【感想】火花

又吉直樹 / 文春文庫
(741件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
122
256
216
74
18
  • 次回作が楽しみです

    普段、タレントさんが書いた作品というのは全く読まないのですが、
    ”文学界”に掲載された作品ということで随分話題にもなっているので読んでみました。
    いわゆる売れないお笑い芸人が少しずつ売れだして、
    そして解散、引退というところまでを描いた作品になっています。
    売れることのみをわだかまりを持ちながらもよしとする芸人と
    売れなくても自分の目指すお笑いを極めようする芸人。
    二人の対照的な芸人の生き方、そして芸人とはというような話が
    展開されていきます。
    その中の一節で、一つのことをずっと続けてきたことに対して
    ”それは、とてつもない特殊能力を身につけたということやで”
    という一節があります。
    一つのことを愚直に続けるということについて、リスペクトしている
    文章だと思うのですが、ここにはやはり又吉さん自体が芸人ということが
    大きく影響しているのだと思います。
    芸人又吉が客観的に芸人について語る。
    最後は芸人ならではのオチになっています。
    とても、面白い作品でした。
    今後の又吉さんの作品が楽しみです。
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    投稿日:2015.06.12

  • 火花は、散るのか

    芸人だから出版できたという言葉を一蹴するに足る作品。

    芸人が芸人の話しを書くというのは、これまた如何にもだなーと言われそうだけれど、逆に芸人以外にこれだけのリアリティをもってこの物語を書ける人間もいないだろう。

    人を笑わせるという芸人の技術と生き様に対して、正面から描いている。

    芸人だから読者を笑わせよう、ということではなく、
    笑いそのもの、そして人を笑わせるという職業ひいては生き方そのものが表出されている。

    言葉、特に会話のテンポはさすが。これは芸人としての経験が活きているといえる。
    本を愛し、たくさんの本を読んできた人間が物語を書くというのはある種の勇気でもある。

    笑いは楽しいものであるが、苦しいものかもしれない。

    自分が最も得意とするお笑いを描いた後、何を書くのか。
    二作目が楽しみだ。
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    投稿日:2015.06.15

  • 芸人の私小説なんてとんでもない。センスあふれる抒情的表現に引き込まれる人間小説

    売れない後輩芸人と、借金まみれで破天荒ながら哲学的に後輩を導く天才肌の先輩芸人。その二人のやり取りを中心とした、ヒューマンストーリー。

    誰かの生死がかかるとか、ドラマチックな駆け引きがあるとかいう起伏が激しいわけではなく、かといってつまらないわけでもなく、ただただ主人公・徳永に話をする、先輩芸人・神谷の言葉がいちいち心に刺さりまくって痛い。
    二人の会話が何とも抒情的で、刺激的で、ウィットに富んでいて、読者が芸人の世界に興味があろうとなかろうと、誰の人生においても当てはまり、私も何でもないようなところで、何故か涙ぐんでしまったこともあった。
    芸人・ピース又吉の人生観と、作家・又吉直樹の引き出しの深さと大きさが相まって、短い作品ながらも、これまでの読書の中で思わずブックマークやハイライトを付けた箇所が一番多かった作品。

    以下私が一番印象に残った表現を引用する。

    以下、本文引用
    「誹謗中傷は・・・・・(中略)、他を落とすことによって、今の自分で安心するというやり方やからな。その間、ずっと自分が成長する機会を失い続けてると思うねん。可哀想やと思わへん?(中略)俺な、あれ、ゆっくりな自殺に見えるねん」(引用終わり)

    ゆっくりな自殺・・・人として一番痛々しい末路かもしれない。

    心に刺激ではなく、一筋の指針が欲しいとき、何度となく読み返したくなる一冊となった。
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    投稿日:2015.07.16

  • 笑う面白さではなく、突き詰めていく面白さがある。

    幼い頃より今までお笑い漬けの関西にいて、ピースの漫才やバラエティーも見てきました。
    もちろん芥川賞候補というのも手伝って読もうと思いました。
    それはさて置き、最初の1ページ目位の情景描写のなんと繊細かつパンチのあること。思わず一旦閉じました。
    こんな感じで来るとは思っていなかったので、深呼吸しながら太い根性に入れ替えました。
    その後ずっとそれが正解でした。
    漫才とは何か?自分の思うその本質とは?狂気とも思えてくる2人のぶつけ合いは続くのですが、
    入口が広く(読み始め)息苦しさに出口が狭い感じ。でも最後の1ページでストンと胸に落ちてくれました。
    関西弁なので、たとえキツイ言葉でも暖かさが伝わってくる表現で、心に残る作品でした。
    P.S. 誰がこんな事考えんねんという程の『蠅川柳』めっちゃツボに入りました。
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    投稿日:2015.06.29

