死にたかった発達障がい児の僕が自己変革できた理由 ー麹町中学校で工藤勇一先生から学んだこと
西川幹之佑(著)
/時事通信社
作品情報
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これは現代の「ヘレン・ケラー物語」だ!
4代続けて東大卒という超名門の家柄に生まれたのに、ADHDにASD傾向、学習障がいという3重苦で、幼稚園すら二時間で中退させられた著者。小学2年生までは特別支援学級に通うも「赤ちゃん扱い」になじめず、強く希望して通常学級に転籍。しかし、周囲とトラブルを起こし、テストで点がとれないとパニックになっては教室を飛び出す毎日を送り、やがて「死にたい」という衝動にとらわれるようになる。
そんな著者が変わったきっかっけは、千代田区立麴町中学校に入学し、大胆な学校改革を実践していた校長の工藤勇一氏(ベストセラー『学校の「当たり前」をやめた。』の著者)に出会ったことだった。
「3重苦」だったヘレン・ケラーは、サリバン先生に出会って「Water」という言葉を手のひらに書いて教わるまで、暗闇の世界で生きていた。
著者は、その気持ちが分かる気がすると言う。混沌とし、恐怖そのものだったこの世界。それが、麹町中学校でもがき苦しみながら世界の輪郭をつかみ、卒業後も工藤氏から学んだことをもとに試行錯誤を続け、少しずつ自分にあう生き方をつかんできたのだと話す。
ヘレン・ケラーを目覚めさせた「Water」という言葉は、著者にとっては「自律」という言葉だった。
工藤氏の教育目標は「自律した生徒を社会に送り出す」ことだ。「自律」「尊重」「創造」を掲げ、社会を生きる当事者意識をもつ生徒を育てるという工藤氏のもとで様々な学びを経験するうちに、著者は親や名門家系に対する劣等感、周囲に対する憎しみから解放され、「自律」して生きる大人になるために、「自己変革」に挑むようになる。
中学卒業までに英検準2級とニュース検定2級などを取得。高校は英国に留学し、現在は時折トラブルを抱えながらも落ち着いて対処しつつ、人並の自己肯定感とともに、前向きに生きている。
人生は誰か他人から与えられたり押し付けられたりするものではなく、自分の選択と行動でつくりあげるもの。どんなにダメな自分でも、自分の取扱説明書を自分の力でつくりあげることが可能。どうしようもないほどダメな「不良品」を自認する著者が、地を這うようにしてたどり着いた希望の境地とは?
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商品情報
- 著者
- 西川幹之佑
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 時事通信社
- 書籍発売日
- 2022.02.22
- Reader Store発売日
- 2022.07.15
- ファイルサイズ
- 83.1MB
- ページ数
- 266ページ
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この作品のレビュー
平均 4.6 (10件のレビュー)
-
めちゃくちゃよかった。
発達障害の人が考えていること
どうやって向き合ってきたか
ぎゅっとつまった一冊。
共感しながら読むところも多かった。
①工藤先生の教育の最上位目標である、「自立した生徒」とは…、「はじめに」でも述べたとおり、一人ひとりが当事者意識をもち、対立やうまくいかないことにぶつかっても、どうしたらその問題を解決できるか考え、他者と協力しつつ解決できる生徒のことです。p71
☆明解。ここがぶれないから、生徒はついていくんだなと思う。
②夢は叶うとは限らないけれど、夢に向かって走った人にしかチャンスはやってこないんだよ。p91
☆工藤先生の言葉。力があるなあ。
大きなチャンスをつかむためには、日々の小さな選択を大切にすること。
チャンスの話
タイムマシン、クエスチョン(20歳になったときの自分は、どんなことをしていると思う?)
手段と目的を間違えるな
多数決が正しいとは限らない
どうすればよいと思う?
