生と死をめぐる断想
岸本葉子(著)
/中公文庫
作品情報
序章 死をそばに感じて生きる
團十郎の辞世
死生観表出の時代
自然災害のインパクト
どこから来てどこへ行くのか
二つの立場
テクノロジーの進化の果てに
1章 「知」の人の苦しみ
伝統的な宗教の後に
岸本英夫の実践
合理性の納得
頼藤和寛の世界観
はじまりのニヒリズム
「にもかかわらず」の哲学
自由意志の優位と揺らぎ
多田富雄の受苦
人格を破壊から守る
サイコオンコロジー
医療の現場で
ホスピスとデス・エデュケーション
遺族外来、がん哲学外来
禅の否定するもの
「わたし」を「なくす」
河合隼雄の遍歴
ユング心理学と仏教
切断せず包含
2章 スピリチュアリティの潮流
崩れつつある二元論
オルタナティブな知
理解できないものへの態度
時代という背景
第三の項へ
ポストモダンの現象
ベクトルの交わるところ
島薗進の視点
「精神世界」の隆盛
個人の聖化と脱産業化
鈴木大拙の霊性
宗教的でなくスピリチュアル
玄侑宗久との往復書簡
「而今」の体験
「いのち」との関係
潮の満つるとき
海のメタファー
親鸞の絶対他力
生死の中で生死を超える
日本的発現
ゆりかごとしての風土
3章 時間を考える
代々にわたり耕す
柳田国男の「先祖」
個体から集合体へ
つなぐラフカディオ・ハーン
田の神と山の神
時代からの問い
四つの類型
折口信夫の「海の他界」
野という中間地帯
身近な行き来
かのたそがれの国
うつし世、かくり世
帰ってゆく場所
先祖の時間
線をなす時間
層をなす時間
輪をなす時間
自然との親和性
季語のはたらき、リズム
津波を詠んだ句
山川草木悉有仏性
「衆生」の範囲
貞観地震と津波
暴れる国土
山川草木悉有神性
瞬間瞬間にふれる
不動の中心
技法としての行
色即是空
井筒俊彦による視覚化
縁起という実相
根源のエネルギー
式年遷宮
「木の文明」
生の造形
宣長の「悲し」と「安心」
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商品情報
- シリーズ
- 生と死をめぐる断想
- 著者
- 岸本葉子
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公文庫
- 書籍発売日
- 2020.10.25
- Reader Store発売日
- 2023.10.31
- ファイルサイズ
- 2.5MB
- ページ数
- 232ページ
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この作品のレビュー
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岸本葉子(1961年~)氏は、東大教養学部卒、生命保険会社在職中に執筆・出版した『クリスタルはきらいよ』がドラマ化され注目を集め、退職後、北京外国語学院留学を経て、エッセイストとなる。2001年に虫垂…がんと診断されたが、その後も積極的な文筆活動を行い、ガン克服キャンペーンにも参加している。淑徳大学客員教授。
本書は、著者ががんに罹患した後、様々な本を読み、考えた断想を綴ったものである。著者は序章で、「これから綴るのは、日本人の死生観というような、ひとつのまとまった論ではない。それを提示することは私の力をはるかに超える。読書ノートに近いものだ。生と死について考えながらページをめくった本の中で、心にふれる記述を書きとめた。」と語っている。
引用されている人物は、岸本英夫、頼藤和寛、エリザベス・キューブラー=ロス、山崎章郎、鈴木大拙、玄侑宗久、河合隼雄、広井良典、大峯顯、親鸞、道元、柳田国男、平田篤胤、折口信夫、島薗進など、その分野は医療から、心理学、精神世界(スピリチュアル)、仏教、禅、宗教学、民俗学を多岐に及ぶ。
その中で、私が最も印象に残ったのは、以下の2点である。
一つは、直腸がんで亡くなった精神科医・頼藤和寛の示した“生きること”の意味についてである。頼藤氏は、私たちは「世界はこうである、“しかるがゆえに”こう生きる」という考え方をしがちだが、そうではなくて、「世界はこうである、“にもかかわらず”こう生きる」と考えることが大事だという。どう生きるかに、世界がこうあるからという理由は要さず、生き方の問題と世界のありかたとを切り離す必要があり、無駄と知りつつ何かに熱心に取り組むことができるかどうかが、我々の人生の質を決めることになる、いや、むしろ「何をしても無駄」と覚悟していることが、「それでも、尚これをする」という決断に重みを加える前提ですらあるというのだ。
もう一つは、社会学者・広井良典が『死生観を問いなおす』で述べている「輪をなす時間」という考え方についてである。広井氏は、時間を、私の時間、先祖の時間、人類の時間、生命の時間、地球の時間、宇宙の時間等に分け、それらを上から順に層にして、その層を束のまま、上に突き出すように湾曲させ、最終的に円形にすることによって、私の時間が最も外側・表層で流れが速く、宇宙の時間が最も内側・深層で流れが遅くなるような「輪をなす時間」という考え方を示している。(表紙にある絵のイメージ。また、私は同書を15年ほど前に読んでいるのだが、改めて得心した次第) そして著者は、このモデルに基づいて、最も外側の輪に乗っている我々が死んだときには、そこから降りて内側の先祖の輪に加わる、そして、ある日再び別の人間として生を受け、また外側の輪に乗る、これの繰り返しなのだとする。また、我々が現世にありながら、霊的なものに触れていると感じられるときは、一つ深層の時間と接しているときなのではないかという。
著者は自らを「合理主義者であり、合理的な説明のつかないものに懐疑的」というが、私も、著者と同じような考え方をするタイプで、そういう意味で、著者の辿った思考のベクトル、プロセスには自然と共感できた。著者の数年後から人生を生きる者として(幸いなことに、これまで「生命飢餓状態」におかれた経験はないが)、時を置いて再読したいと思う。
また、巻末にある、本書で引用された参考文献50冊も参考にしたい。
(2020年11月了)続きを読む投稿日:2020.11.16
がんから生還したエッセイストが、治療や瞑想の経験や仏教・神道・心理学を渉猟、生老病死や時間と存在について辿り着いた境地を語る。
投稿日:2021.05.13
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