【感想】幻夏

太田愛 / 角川文庫
(351件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
150
142
42
6
0
  • 面白すぎて謎解きは二の次という感じになった

    23年前の夏休み、小学生の尚・拓・亮介の3人、楽しかった思い出、なにか大きな災いが起こるような不安と切なさ、そして近所で起きた転落事故と尚の失踪。
    臨場感というのか既視感というのか誰もが持っている大人になる前の微妙な時期の微妙な思い出。前半はミステリ要素無しでもハマってしまう。
    でもこのままの雰囲気で終わるのもちょっと・・・と思い始めた中盤あたりから司法制度の問題点が次々と明らかになり別の意味でハマった。
    人の心は硝子のように壊れたりはしない。時間をかけてゆっくりと壊れていく姿を推理しながら過去と現在の事件を繋げていく。
    司法の場にまで侵略する経済効率や冤罪など考えさせられることも多かった。司法に関わる人間の善悪の基準や罪に問われない悪の問題などの重いテーマも盛り込んである・・・あるのだが、しかし事件を追う相馬・鑓水・修司の個性的な3人のキャラが面白すぎて謎解きは二の次という感じになったのも事実。
    何となく予測しながら読んだ結末は半分当たって半分外れた感じ。
    警察官の相馬はなぜ左遷されたのか気になりながら読了。前作「犯罪者」も最新作の「天上の葦」も読まなければという気持ちになった。構成の上手さということなのだろう。
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    投稿日:2017.09.27

  • 水沢尚の幻夏は再生されるのだろうか?

    脚本家だけあってストーリーが三重にも四重にもなっていて読んでいて全く飽きなかった。前作の『犯罪者』も含めて脱帽するしかない。それにしても冤罪に端を発した悲しく、切なすぎる物語だった。警察・検察・裁判官の無謬性を信じて疑わないみずあず態度が冤罪を生み出す温床になることに腹も立つ一方で、池袋暴走のじじいやゴーンなどは一方的に叩きのめしてほしいという心情もある。水沢尚が終章でカーテン越しに見た”本当にあった夏”は、幻夏として終わって欲しくない;水沢尚の後半生に幸あれと願わざるを得ない。次作『天上の葦』は積読状態だが、楽しみとしてしばらく置いておこう。続きを読む

    投稿日:2020.04.27

  • ハラハラドキドキ秀作です。

    面白いストーリー展開で、特に後半は、ハラハラドキドキの展開で、秀作だと思います。

    投稿日:2020.04.30

  • 久しぶりの、読み始めたら止まらない!本でした。

    そして、泣ける!パズルのピースがはまっていくほどにやるせない。
    現実の世界では、刑法に携わる人の中にも、警察関係の人の中にも、もう少し心ある人がいてくれたらと、願うばかりだ。

    投稿日:2020.10.09

  • ある種の理想型

    シリーズ前作「犯罪者」ですっかり虜になってしまった。
    前作では息もつかせぬスピード感、誰が生き残り誰が死ぬのかとハラハラし通しだったが、今作品は謎解きの牽引力はそのままに、だか一味違う切なさがある。
    base~あの夏を忘れない、や、井上陽水の少年時代を聴くと沸き上がる郷愁、二度と戻れない子供時代の儚さ…
    推理小説の中に切なさを封じ込めた、私にとってある意味理想的な小説だった。
    もちろん、冤罪の構造的な問題など硬派な社会的テーマも抜きがたく主題となっている。
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    投稿日:2021.02.10

