GAFA next stage ガーファ ネクストステージ―四騎士+Xの次なる支配戦略
スコット・ギャロウェイ(著)
,渡会圭子(訳)
/東洋経済新報社
作品情報
「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」
「ビジネス書大賞2019 読者賞」
日本にGAFAという言葉を定着させた15万部のベストセラー
『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』著者最新刊!
コロナで肥え太った巨大帝国が「再び」世界を変える!
彼らは何を壊し、何を創るのか? 私たちは彼らの世界でどう生きるのか?
【本書の主な内容】
・四騎士+Xが世界を「絶望の赤」と「希望の青」に塗り分ける
・新型コロナは「時間の流れ」を変えた
・痛みは「弱者にアウトソーシング」された
・強者はもっと強くなり、弱者はもっと弱くなる。あるいは死ぬ。
・ポストコロナで勃興する新ビジネス
・パンデミックはすべてを「分散化」させた
・台頭するディスラプターズ
・GAFA+Xの暴走に対抗する
・・・ほか
【世界的権威が示す「GAFA+X」時代の希望】
・「青い聖騎士」の登場
・「プロダクト時代」のはじまり
・「フライホイール」「ランドル」をつくれ
・彼らの「新たな獲物」を予言する
・「最強のディスラプター」の8つの特徴
・・・ほか
【本書で紹介されている「+X」企業】
テクノロジー:マイクロソフト
観光・ホテル:エアビーアンドビー
寝具:ブルックリネン
旅行:カーニバル
保険:レモネード
動画配信:ネットフリックス
医療:ワン・メディカル
フィットネス:ペロトン
金融:ロビンフッド、パブリック
小売:ショッピファイ
音楽:スポティファイ
自動車:テスラ
SNS:ツイッター、ティックトック
配車サービス:ウーバー
メガネ:ワービーパーカー
シェアオフィス:ウィワーク
【GAFA+Xが狙う「次なる獲物」は、あなたの業界かもしれない】
GAFAは今後5年で収益を1兆ドル増やす必要がある。
そのためには新しい市場への参入が求められ、さまざまな領域に入り込んでいくことになる。
ウサギの肉で都市を満たすことはできない。もっと大きな獲物が必要だ。(本文より)
【前著 『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』読者の感想】
「皮肉とユーモア満載で面白い!ぐいぐい引き込まれた」
「読者を魅了する天才だ。知的で思慮深く、皮肉屋でありながらユーモアに溢れている」
「革命がこんな形で起きているとは!!本書を読むまで気づくことができなかった」
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平均 3.4 (29件のレビュー)
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【感想】
「何でコロナ禍で株価が上がり続けるんだよ」と日経平均を前に首をかしげた人は多いのではないだろうか。
金融市場は明らかに実体経済と乖離していた。しかし、この時期の米国経済を紐解いてみると、企業…全体がムラなく上昇したわけではなかった。S&P600(小型株)や400(中型株)の動きは控えめだが、500(大型株)の指数は急上昇を見せ、史上最高値をつけた。しかも、この史上最高値は1年間で「70回も」更新され続けている。大規模な会社の一人勝ち状態だったのだ。
そして、そのS&P500の中でも特に上昇を見せたのが、GAFAを始めとした大型ハイテク株であった。
本書は、GAFA+X(GAFAを始めとする巨大テック企業群)が、実態経済にどれほど影響を及ぼしているかを考察しながら、彼らがコロナ後に取りうる戦略と、彼らに規制を適用することの重要性について語る本である。前著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』はGAFAの具体的な取り組みを中心に構成されていたが、本書ではそれに変わるディスラプター(世界を変革するユニコーン企業群)に焦点を当てている。
