夏の終り(新潮文庫)
瀬戸内寂聴(著)
/新潮文庫
作品情報
妻子ある不遇な作家との八年に及ぶ愛の生活に疲れ果て、年下の男との激しい愛欲にも満たされぬ女、知子・・・・・・彼女は泥沼のような生活にあえぎ、女の業に苦悩しながら、一途に独自の愛を生きてゆく。新鮮な感覚と大胆な手法を駆使した、女流文学賞受賞作の「夏の終り」をはじめとする「あふれるもの」「みれん」「花冷え」「雉子」の連作5篇を収録。著者の原点となった私小説集である。
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商品情報
- シリーズ
- 夏の終り(新潮文庫)
- 著者
- 瀬戸内寂聴
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 1966.11.10
- Reader Store発売日
- 2021.12.03
- ファイルサイズ
- 0.6MB
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この作品のレビュー
平均 3.5 (71件のレビュー)
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「雉子」が一番好かった
作者の小説は初めて。連作を含む5篇の短編私小説集。私小説というだけあって、男女の感情の機微、特に主人公である女性の感情が繊細に綴られている印象を持ったけど、最後の「雉子」が子供に対する感情が胸に迫って…きて一番好かった。続きを読む
投稿日:2024.04.29
-
習慣になった不倫は断ち切ることが難しい。
という言葉に度肝を抜かれた。
不倫が習慣だと? 私たちが普段特に何も考えず、ただ体に染み付いたルーティンのように行っているもの。例えば歯磨き、靴を履く、ご飯…を食べる、スマホを触る。
そんな、とくべつ頭で何も考えなくても自然にできるような習慣化したものの1つに、不倫だとは。
瀬戸内寂聴はアッパレです。
感情の言語化が非常に巧みだな。
そして、本の中で妻子持ちの慎吾と付き合いながら、同じく同時進行で関係を持っている涼太から
「僕はあなたにとってどんな存在か?」
と問われたとき、
主人公の言った
「憐憫よ」
という返しにも驚愕した。「P77」
その時は、へぇ〜憐れみ、可哀想っていう自惚れのような気持ちで付き合っているんだなぁと斜に構えて解釈してしまったのだが、
改めて考えると、自分にもそんな憐れみの気持ちで付き合っている存在がいなくも、ない、な。
始めは愛があり、好きなんだけど、本命に気持ちが傾くにつれ2人へ注ぐ愛情は等しくなくなっていく訳で、いつの間にか平行だった天秤はどちらかへ大きく傾き、軽さに上へ上がった方への扱いがぞんざいになってしまう。
インスタントでキープのような愛人。
それに比べて、肉体関係を持たなくとも、ただ2人でいるだけで幸せを感じる。浄福という。それが不倫相手だとしても。いや、不倫相手だからこそなのかな。
2人でいる時間が8年も続けば、それは習慣となるだろう。十何年と毎日行ってきた食後の歯磨きを、今日から止めなさいと言われたら嫌だし違和感感じまくるもの。
それが恋愛相手ならより一層、断ち切るのは容易ではないのだろう。
そして、この物語が瀬戸内寂聴の経験に基づいた私小説だということだから、更にリアリティは増す。人生は経験だよ、と身に染みて感じる。
不倫したことないのに、あたかも自分がしているように思えてしまうから、文章力はさすがだと感じた。
印象的な文章↓
P39 愛は抽象的な聖心の貴族であり、肉欲はその前では無様な道化にすぎなかった。
P117 歳月に綯いからまれた習慣は、裁ち切る努力をするよりも、そのまま巻き込まれていく方が、はるかに安易で楽なのだ。心も安堵の倦怠感になかば満たされかけていることに気づいてぎょっとした。
↓慎吾と別れる決断をする主人公のシーン
P164 別れという土壇場にのぞんでも、知子は新語に切りつける刃があるのなら、それで時分を傷つける方がやさしかった。
(好きな相手、愛することが習慣化した相手を傷つけるなんてできないもの。)
続きを読む投稿日:2024.05.21
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