  • 文章は

     文章は思ったよりずっとうまいと感じられます。あまり奇をてらうわけではなく,でも言葉の選び方は良い,っていう感じで。
    今回の中身は芸人の話なんですが,ちょっと共感をもつのは難しいところもありました。
    ある程度売れるまでに何があったのか,が描かれていないし。
    (直木賞に比べて)芥川賞の対象になる小説がもともとあまり好きではないからというのもあるのかな。
    今回受賞がどうなるのかは正直よく分かりません。

    いずれにしても,次回作,芸人の話でないときに真価が問われるのではないかと思います。
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    投稿日:2015.06.30

  • 私の感覚が鈍いのか??

    敢えてなのかわからないけど、もうちょっとわかりやすく書いてもいいんじゃないのかなぁ?という文章のところがあって、
    そっか、これが純文学なのか…と思いました。
    期待しすぎていたのか、それほど面白いとは思わなかった。
    お笑いって大変な世界なのね、と思ったのと当時に、出てくる人がなんだかすごく痛々しくて、
    これからお笑い芸人をテレビで見るのがちょっとつらくなりそうです。

    主人公が天才だと思っている先輩、ですが、この人天才かなぁ?
    激しいタイプの笑いって、ちょっとわからないです。

    等々と、かなりのツッコミが私の中で湧いてしまいました。
    もうちょっとしたら読み返してみたらまた違う気持ちになれるかもしれません。
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    投稿日:2015.09.03

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ブクログレビュー

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  • オカケン

    オカケン

    映画版を見た時は桐谷健太の神谷を面白いと思えず話に乗れなかった。映画だと短時間で直感的な面白さを追求してしまうので厳しかったが、小説の中の神谷は良かった。支離滅裂に思えた神谷の言動・行動はどんどん説得力を増していき、徳永に影響を与え変化させていく。
    又吉なので当然ながら芸人の寂寥感や情熱、葛藤の解像度が高く、中でも貧困で破滅していく様を描くのがめちゃくちゃ上手いと思った。
    全ての芸人と人間を讃えるメッセージ性も好感が持てた。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.30

  • おもち

    おもち

    芥川賞っぽいなんとも言えない内面の表現とかは好きなんだけど、関西弁に馴染みがないからなのか、漫才調の会話に不慣れだからか読むテンポが乱れてしまった。

    投稿日:2024.04.28

  • hokusan

    hokusan

    累計発行部数326万部。第28回三島由紀夫賞候補作。2016年「朝の読書運動 高校生部門」1位。第153回芥川龍之介賞受賞作。
    2016年NETFLIXにてドラマ化され、翌年NHKにて放送。2017年映画化された作品。
    また海外でもアジア圏や欧米圏と幅広い国々で翻訳版が出版。

    本作は、『中学生の頃から人が笑ってくれるのが楽しい』という純粋な思いから、芸人を目指して夢の中を生き、様々な葛藤の中、夢の舞台に幕を下ろしていく1人の芸人にスポットを当てた作品。フィクションとはあるが、又吉氏自身の実体験をモチーフにした内容も含まれていたように思うし、尊敬する芸人『神谷』にも、モデルになった先輩芸人がいることも打ち明けている。

    途中途中の描写や展開も読んでいて面白く感じた他、「本当の地獄というのは、孤独の中ではなく、世間の中にこそある」のような、又吉氏の生の言葉なんじゃないかと思うような、そんなセリフも含まれてたりするのが印象的な作品でした。





    売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。
    神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。
    笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。
    芥川賞受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を収録。
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    投稿日:2024.04.24

  • 七海

    七海

    何かを追求して行った先にある虚しさとか、追求しすぎて見えなくなっていくこととか失うものもあるとか
    必ずしも努力したら報われる世界ではないということを感じて色々考えさせられた

    投稿日:2024.04.21

  • ぱっぴい

    ぱっぴい

    お笑い芸人さんが好きなので読んでみた。私には芥川賞の理由がわからなかった。人の日記をずっと読んでいるような感覚だった。

    投稿日:2024.04.20

  • tama_chan

    tama_chan

    個性とは、芸人とは、面白さ、人生とは……
    いろんな哲学が見えた一冊。
    芸人をやってきた著者にしか書けない生々しさを伴っていた。
    ブームとなっていた受賞当時からだいぶ経ち、タイミングを逃した気持ちだったが、色褪せないいい作品だったと思う。続きを読む

    投稿日:2024.04.17

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