ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争
高木徹(著)
/講談社文庫
作品情報
「情報を制する国が勝つ」とはどういうことか――。世界中に衝撃を与え、セルビア非難に向かわせた「民族浄化」報道は、実はアメリカの凄腕PRマンの情報操作によるものだった。国際世論をつくり、誘導する情報戦の実態を圧倒的迫力で描き、講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をW受賞した傑作! (講談社文庫)
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商品情報
- 著者
- 高木徹
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2005.06.15
- Reader Store発売日
- 2021.10.05
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 416ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (149件のレビュー)
-
1992年3月のボスニア・ヘルツェゴビナの独立宣言を機に勃発した、ムスリム人、セルビア人、クロアチア人の3民族によるボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(本書では、「ボスニア紛争」と呼んでいるので、以下、「ボ…スニア紛争」と呼ぶ)における「PR戦争」を取材し、「NHKスペシャル 民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」というドキュメンタリー番組をプロデューサーとして制作した筆者が、その番組を書籍化したのが本書である。番組は2000年10月29日に放送され、書籍は2002年に発行されている。
ボスニア紛争では、「モスレム人=被害者」「セルビア人=加害者」という図式が出来上がり、ユーゴスラビア連邦への経済制裁や国連追放、NATO軍によるセルビア空爆にまで結びついた。しかし、実際にはそのような単純な話ではなかったということを、筆者は本書に以下のように記している。
【引用】
私は、バルカンで起きた悲劇には、セルビア人だけではなく、モスレム人にも、もう一つの紛争当事者であるクロアチア人にも責任があると考えている。それでも国際世論が一方的になったのは、紛争の初期の時点で、それまで国際的な関心を集めていなかったボスニア紛争に、「黒と白」のイメージが定着してからだ。このイメージは、その後のコソボ紛争でも、セルビア人=悪、の先入観のもととなり、NATOの空爆にまでつながった。
【引用終わり】
紛争の初期段階で、ボスニア・ヘルツェゴビナは、自国の独立の正当性と、セルビアによる不当な弾圧を訴えるために、外相を世界中に派遣する。外相は、国連・EC・アメリカ・アラブ世界等、あらゆる場所で、それを訴えるが、なかなか関心を呼ぶことは出来ない。特にアメリカでは、バルカンというヨーロッパでも中心とは言えない地域での内部紛争という理解をされ、期待していたサポートを得ることが出来ない。
そのような状況の中、ボスニア・ヘルツェゴビナは、アメリカの大手PR企業と契約を結ぶ。そして、PR企業は、セルビア人=悪、ボスニアヘルツェゴビナ=被害者という世論をつくるために、様々な活動を行う。本書は、その実際の活動を描いていく。
結果的に、ボスニア・ヘルツェゴビナは、意図通りの成果を得ることに成功する。その成果を得るために、PR企業の活動が果たした役割の大きさは正確には測定できないが、本書を読んでいると、仮にボスニア・ヘルツェゴビナがPR企業と契約せずに、単独で活動を続けていたとしても、絶対にこのような成果を得ることは出来なかったであろうことは、想像できる。
感想はいくつかある。
まずは、国際政治、特に地域の深刻な紛争の当事者が、このような形で、営利企業であるPR企業を活用しているということに対しての驚き。紛争は軍事力だけの闘いではない。世の中を味方につけられるかどうかによって、結果は大きく変わるということだ。今回のロシアのウクライナ侵攻についても、ロシア=悪という構造が出来ているが、ここにも、何らかのプロの仕事の結果が影響しているのかもしれない。
次に、本書に登場するPR企業、および、このプロジェクトを担当するチームのプロとしての仕事の鮮やかさに感心する。大胆な戦略と細心の注意を払った実行。それらの作戦が実際に効果をあげていく様子は、読んでいて一種痛快であった。
また、本書中に筆者も書いているが、こういった国際政治を舞台にした情報戦で、日本はちゃんとやれているのかという心配。政府、外務省にこのようなプロはいるのか、あるいは、外部のプロをきちんと活用出来ているのか。いや、出来ている感じは受けない。
約30年前の出来事を扱った、約20年前に発行された本であるが、そのような古さは全く感じず、楽しく読めた。続きを読む投稿日:2023.09.09
このレビューはネタバレを含みます
ユーゴスラビア紛争の陰で活躍した広告代理店の話、というか、この紛争では各陣営に西側、というかアメリカ人が入り込んでいたかということがよくわかる。
レビューの続きを読む
最後のエピソードは、ああなるほどね、と、頷かざるを得な…い。続きを読む投稿日:2024.03.17
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