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.25

  • 午後のカッパ

    午後のカッパ

    2023年刊。「化け込み」は「身分を偽っての潜入」で記事ネタを収集する事。未だ男中心の分野・業界・組織は多いが、明治以降を中心に女性が社会人として活躍し始める一つの目立った仕事としてタイトルの視点で書かれた本。
    興味深くはあるけれど、とにかく情報密度が高い。小説なら紙面が真っ黒でない場合も多いが、この本は脚注を含めて真っ黒。その上、昔の言葉使いでの表記混じり。資料としての書籍でもあるので年代・年数・価格その他、とにかく数字も多くて退屈だ…。
    ついでとして女性が進出を始めた職業と、そこへの化け込み記事。今も昔も、男と女のドロドロした有様が今以上の差別・非道な扱いを伴って書かれていたり。正直、読み疲れた。
    終盤はかなりページを飛ばした。これは一重に個人的な相性の問題だけど。教科書をじっくり読み進めるのが大好き!みたいな人になら勧められると思う。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.16

  • 棚田 弘一

    棚田 弘一

    新聞の書評で興味を持って読んでみた。明治から昭和にかけて「化け込み取材」と言われた潜入ルポに携わった女性記者達の奮闘記。

    身体だけでなく時には命を張り、完全なオトコ社会の中で強烈なバイタリティで取材を重ねた4人の女性記者の軌跡が紹介されている。社会問題に取り組むといったものではなくどちらかと言えば下世話なネタが多いが、軋轢を恐れずに(時にはめげながらも)突き進む彼女らの行動力に驚かされる。続きを読む

    投稿日:2023.11.11

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