【感想】ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

高木徹 / 講談社文庫
(149件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
69
48
17
0
0

ブクログレビュー

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  • のとくり

    のとくり

    このレビューはネタバレを含みます

    ユーゴスラビア紛争の陰で活躍した広告代理店の話、というか、この紛争では各陣営に西側、というかアメリカ人が入り込んでいたかということがよくわかる。
    最後のエピソードは、ああなるほどね、と、頷かざるを得ない。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.03.17

  • 太郎

    太郎

    ボスニア紛争について知りたくて購入。
    戦争広告代理店という題名に気になりました。
    読んだ後の感想は戦争広告をする広告代理店というよりは
    小国同士によるPR戦争の内幕。
    如何にしてボスニアヘルツェゴビナはPR戦争に勝利し、セルビア共和国、ユーゴスラビア連邦は敗退したのか?続きを読む

    投稿日:2023.09.22

  • sagami246

    sagami246

    1992年3月のボスニア・ヘルツェゴビナの独立宣言を機に勃発した、ムスリム人、セルビア人、クロアチア人の3民族によるボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(本書では、「ボスニア紛争」と呼んでいるので、以下、「ボスニア紛争」と呼ぶ)における「PR戦争」を取材し、「NHKスペシャル 民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」というドキュメンタリー番組をプロデューサーとして制作した筆者が、その番組を書籍化したのが本書である。番組は2000年10月29日に放送され、書籍は2002年に発行されている。
    ボスニア紛争では、「モスレム人=被害者」「セルビア人=加害者」という図式が出来上がり、ユーゴスラビア連邦への経済制裁や国連追放、NATO軍によるセルビア空爆にまで結びついた。しかし、実際にはそのような単純な話ではなかったということを、筆者は本書に以下のように記している。
    【引用】
    私は、バルカンで起きた悲劇には、セルビア人だけではなく、モスレム人にも、もう一つの紛争当事者であるクロアチア人にも責任があると考えている。それでも国際世論が一方的になったのは、紛争の初期の時点で、それまで国際的な関心を集めていなかったボスニア紛争に、「黒と白」のイメージが定着してからだ。このイメージは、その後のコソボ紛争でも、セルビア人=悪、の先入観のもととなり、NATOの空爆にまでつながった。
    【引用終わり】

    紛争の初期段階で、ボスニア・ヘルツェゴビナは、自国の独立の正当性と、セルビアによる不当な弾圧を訴えるために、外相を世界中に派遣する。外相は、国連・EC・アメリカ・アラブ世界等、あらゆる場所で、それを訴えるが、なかなか関心を呼ぶことは出来ない。特にアメリカでは、バルカンというヨーロッパでも中心とは言えない地域での内部紛争という理解をされ、期待していたサポートを得ることが出来ない。
    そのような状況の中、ボスニア・ヘルツェゴビナは、アメリカの大手PR企業と契約を結ぶ。そして、PR企業は、セルビア人=悪、ボスニアヘルツェゴビナ=被害者という世論をつくるために、様々な活動を行う。本書は、その実際の活動を描いていく。
    結果的に、ボスニア・ヘルツェゴビナは、意図通りの成果を得ることに成功する。その成果を得るために、PR企業の活動が果たした役割の大きさは正確には測定できないが、本書を読んでいると、仮にボスニア・ヘルツェゴビナがPR企業と契約せずに、単独で活動を続けていたとしても、絶対にこのような成果を得ることは出来なかったであろうことは、想像できる。

    感想はいくつかある。
    まずは、国際政治、特に地域の深刻な紛争の当事者が、このような形で、営利企業であるPR企業を活用しているということに対しての驚き。紛争は軍事力だけの闘いではない。世の中を味方につけられるかどうかによって、結果は大きく変わるということだ。今回のロシアのウクライナ侵攻についても、ロシア=悪という構造が出来ているが、ここにも、何らかのプロの仕事の結果が影響しているのかもしれない。
    次に、本書に登場するPR企業、および、このプロジェクトを担当するチームのプロとしての仕事の鮮やかさに感心する。大胆な戦略と細心の注意を払った実行。それらの作戦が実際に効果をあげていく様子は、読んでいて一種痛快であった。
    また、本書中に筆者も書いているが、こういった国際政治を舞台にした情報戦で、日本はちゃんとやれているのかという心配。政府、外務省にこのようなプロはいるのか、あるいは、外部のプロをきちんと活用出来ているのか。いや、出来ている感じは受けない。

    約30年前の出来事を扱った、約20年前に発行された本であるが、そのような古さは全く感じず、楽しく読めた。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.09

  • のぶ

    のぶ

    報道とPRの力が、国際社会でどのような影響を及ぼしてきたか、セルビアを舞台に描いた作品。地道なサシ取材を重ねてきたのだろうと想像できる。報道現場で働く人間として、「こういう取材をしてみたい」と誰しもが思える作品だと思う。続きを読む

    投稿日:2023.07.17

  • 海老ピラフworld

    海老ピラフworld

    ボスニア紛争の裏でボスニア・ヘルツェゴビナのPR企業としてルーターフィン社がどのように立ちまわったのか。 どのようにして国際世論を作りセルビア人を悪者に仕立て上げたのか。 普段私たちが触れているニュースも背後で発信者の思惑があることを忘れてはならないと思った。続きを読む

    投稿日:2023.02.28

  • daisuket

    daisuket

    ウクライナ情勢のニュース報道への向き合い方を考えたくて前から気になってた本を読了。ボスニア紛争の「善悪構図」の背景にあったPR戦の経緯が時系列をなぞりながら丁寧に描写されまるで映画のよう。PR会社が悪いということではなく各勢力がそれぞれの文脈で市民へのアピールを狙う中ではある意味必然的にこうなってしまうということがよくわかる。著者が指摘する通り日本は今でもPR意識は低いですが。情報の受け手としての私たち一人ひとりとしては感情による共感ではなく、理性的な思い遣りによる判断を積み重ねていくべきなのかと思うが、果たしてどう実現できるのか。続きを読む

    投稿日:2022.12.04

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