【感想】ChatGPTと語る未来 AIで人間の可能性を最大限に引き出す

リード・ホフマン, GPT-4, 伊藤 穰一, 井上 大剛, 長尾 莉紗, 酒井 章文 / 日経BP
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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  • 大規模言語モデルの活用法

    著者はスタンフォード大学を卒業後、PayPalの開設に携わり、LinkedInを創業。
    その後はベンチャー投資家として、ChatGPTを開発するOpenAIの初期からコミットしている、いわば中の人。
    むっちゃ頭が切れ、未来を見通す力を持つ彼に言わせれば、いまAIを無視するのは、「1990年代後半にブログを、2004年前後にソーシャルメディアを、2007年にスマートフォンを無視するのと同じ」であると断言する。

    あらかじめ断っておくと、本書はChatGPTの仕組みを知りたいと思って手にとる本ではない。
    題名の通り、それをいかに活かすか、社会や世界をどのように変容させるかに焦点を当てている。
    大規模言語モデルや言語処理などロジックが知りたい人は、スティーヴン・ウルフラムの『ChatGPTの頭の中』が参考になる。

    本書はホフマンとともにGPT-4が共著として名を連ねている通り、ChatGPTとの対話の書である。
    一丁前に本書の末尾にはGPT-4君の謝辞まである。
    対話と書いているが、内実は一方的な質問攻めで、「投資家で、作家で、慈善活動家でもある著者が、より速く、効率的かつ効果的に仕事をするために、LLMをどう活用すべきだ?」から始まり、ChatGPTの長所や欠点まで問うて自分で語らせている。
    必然的に回答も「できるでしょう」や「なるかもしれません」のオンパレードで、ここだけ読んでると”なんだかなぁ"という気にさせる。

    ただ、草創期から利用しているか、質問が容赦ない。
    500字でまとめろとか、1000字以内でなど文字数を指定するのは、ほっとくと延々だらだらと長文が出力されてくるからだろうが、「でたらめはやめろよ、簡単に裏が取れるんだからな、ソースの裏付けがあるのだけ回答しろよ」など、誤回答への予防線が凄まじい。

    なんで誤回答しちゃうかのカラクリもちゃんと理解していて、有名な「ゲティスバーグ演説の5文目を教えて」との質問に、第9文を拾ってきてしまうのも、LLMの予測の限界も指摘している。

    しかしどれほど回答が怪しかろうと著者は怯まない。
    「間に合わせの知識」がもつ力を信じているからだ。
    例えばWikipediaも、登場して間もない頃は、多くの間違いが含まれていたが、多くの人がクラウドソーシングによる「間に合わせの知識」を「日常的に役に立つもの」だと感じてくれたおかげで、利用率が高まり、多くのフィードバックを集めることが出来た。
    それによって改善を積み重ね、より使いやすいものとなっていたのだ。

    それとChatGPTとの対話は、従来のウェブ検索とは根本的に異なる。
    単にリンクの羅列を見せられるより、関連性の高い情報をピンポイントで拾い上げ、それが新たな疑問につながり、さらに質問を重ねるという、ウェブの黎明期によく聞かれた「ネットサーフィン」を彷彿とさせるものがある。
    従来の検索エンジンが流れをぶつ切りにする一方で、ChatGPTとのやり取りは、1つの質問の答えに対してさらに10の質問をしたくなるような、ある種の知的興奮の高まりがある。
    ChatGPTの成功の原動力には、この「1つの問いかけが10の質問を生む」というダイナミズムがあるというのは、このことだ。

    じゃあ具体的に何に活用できるのか?
    もしあなたが企業犯罪の取り締まる立場の人間なら、人間の目では微妙すぎるような些細な点も、厖大な財務データを総ざらいして、記録の矛盾を忽ちのうちに指摘して摘発できるだろう。
    もしあなたが教師であれば、学生の評価に利用するだけでなく、フィードバックのツールとして利用できる。
    学生の長所や改善点を特定し、より効果的な学習に役立つ方法を提案してもらうことだってできるだろう。
    あるいは、もしあなたが芸術家なら、アイデア出しなどの創作のアシスタントとして、あるいは触媒として利用することも出来るだろう。
    たんにAIを仕事の量を減らすための道具と見なすのは勿体ないことで、仕事の質を高めるための装置にもなりうるはずなのだ。

    利用する上での問題点としては、文化活動へ与える悪影響が厄介に感じた。
    人間がこれまでに制作してきたコンテンツを複製や変更が簡単なデータやアルゴリズムにしてしまうことで、その文化的価値や意義を低下させ、人間はより安価で広範な作品を生むAIとの消耗戦を強いられる。
    現にいま、アートの世界では、アーティストが自分の作品をネットに上げるのを躊躇している。
    わざわざ餌を与えて、モンスターの学習に取り込まれることを懸念しているためだ。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.14

ブクログレビュー

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  • こばやし

    こばやし

    Open AIの元取締役である著者だけにChatGPTへの問いかけが上手。
    あーこういう風に聞けば良いのかという参考になる。

    一方で、ストーリーとしてはやや冗長であり、途中で猛烈に飽きてしまった。
    発散的に偶発的に質問しているものを特に編集もなく本にしてしまったような内容。
    リードホフマン氏の思考を追うように読むと良い。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.20

  • akiraiino

    akiraiino

    4.5 視点は良く,示唆に富むが,個人的な嗜好に基づく部分もあり,退屈な箇所もある。終章は素晴らしいの一言。

    投稿日:2023.11.05

  • a0019447

    a0019447

    リードホフマン、chatgptの本

    chat gptを実際に使って対話形式でしるしているのが面白い。

    投稿日:2023.10.03

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    リード・ホフマンがChatGPTについて、ChatGPTを駆使して書いたもの。
    なかなか面白い取り組み。著者も楽しんで書いているのが伝わる。ChatGPTや生成形AIについては、実際に手を動かしてみることが大事だということがわかる。続きを読む

    投稿日:2023.08.12

  • T.Maeda

    T.Maeda

    OpenAIの初期の出資者でもありAIにも深い理解のある著者の本
    ChatGPTとさまざまな方向から未来を語る内容。
    そもそも、ChatGPTがこれほどの会話ができることに大きな驚きを誰もが持つだろう。特に英語での会話であるのでここまで会話を引き出せるのか、プロンプトの作り方のプロがやるとこれほどまでにできるのか?(日本語でしかできないがいくつか会話を行ってみた。一月ほどまえではきっとありえなかったほどの深い会話が日本語でもできるようになってきている)
    この本をヒントにどのようにAIを助手もしくはパートナーとして利用できるかを考えてゆきたい。
    「はじめに」と「第10章」「第11章」が特に興味深く読めた。(内容が高度であることも要因かもしれないが)訳がもう少しわかりやすいこなれた日本語になっていればと何度もかんじた...
    もうひとつ、印刷文字が薄い黒にしてある。読みにくい!このようなデザイン配慮は害しかない。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.02

  • dragonlook

    dragonlook

    ChatGPTを含め生成AIは、これまで世界をより良い方向に前進させた(と同時に色々な問題を生んだ)テクノロジーと同様に、ツールの一つであり、
    当然ながら使う人次第。より良い方向に使えれば最強のパートナーとして、その人の可能性を無限に広げることができる。続きを読む

    投稿日:2023.07.22

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