前著と本書の間には新型コロナという世界的危機が発生している。そして、パンデミックで大企業がダメージを受けるどころか、より一層豊かになったという歪んだ事実がある。まだコロナが発生していなかった前著発売当時(2018年)でも、テック企業による市場独占は懸念されていたが、中小企業の利ザヤを大企業が吸収してますます大きくなっていく例(GAFAによるスタートアップの買収)が見られ、より一層手が付けられなくなっている。
こうした状況もあってか、筆者のGAFA(特にGとF)に対する批判は相当容赦がない。Facebookを「ヘイトクライムを助長する投稿を故意に放置している」と糾弾したり、Googleを「金もうけのために他者へ顧客情報を売り渡している」と断罪したりしている。この批判の背景にはもちろん「格差問題」があり、その格差問題が浮き彫りになったのがコロナであった。この「コロナ対策」と「格差問題」が本書の2本柱で、残りが「政府の役割」と「大学の今後」、「ディスラプターの紹介」といったところ。タイトルにGAFAとついてはいるが、GAFAの現状については最小限しか述べていないので、手に取る際にはそこを認識しておくといいかもしれない。
前作のレビュー
https://booklog.jp/users/suibyoalche/archives/1/4492503021
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【まとめ】
0 まえがき
パンデミックはものごとを加速させる効果を持つ。eコマースが定着し始めたのは2000年だが、2020年初頭においても、小売業におけるデジタル取引は約16%に過ぎなかった。しかし、3月から4月半ばには、その数字が27%に跳ね上がった。eコマースの10年分の成長が8週間で起こったのだ。
危機はチャンスを生む。ステイホームによる排気ガスの減少、リモート医療やリモート学習の移行による制度変革など、世界的な危機の到来が、新しい技術や価値観を持つ世代を育んでいく可能性もあるのだ。
1 パンデミックによる断絶と変革
コロナ不況に生き残れるか死ぬか。企業の明暗を分けたのは規模の大きさだった。大企業と小企業、先見性のある企業と時代遅れの企業――今日の勝者は明日になればもっと大勝し、今日の敗者は消えてなくなる運命にある。最大の犠牲者は、多数の従業員を抱えた財政基盤の弱い企業だ。そうした企業が経営破綻すると、機械や設備、あるいは顧客がよりどりみどりになり、トップ企業数社がさらに力をつけていく。
パンデミックは多くの業界で分散化を加速させている。アマゾンが店舗を自宅の玄関先に拡大させ、ネットフリックスが映画館をリビングに拡大させたように、分散化があらゆる業界で広がっている。
●医療
以前はリモート診療やリモート処方をほとんど認めなかった保険のルールが変わった。今後は電子カルテへの移行が期待される。
●飲食
食材のオンライン販売、料理のデリバリーの加速。
●テレワーク
テクノロジーにより、イノベーション能力や生産性を損なうことなく、職場の分散化が図られた。ただし、リモートワークの恩恵にあずかれるのは主に富裕層であり、収入格差の拡大が予想される。報酬が10万ドルを超える仕事の60%は家でもできるが、4万ドル未満の仕事では10%に過ぎない。
コロナにより広告時代・ブランド時代が終わりを告げ、プロダクト時代に移行しつつある。
プロダクト時代の基本的なビジネスモデルは2つ。
1つ目は、商品を製造コストより高い値段で売ること。アップルにおけるアイフォンが一例だ。
2つ目は、商品を無料あるいは原価以下で売り、他の企業に利用者の行動データを有料で提供すること。動画配信サイトなどが筆頭だ。こちらは私たちに関するあらゆるデータを企業が握るようになるため、安全性の観点から危険を孕んでいる。
産業界はしだいにこの2つのビジネスモデルに分岐していくだろう。すでにスマートフォンでその兆候が見られる。アップルのiOSは前者だ。高品質でブランド力があり高価格だが、裏でデータ利用されることが少ない。こちらを「青」のビジネスモデルとする。一方、グーグルのアンドロイドは後者である。まずまずの品質で初期費用が安いが(あるいは無料)、ユーザーのデータとプライバシーを広告主に差し出さなければならない。こちらを「赤」と名づける。