こういう、小さなお話をいつでもどこでもできるようにしておきたいものだ。
③「感情をコントロールする」ということは、「自分がどんな場所でおこるのか、自分の気持ちを正しく知ることであり、その気持ちをよりよい形で自分以外の人に表現することができることp106
☆アンガーマネジメントの具体的な方法も書いてあった。これについてはもう少しよく学んで、伝えられるレベルにしたい。
④工藤先生のように真正面から向き合ってくれる人には、僕のような発達障碍児でももっともっと伝わるように努力しようと頑張れます。p112
☆ぐっとくる言葉。いつもやっていることに目が向きがちだが、原因は別のことにあることも多い。この言葉から学ぶことは非常に多い。
⑤誰かがよい行いをしたときに、あの子はいい子ぶっているとか、内申点を上げたいだけだ、とか、こころのもちようを判断しがちだけれど、大切なのは行動なんだ。行動の積み重ねが大切だから、周りの人の意見は気にせず、自分が信じるように行動すればいいんだよ。p124
☆工藤先生は、「人によっては、よいといわれる行動をしないという選択もありだよね。自分以外のだれかがしない選択を認めることも大切なんじゃないかな。」ともおっしゃったそうだ。行動が大切。
⑥嫌いな人がいるのは悪いことじゃない。差別する心は簡単に消せるものではないけれど、差別しない行動だけは意識すればだれでもできるようになる。p126
☆ここでも行動が出てくる。心でなくて、行動。この、わかりやすさがいい。
⑦筆記用具にとことんこだわる。p168
☆わかるなあ。同じ2Bって言ったって、全く違うものね。
きれいに消える、書き方鉛筆2Bトンボ
消しゴム オムニプラス
シャーペン フレフレオプト
芯 MONO-WX 濃い目のHB
アインシュタイン ぺんてる
⑧ビジョントレーニング
☆取り入れたい。
⑨人の心の中はかんたんにわからない。でもよい行動はすぐに分かる。p186
⑩あいさつの秘訣p187
1先手必勝
2相手に聞こえる声で
3返されなくても腹をたてない
☆3,とか、絶対教えたい!!
⑪学校ではよく、「おこることは悪いこと」と教わりますが、正しくは「キレることが悪い」であって、
「怒ることは悪いことではない」と子供たちに伝えるべきだと思います。p214
☆正しく怒るために、怒りレベルを自覚させることは大切。キレる前に。そして、そのレベルに来た時にどう行動するか決めておく。「指針」を意識したら、少し落ち着いて過ごせるようだ。続きを読む投稿日:2022.05.05
著者は、父方が4代続けて東大を卒業している名家に生まれたが、ADHD、ASD傾向、学習障がいを併発し、中学校入学まで「超問題児」で毎日死ぬことばかり考える日々を送っていた、執筆時点では大学生の西川幹之…佑氏。そんな著者が、千代田区立麹町中学校に入学し、独自の教育に取り組んでいた工藤勇一校長と出会って「自己変革」できた経緯などについて、同じような悩みを持つ人の役に立てればという思いで、振り返る。
工藤校長の目的志向型で生徒に真正面から向き合う教育についても、また、それを受け止めて大きく成長した著者についても、率直にすごいと思った。発達障がいにはグラデーションがあり人により状況はそれぞれなので、安易に一般化はできないとは思うが、発達障がい児への教育の在り方(あるいは発達障がい児本人の育ち方)の1つのモデルケースになるのではないかと思う。
発達障がい児が学校生活等においてどのように感じているのかということについても理解が深まった。わかっているのに言葉や行動でなかなか表現できずに真意が伝わらないもどかしさや、「赤ちゃん言葉」で接することなどによりいかにメンツやプライドが傷ついているのかといったことに思いが至った。発達障がい児の自尊心の尊重ということが重要だと認識した。
また、「自律」や「最上位目標」という考え方など、本書には、発達障がい者に限らず、よりよい人生を送るためのヒントが散りばめられていると感じた。
本書は母親や編集者と協働しながら執筆したとのことだが、著者の伝えたいことがよく伝わってくる良書である。続きを読む投稿日:2024.04.18
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