ストーリーが世界を滅ぼす―物語があなたの脳を操作する
ジョナサン・ゴットシャル(著)
,月谷真紀(訳)
/東洋経済新報社
作品情報
なぜ私たちはあの人の論破にだまされるのか。
事実と物語は混ぜるな危険!
陰謀論とフェイクが溢れる世界で生き抜く「武器としての思考法」。
文明を築くのに一役を買ったストーリーテリング。その伝統あるストーリーテリングが近い将来文明を破壊するかもしれない。
ストーリーテリングアニマルである私たち人間の文明にとって、ストーリーは必要不可欠な道具であり、数え切れない書物がストーリーの長所を賛美する。
ところが本書の著者ジョナサン・ゴットシャルは、ストーリーテリングにはもはや無視できない悪しき側面があると主張する。
主人公と主人公に対立する存在、善と悪という対立を描きがちなストーリー。短絡な合理的思考を促しがちなストーリー。社会が成功するか失敗するかはそうしたストーリーの悪しき側面をどう扱うかにかかっている。
陰謀論、フェイクニュースなど、SNSのような新しいテクノロジーがストーリーを拡散させ、事実と作り話を区別することはほとんど不可能になった。人間にとって大切な財産であるストーリーが最大の脅威でもあるのはなぜなのか、著者は説得力をもって明らかにする。
「ストーリーで世界を変えるにはどうしたらいいか」という問いかけをやめ、「ストーリーから世界を救うにはどうしたらいいか」と問いかける書。
スティーブン・ピンカー、ダニエル・ピンク絶賛!
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この作品のレビュー
平均 4.0 (41件のレビュー)
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物語を完成させるのは私たち
物語にはパラドックスが満ちている。
人をなびかせる物語の力は、赤の他人同士を強く結びつけ、大きな団結を生む共感推進装置だ。
では、かつてなく物語があふれている現在、私たちの共感の量はそれと同じだけ…増えただろうか?
実は、物語が生み出した共感は、「私たち / 彼ら」の境界線をぼやかすことではなく、それをくっきりと際立たせる。
同胞の苦しみと困窮に強い共感でつながっているからこそ、敵を罰する動機が生まれ、それが正当化される。
物語は、共感の数だけ非情さも生む。つまり、物語は共感を生むと同時に憎しみも生んでいるのだ。
物語の持つ道徳主義も同じ。
どんな物語にも誰もが同意できる道徳的なメッセージが込められていて、不道徳を称揚する物語など見つける方が難しいのだが、主人公が反社会的な敵役に対抗して集団をまとめるという道徳的な構造もまた、敵や脅威に対しては容赦なく抹殺しなければという筋に転嫁していく。
こうなると共感や道徳が本当に良いものと言えるのか疑問に思えてくる。
人間は物語なしに生きられない。
そう、ドラッグと同じで、私たちの心を狂わせ、残酷に走らせているのは物語が原因だ。
私たちをそれぞれ異なる現実の中に閉じ込め、社会に分断と不信と憎しみの種を蒔いているのも物語が原因だ。
であるならば我々は、「どうすれば物語から世界を救えるだろうか」、「どうすれば物語から毒を抜き出すことができるだろうか」と著書は問う。
結論は仰け反るほどしょうもないもので、罪を憎んで人を憎まずではないが、物語を憎んで語り手を憎まずって、なんじゃそら!?
読んでて強く感じたのは、ストーリーテリングの能力を魔力だと言って過度に重要視しすぎている点。
本書にも出てくる聖書には、殺人など残虐で不道徳な描写は満載だし、わが闘争など、その中で驚くほど明け透けに大衆動員のテクニックが披瀝されている。
著者が"でかメガホン"と隠喩のように語るトランプ前大統領も、本人自身がまさか自分が大統領になれるなんて最後の最後まで半信半疑だったというのだから、物語の力は語り手からではなく受け手によって持たされるところが大きい。
物語を完成させるのは、フィクションであれば作者ではなく、私たち読者なのだ。
物語の危険性も誇張し過ぎで、言葉やイメージに過度に真を置いている印象が拭えない。
先日読んだ『教養としての意識』の中でダマシオは、心や意識の存在を説明するのに、神経の活動という観点からのみに頼ろうとすることが、「意識は説明不能な謎である」という思い込みを助長してきたと語り、神経系のみに偏重した理論を「無益な試み」と切って捨てている。
意識が、神経系を持つ生物にしか生じないのは事実だが、同時に意識がそれ以外のさまざまな身体部位との豊かな相互作用が欠かせないこともまた事実なのである。
私たちの心が物語によって作られ、狂わされ、社会に不満や権力闘争を生んでいるという本書の主張は、一面的に過ぎる。続きを読む投稿日:2022.11.19
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雰囲気のようなものに飲まれないで自分の頭で考えましょうという内容の本かと思いました
興味深いけど難しい本投稿日:2024.04.02
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