  • あの夏の日がなかったら。。。。

     ドラマや映画において、見ている我々が犯罪者の方に肩入れをしたくなるストーリーは多々ありますが、このミステリーも私にとっては、まさにそのような小説でありました。
     冤罪については、これまでも何度も問題にされています。松本サリン事件や、いまだ再審中の事件も多々あります。しかし、この小説の中で書かれているように、冤罪に導いた人達に対する行為が罰せられるケースはあまりないように思います。厚生労働省の村木厚子さんのように、関与したか否かのような場合は別として、殺人事件ような場合は、真犯人を取り逃がすという大罪を、警察も検察も犯しているわけで、もっときびしく断罪されるべきでしょう。それにしても、いつ自分自身がそのような状況に追い込まれるか判らないと思うと、おちおち街を歩けなくなりますよね。
     さて、この小説そのものはミステリーでありますから、その内容についての感想を詳しく書くと、これから読む人に申し訳ないので書けませんが、久々に長編ミステリーを読んだ私は、完全にのめり込みました。
     謎が謎を呼び、一体何がどうなっているか、先が気になって仕方ありませんでした。おそらく実際にはこんな形で冤罪が成立してしまうのだなと言う戦慄、そして、まるでスタンドバイミーのような幼き頃の夏の思い出。結局、ウラに隠れている大きな闇は世間に公表されることはなかったという結果に終わりましたが、今なら文春が暴露するところでしょう。これに頼らざるを得ないのも情けない話です。
     社会的闇を追及しつつ、夏の日の記憶をたどるストーリー展開は、とても読みごたえがありました。私はこの小説を最初に読んでしまいましたが、主要人物が出会う話がこの前にあるようで、そちらも是非手に取りたいと思っています。
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    投稿日:2021.05.02

ブクログレビュー

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  • 村井

    村井

    このレビューはネタバレを含みます

    めちゃくちゃおもろい。冤罪がテーマだった。前作を読んでなかったけど楽しめた。犯罪者になっちゃったけど尚は頭も良くてやさしいんだな。択が死んでた展開が怖すぎて一旦本閉じた。
    尚も択も香苗もみんな優しい。復習物語だけど、加害者が優しすぎて切ない。

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    投稿日:2024.04.14

  • ちー

    ちー

    このレビューはネタバレを含みます

    尚がいなくなった理由が切なすぎる。
    尚の家族みんなが冤罪事件の為に不幸になってしまう。尚はあの後、少しは救われたのか…読了後も胸が締め付けられる物語でした。

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    投稿日:2024.04.13

  • ayakage

    ayakage

    犯罪者の続編。一つの冤罪事件が家族の人生を狂わせ、それを生んだ検事、警察、裁判官は自分たちに何の落ち度も無いと言う。10人の犯罪者を逃しても1人の冤罪を無くすべきか、1人の冤罪を出したとしても10人の犯罪者を捕らえるべきか。考えさせられる本だった。続きを読む

    投稿日:2024.04.12

  • あき

    あき

    このレビューはネタバレを含みます

    夏休み前に出会い、一夏を過ごした小学生の相馬亮介と、水沢尚、拓。
    そして夏の終わりに起きた尚の突然の失踪。
    それから23年の月日が経ち、興信所の鑓水の元には母の香苗から尚の捜索が依頼される。
    また同時期に、相馬は少女失踪事件の現場で、尚が当時姿を消した場所に残っていた印と同じ印を見つける、事件の真相に近づいていく。

    停滞することなく、少しずついろんなことが明らかになっていく正に司法の信を問うミステリー。
    たどり着いた真相はやるせなく切ない。それぞれが向き合い、苦しみ、憎悪して。

    冤罪という取り返しのつかないもの。
    身近に降りかかるまで誰も自分事として捉えられないのかもしれない。
    それでも適正な捜査とは、と考えさせられる。

    後半にいくにつれ、スピード感を増し展開されるストーリーには引き込まれた。
    シリーズものとは知らずに読んだので、シリーズ第1作、3作も読んでみたい。

    //=|

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    投稿日:2024.04.12

  • まよ

    まよ

    このレビューはネタバレを含みます

    読んでて途中から、涙が何度も出そうになりながら読んだ。(結局涙は最後まで我慢した)

    こんな事ってあるのだろうか。
    尚が1人で背負わなくちゃいけなかったのか。
    拓が壊れていった姿に目を背けたくなる。
    お父さん含め、全てが悲しい方向へ向かっているのでは?と、お母さんが思っていたであろう事実も悲しい。

    家族がたった一つの冤罪でこんなにも破壊される世の中の恐ろしさと矛盾とどこにもぶつけられない思いと…たくさん詰まっている小説だった。

    前作の犯罪者はハラハラしたが、今回は悲しさと切なさが優った。

    素晴らしい作品だった。

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    投稿日:2024.04.06

  • しゃん

    しゃん

    読み終えても涙が出てしまう本は、そんなにありません。悲しいとか可哀想ではなく、ただただ涙が出て止まりませんでした。

    投稿日:2024.04.01

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