第三次世界大戦はもう始まっている
エマニュエル・トッド(著)
,大野舞(訳)
/文春新書
作品情報
ロシアによるウクライナ侵攻を受けての緊急出版。
戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ。
「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。
ウクライナは正式にはNATOに加盟していないが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「NATOの“事実上”の加盟国」になっていた。米英が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからだ。現在、ロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、米英によって効果的に増強されていたからだ。
ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」がクリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからだ。「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」とプーチンは発言していた。つまり、軍事上、今回のロシアの侵攻の目的は、何よりも日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊することにあった。
ウクライナ問題は、元来は、国境の修正という「ローカルな問題」だったが、米国はウクライナを「武装化」して「NATOの事実上の加盟国」としていたわけで、この米国の政策によって、ウクライナ問題は「グローバル化=世界戦争化」した。
いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話しているが、むしろ「すでに第三次世界大戦は始まった」。ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突しているからだ。ただ、米国は、自国民の死者を出したくないだけだ。
ウクライナ人は、「米国や英国が自分たちを守ってくれる」と思っていたのに、そこまでではなかったことに驚いているはずだ。ロシアの侵攻が始まると、米英の軍事顧問団は、大量の武器だけ置いてポーランドに逃げてしまった。米国はウクライナ人を“人間の盾”にしてロシアと戦っているのだ。
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商品情報
- シリーズ
- 第三次世界大戦はもう始まっている
- 著者
- エマニュエル・トッド, 大野舞
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春新書
- 書籍発売日
- 2022.06.17
- Reader Store発売日
- 2022.06.17
- ファイルサイズ
- 4.2MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (61件のレビュー)
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ウクライナに国家が存在したことはない
実質的には、ロシアとアメリカの間の軍事衝突はとうに始まっていて、すでに第三次世界大戦に突入している。
この戦争の構図は、「民主主義陣営 vs 専制主義陣営」ではない。
露中も「権威的民主主義」なの…だから、民主主義陣営同士の戦いだ。
いやむしろ、米英の国内状況を見ればとても「民主主義の守護者」を名乗る資格などなく、「リベラル寡頭制」と呼ぶべき。
つまり、この戦争は人類学的視点に立てば、「リベラル寡頭制陣営 vs 権威的民主主義陣営」で、家族構造の観点からは、「父権制システム vs 核家族の双系制システム」の対立だ。
家族人類学者らしい観点から、ウクライナとロシアの家族システムは大きく異なっていて、プーチンの言う「ロシア人とウクライナ人の一体性」に疑問を投げかけてはいるのだが、ウクライナの核家族構造が生み出したのは、民主主義国ではなく無政府状態で、そもそもウクライナに「国家」なぞ存在しなかったというのはどうか?
ここは、歴史的にも社会学的にも、まとまりを欠いた地域で、自力では近代化することもできない、ロシアの周辺国。
クリミアや東部併合も、自決権の観点から正当化されるし、ロシアが暴力性を増したとしたら、それは西側の強硬姿勢のせいだと語る。
ウクライナ問題はもともと、ソ連崩壊後の国境の修正という「ローカルな問題」で、ロシアからすれば、1990年代前半に行なうべきだった国境の修正をいま試みているのだ、とする。
最後には、アメリカの独善的な行動を牽制するためにも、ロシアは超大国としていてくれた方がいいとまで言い切る。
このように首肯しがたい見解もあるのだが、中には頷ける指摘も。
「いかなる大国も、我慢がきかないものです。『とても感じのよい大国』など存在しないのです。ですから、均衡点を見つけて、大国と平和に共存することを学ばなければなりません」
長期的に見れば、ロシアと良好な関係を維持することは日本の国益にかなう、というのもその通り。
アメリカの思惑にも注意が必要。
この戦争は当初、アメリカにとって、ロシアとヨーロッパ(とりわけドイツ)の接近、ユーラシアの統一を阻止し、ドイツや日本の弱体化も達成できるため、戦略的利益にかなうものだったが、ウクライナ軍が抵抗し、軍事的に成功すればするほど、ロシア軍はより強い武器を用いることになり、戦闘はいっそう激化していっているため、アメリカにとっても、ウクライナ問題は死活問題になっている。
そもそもウクライナ軍をゼレンスキーはちゃんと掌握しているのか?
誰が主導権を握っているのかよくわからない。
ウクライナ政府の指導者層の実態がよく見えてこない。
それに連日、戦争研究所が作成した戦況報告が報道されてるけど、この研究所の所長は、ネオコン一家のケーガン一族だぞ、と。
それと最も重要なのは、ウクライナ危機のもつ歴史的意味で、今回のような「通常戦」は小国が行なうもので、「核」はその歯止めとなっていたのが、むしろ「核」を保有することで「通常戦」が可能になるという、新たな事態が生じている。続きを読む投稿日:2022.10.21
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約1年半前に書かれた、ロシアウクライナ戦争を中心に世界の動向を考察した本です。
そもそもこの戦争の経緯とは何なのか、ロシアがウクライナに侵攻した理由とは。
ミアシャイマーの見解も時折交えており、現実的…観点から俯瞰して世界の構造を理解できる本です。
最近発売された、エマニュエル・トッドの「西側の敗北」も日本語翻訳本が発売されたら読みたいと思いました。続きを読む投稿日:2024.02.27
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