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エマニュエル・トッド, 大野舞 / 文春新書 (61件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
ウクライナに国家が存在したことはない
実質的には、ロシアとアメリカの間の軍事衝突はとうに始まっていて、すでに第三次世界大戦に突入している。 この戦争の構図は、「民主主義陣営 vs 専制主義陣営」ではない。 露中も「権威的民主主義」なの…だから、民主主義陣営同士の戦いだ。 いやむしろ、米英の国内状況を見ればとても「民主主義の守護者」を名乗る資格などなく、「リベラル寡頭制」と呼ぶべき。 つまり、この戦争は人類学的視点に立てば、「リベラル寡頭制陣営 vs 権威的民主主義陣営」で、家族構造の観点からは、「父権制システム vs 核家族の双系制システム」の対立だ。 家族人類学者らしい観点から、ウクライナとロシアの家族システムは大きく異なっていて、プーチンの言う「ロシア人とウクライナ人の一体性」に疑問を投げかけてはいるのだが、ウクライナの核家族構造が生み出したのは、民主主義国ではなく無政府状態で、そもそもウクライナに「国家」なぞ存在しなかったというのはどうか? ここは、歴史的にも社会学的にも、まとまりを欠いた地域で、自力では近代化することもできない、ロシアの周辺国。 クリミアや東部併合も、自決権の観点から正当化されるし、ロシアが暴力性を増したとしたら、それは西側の強硬姿勢のせいだと語る。 ウクライナ問題はもともと、ソ連崩壊後の国境の修正という「ローカルな問題」で、ロシアからすれば、1990年代前半に行なうべきだった国境の修正をいま試みているのだ、とする。 最後には、アメリカの独善的な行動を牽制するためにも、ロシアは超大国としていてくれた方がいいとまで言い切る。 このように首肯しがたい見解もあるのだが、中には頷ける指摘も。 「いかなる大国も、我慢がきかないものです。『とても感じのよい大国』など存在しないのです。ですから、均衡点を見つけて、大国と平和に共存することを学ばなければなりません」 長期的に見れば、ロシアと良好な関係を維持することは日本の国益にかなう、というのもその通り。 アメリカの思惑にも注意が必要。 この戦争は当初、アメリカにとって、ロシアとヨーロッパ(とりわけドイツ)の接近、ユーラシアの統一を阻止し、ドイツや日本の弱体化も達成できるため、戦略的利益にかなうものだったが、ウクライナ軍が抵抗し、軍事的に成功すればするほど、ロシア軍はより強い武器を用いることになり、戦闘はいっそう激化していっているため、アメリカにとっても、ウクライナ問題は死活問題になっている。 そもそもウクライナ軍をゼレンスキーはちゃんと掌握しているのか? 誰が主導権を握っているのかよくわからない。 ウクライナ政府の指導者層の実態がよく見えてこない。 それに連日、戦争研究所が作成した戦況報告が報道されてるけど、この研究所の所長は、ネオコン一家のケーガン一族だぞ、と。 それと最も重要なのは、ウクライナ危機のもつ歴史的意味で、今回のような「通常戦」は小国が行なうもので、「核」はその歯止めとなっていたのが、むしろ「核」を保有することで「通常戦」が可能になるという、新たな事態が生じている。続きを読む
投稿日:2022.10.21
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ちゅけまる
約1年半前に書かれた、ロシアウクライナ戦争を中心に世界の動向を考察した本です。 そもそもこの戦争の経緯とは何なのか、ロシアがウクライナに侵攻した理由とは。 ミアシャイマーの見解も時折交えており、現実的…観点から俯瞰して世界の構造を理解できる本です。 最近発売された、エマニュエル・トッドの「西側の敗北」も日本語翻訳本が発売されたら読みたいと思いました。続きを読む
投稿日:2024.02.27
小野不一
小国のウクライナがロシア相手に長期戦を展開できているのは、アメリカとイギリスが軍事支援を続けてきたからである。両国は開戦前からウクライナに軍事的なテコ入れをしてきた。アングロサクソンこそ、世界を不安定…にする最大の要因だろう。 https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2024/02/24/140549続きを読む
投稿日:2024.02.24
Maxy
筆者の指摘する情報の偏りはボンヤリと認識してニュースを見てきたが、その向こう側を考察している本書の指摘は非常に興味深い。 その上で、ポストウクライナ戦争を考えた行動がこれから必要だ。特にアメリカの行方…は、結局無視できないという事。大統領選挙だけでなく、アメリカによる経済や世界政治への影響を常にモニタリングして、欧州を考えていきたい。 ロシア上空を飛べずに大きく迂回して長時間のフライトする機中で読了したのも、何かの縁だろう。続きを読む
投稿日:2024.01.28
chuck
なるほどな〜 こういう見方をする人もいるのか〜と、新鮮な発見があった 筆者は言わずとしれたエマニュエル・トッドさん フランス人の政治学者 本書では、ウクライナとロシアの戦争について。すでに第三次世…界大戦は始まっている!と筆者は説く。 たしかに、ウクライナのバックにはアメリカとイギリスがいる。 兵士訓練と武器供与を行っているのだから、これはちょっとした世界大戦と言っても良いのかもしれない そもそも、私たち日本人は西側の人間だ ウクライナに関するニュースというのは、基本的には西側からの観点で伝えられる ロシアにはロシアの言い分がある 戦後から世界秩序のためにコストを払い続けてきた 本来はロシアなりのプランがあった それが果たせずに、侵攻を開始した…というのが筆者の持論なんだけど、ちょっと世界をフェアに見すぎている気はする つまり、戦争犯罪を軽んじている さすが、本国フランスでは出版できない内容… アメリカは世界で戦争をしていてほしい 軍事大国として君臨し続けるため その視点は確かに… と思わざるをえない さらに筆者が言う、日本が核保有すべきとの主張は、納得感がある 核保有は戦争をするためではなく、戦争ゲームから逃れるため さすがのエマニュエル・トッドさん サラッとカジュアルに、地政学的な現況を解説する ロシア寄りと感じる読者もいるかも知れないけれど、国際政治の書籍としてオススメと言えばオススメ続きを読む
投稿日:2023.11.16
pinkfish
中国のロシアバックアップ。アメリカがウクライナを利用し、欧州の弱体化を行います。 世界の安定化が崩れています。
投稿日:2023.11.01
ひとみん
私はトッドさんが好きである。 だからこそ盲信したくないし、崇め奉りたくない。 読んでて違和感あるな、ってところは違和感のまま残したいし、素人ながらも自分で調べて考えたい、と思っている。 以下、書き…かけ ロシアを擁護する気は無いけれど、ロシアにも言い分があるし、反ロシアの国って意外に少ないんだね…という現実を直視できた。 そしてウクライナにもネオナチな側面がたしかにあったんだな、とも思った。 ホロドモールの悲劇についてちろっと記述があったので、ネット検索してみた。 スターリンが外貨を得るために、ウクライナ(ソ連時代)から農作物を過剰に収めさせて輸出したことで、また天候不良も相まって、国民は大飢饉に陥った。子殺し、食人も起こった、というショッキングな事が書いてあった。 この話題に関しては、ウクライナが核家族型だから〜というのを織り交ぜて書くのは、違うかなと思った。 ウクライナについてはやはりよくわからなってない部分が多いなと思う。続きを読む
投稿日:2023.09.28
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