赤のメディア→youtube、グーグル、フェイスブックを始めとするありとあらゆるソーシャルメディア
(比較的)青のメディア→アップル、ネットフリックス、サブスクリプション・モデルを取り入れた後のTwitter
赤と青の違いは収益化の方法だ。グーグルとフェイスブックはエンゲージメントのモデルで運営されているが、ネットフリックスとリンクトインはサブスクリプション・モデルで動いている。
2 四騎士+Xの眺望
2020年の3月から7月までで、社会は恐慌とさえ言えるほどの不況に陥った。何十という有名企業が破産を申請し、失業率は3倍になり、4月に史上最高を記録した。
それと同時期の5ヶ月間で、GAFAやテスラ、Shopifyなどの主要テック企業9社の時価総額は1兆9000億ドル増加した。私たちが目の当たりにしているのは、少数のアメリカ企業による支配の始まりだ。その中でも特に突出しているのがGAFA四騎士である。
彼らのビジネスの中心にはフライホイール(はずみ車)がある。フライホイールとは、ビジネスにおいては顧客を集めるための目玉商品である。フライホイールが回転すればするほど、インプットやコスト以上に収益が増大する。
GAFAの強さは「テクノロジーとの相乗効果」だ。アマゾンはただのオンライン書店ではなく、アマゾンプライムと結びついた配送サービスやプライム・ビデオによって圧倒的な優位性を手にした。アップルウオッチはただの時計ではなく、アイフォンと結びついたウェアラブル端末として売ることで、時計業界のトップに君臨している。
テック企業の次なる一手はメディアへの進出だ。メディアはコア・ビジネスではなく、フライホイールの一部、つまり客寄せパンダにすぎないが、メイン事業の規模の大きさを利用して顧客をますます独占しにかかる。
●最強の騎士アマゾン
アマゾンプライム、AWS、マーケットプレイスという史上最大のフライホイールを3つも持つアマゾン。2018年2月に翌日配送のデリバリー・サービスを開始すると、フェデックスの時価総額は250億ドル(39%)減少した。運輸業界に乗り込みライバルを打ちのめしたアマゾンは、次に「ヘルスケア」に殴り込むだろう。第一のターゲットは保険だ。患者と専門医を繋げるプラットフォームを構築し包括的に運営していくことは、顧客情報を大量に抱えるアマゾンにとって容易いことだ。
●青の騎士アップル
アップルはGAFAの中で唯一のものづくり企業だ。それゆえコロナによってGAFAの中で一番被害を受けると考えられていたが、アップルの回復力には目を見張るものがあった。
その要因はアップルの商売がまとめ売りを基本としている点にある。
一般的に、毎回毎回消費者に意思決定を求める企業より、年一に1度、あるいは退会するときだけ意思決定を行わせる企業のほうが回復力が高い。消費者の意志決定の機会を減らすことで解約リスクを減らすことができるからだ。アップルはセット商品で消費者を魅了し、スタートの時点から消費者に対してすばらしい価値提案を行い、継続的な利益を生んだ。たとえばiCloud、アップルミュージック、アップルTVプラス、アップル・アーケードなどだ。2019年第4四半期のアップルのサービス部門の収益は前年比25%増、売上比率は23%増に達した。その結果、アップルはソフトウェア企業へと変身を遂げたのだ。
3 ディスラプション(大変革)
ある業界にディスラプションが迫っているかどうかは、いくつかの指標を見るとわかる。
①付加価値に比して異常なほど価格が伸びている
大学教育、医療業界など、昔からサービスの質が変わっていない(大学においては授業風景、医療業界においては平均余命や乳児死亡率)のにコストが爆発的に増加している業界は崩壊が迫っている
②ブランドへの依存度が高い
③消費者の不満が蓄積されている
④偽のイノベーションが出現している
製品の実質的な価値を高めることがないような特性をあれこれと追加すること
資本があり余り天才が不足しているとき、カリスマ「的」創業者が生まれやすくなる。彼らの発する夢見がちなビジョンにベンチャーキャピタルが資産をつぎ込むことで、本来の価値に不釣り合いなほどの巨額の金が動く。
では、最強のディスラプターはどういう企業なのか?
それは次の8つの特性を持った企業だ。
・人間の本能に訴えかける
・キャリアの箔付けになる
・成長とマージンのバランス
・ランドル(定期的な売上をもたらしてくれる商品やサービスの集まり)
・垂直統合
・ネットワーク製品
・ビジョンに満ちたストーリー・テリング
・好感度
●勃興するディスラプターズ
・エアビーアンドビー
・ブルックリネン
・カーニバル
・レモネード
・ネットフリックス
・ワン・メディカル
・ペロトン
・ロビンフッド
・パブリック
・ショッピファイ
・スポティファイ
・テスラ
・ツイッター
・ウーバー
・ワービーパーカー
・ティックトック
4 大学業界という格好の餌
真っ先にディスラプターの餌食となるのは大学だ。過去40年間で大学の授業料は1400%上昇したものの、それの見返りに提供しているものは、旧態依然とした授業である。
大学は、中産階級の希望と夢、子どもを大学に行かせてよりよい生活を送らせたいという本能的な願いを食い物にしてきた。大学は公的存在から、ぜいたく品ブランドへと変容してしまった。その費用を負担させるために、中産階級の両親に対して保険や住宅を担保に借金するよう促している。
オンライン教育と受講者の減少で、何百という大学が危機に陥るだろう。対面授業の経験と、それがもたらす授業料がなくなれば、大学の10〜30%が消滅する可能性がある。
ここにGAFA+Xが参入すれば、自社のブランドと技術の専門知識を活用して、現在の大学よりも割安で教育プログラムを提供することができる。さらに、トレーニングから資格認定、テスト、成績評価まで行うことで、その卒業生の獲得競争が始まることだろう。
5 GAFA+Xの暴走に対抗する
資本主義と社会主義の最悪な部分が組み合わされると、有害なカクテルができ上がる。
過去40年間、アメリカではそれを行ってきた。社会の階段を上る場合は資本主義である。アメリカで価値を生み出すことができれば、歴史上、匹敵するもののないほど特権を与えられる。逆に、価値を生み出せなかったり、恵まれない家庭に生まれたり、幸運に恵まれなかったりすれば、とても人間らしい生活を送ることができない。過ちに対して高い代償を払わされる可能性も高い。これは少数の強者だけが生き残る経済システムだ。
ただ富裕層へと上り詰めると(富裕層に生まれるほうが可能性は高そうだが)、状況は変わる。個人の責任と自由についての美辞麗句とは裏腹に、彼らは社会主義へと衣替えをする。彼らの社会主義の楽園では、失敗はないものとされる。企業を倒産させる(資本主義の本質からすると当たり前のことだが)のではなく、救済措置が講じられる。株主階級を保護し、幹部階級を保護する。企業を生きながらえさせ、オーナーや経営陣が窮地に陥らないようにする。救済措置の原資は国の借金で賄われ、中産階級の納税者がそれを負担する。最終的にはわれわれの子どもに払ってもらうことになる。この富裕層優遇が議員と富豪との癒着の原因となり、縁故主義が発生する。
アメリカにはどうしようもない格差が生まれてしまった。これは税法、教育制度、アメリカの悲惨な社会福祉に根ざしている。
だからこそ強力な政府が必要なのだ。ファスト思考と利己主義という人間の本性に対抗し、スロー思考とコミュニティによって均衡を図る。
この半世紀を通じて、政府を誹謗中傷し、公共の福祉への貢献を否定するのが流行りになってしまった。国民から信頼を失えば、カネが流れなくなる。国民が政府機関を見放し始めれば、それが本当に実現してしまう。
将来を展望すると、2つの最優先事項がある。1つは私的権力、特に巨大テック企業が持つ権力の抑制であり、もう1つは個人の権利の拡大だ。
巨大テック企業の権力の所有者を政府から追い出し、富裕層から政治運動に流れ込む資金を大幅に減らす。
議員は自らの資産を公開し、身辺を綺麗にする。独占禁止法の適用や規制による制限を強化すべきである。
たしかにアメリカの価値観の土台には自由がある。しかし、それは特定の権利を保証しているわけではなく、大義から切り離されたものでもない。われわれは団結しなければならない。人間としての礼節を鼓舞し、恵まれない人々への共感を高め、未来の世代のために互いに犠牲をいとわないことを実証することが、今アメリカに求められている。続きを読む投稿日:2022.02.07
GAFAの実態や富裕層と関連付けてアメリカ社会全体の功罪や光と闇に言及していたが、各章の繋がりはあまりなく記事を寄せ集めた印象。
GAFAをはじめ富の集中や貧富の差が拡大することは良く無いが恩恵に預…かっている面もある。
政府の為すべきところまで提案できていれば良かったが誰に向けての本かもう少し明確だと読みやすかったと思う。続きを読む投稿日:2023.04.16
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