【感想】コズミック 世紀末探偵神話

清涼院流水 / 講談社ノベルス
(50件のレビュー)

総合評価:

平均 3.2
6
12
16
5
6
  • 三国志のごとく、面白いキャラクター小説

    この小説はミステリーではありません。

    いわゆる謎解きを楽しむ本格ミステリーではありません。ホームズのような名探偵の活躍を楽しむ名探偵小説なのです。探偵と殺人事件という構成要素のため、ミステリーに分類されていますが、どちらかと言うとファンタジーや大河ロマンものに近い物語です。

    この本が壁本と呼ばれるのは、本格ミステリーとしては最低だからです。

    おそらくほとんどのミステリー愛好家は最初の事件の話を読んだ時に、真っ先にトリックに気づきます。だけど、まさかこんな簡単なトリックのはずがない、きっと自分では想像もつかないすごい真相があるのだろう、と期待して読み進めて行きます。

    とてもキャラクターが魅力的で、かなり面白い小説だから、これ程の長い物語も一気に読めてしまいます。

    そして、最後の真相にたどりつきます。そこでミステリー愛好家は思うのです。「最初の想像通りの一番つまらないトリックじゃないか!」と。「真犯人の正体なんてただの言葉遊びじゃないか!」と。そして、怒りにまかせて本を壁にたたきつけてしまう。

    しかし、それは途中の物語の面白さの反動なのです。

    この小説は三国志などと同じ楽しみ方をする物語なのです。ほとんどの読者は物語を読むまでもなく、最終的には曹操が劉備、孫権に勝つ、と歴史として知っています。しかし、それでも最後には負けると知っていても、劉備、関羽、張飛の活躍を楽しみに読むのです。諸葛亮孔明の智謀をもってしても蜀の衰退は免れません。それでもやはり諸葛亮孔明は最高の軍師なのです。最後に倒されるとしても呂布は最強の戦士なのです。

    それと同じように、この小説は名探偵たちの活躍を楽しめば良いのです。落ちのトリックがどうこう言うのは無粋なのです。

    大河の流れのごとき大事件の中で現れ消えていく人物たちの活躍を楽しむのです。

    それをして、作者の言う「大説」≒大河小説ということだと、私は思います。

    さぁ、最後まで読んで落ちを知ったあなた、もう一度この物語を読んでください。魅力的な名探偵たちの活躍は、何度読んでも面白いと思いますよ。そして最初に読んだ時には気づかなかった作者の仕掛けた色んなものを発見することができると思います。
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    投稿日:2020.12.13

ブクログレビュー

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  • 傘籤

    傘籤

    このレビューはネタバレを含みます

    「1200の密室で、1200人が殺される」という導入から、律儀にそれを守ろうとするかのように次々と各所で起きた殺人事件のあらましが描写されていく。

    正直読み始めて3個目の事件に来たあたりで、このままこれがずっと続くのだとしたらきついなーと思っていたのだが、JDC(日本探偵俱楽部)および探偵神・九十九十九が登場したあたりから話がドライブしはじめ、読みやすさやテンポの良さから最後まで駆け抜けることができた。

    たぶん全部読み終えたら「時間返せ!」って怒り出す人もいれば、「すごい怪作を読んだ!」と大喜びする人もいると思う。それくらい通常のミステリとはかけ離れた展開、トリック、犯人、名探偵が登場していくし、最初から最後まで言葉遊びが多用されるので、会わない人はきついだろうなと感じる。

    個人的には上下2段組にするほど濃い内容には感じなかったことと、話のぶっとび具合に対して語り口の古臭さが気になったこと、合間合間で事後報告みたいな形で挟まれる「~番目の被害者」という殺人事件の概要が途中から冗談にしか感じられず、緊張感が途切れてしまったこと、ここら辺がもっと上手くやれたんじゃないかな、とは思った。

    でも個性豊かで推理能力に長けた名探偵たちがたくさん登場するのは面白かったし、誇大妄想みたいな事件の全体像と真犯人、それを大真面目に書いている(ように見える)作品のバカっぽい雰囲気。そして700ページにわたりそれを持続させたエネルギー。そういう部分はすごく好きだった。

    壮大な与太話として読む分にはいい塩梅の娯楽小説。真面目なミステリを期待するとがっかりを通り越して壁にぶん投げたくなる作品。奇書としてみるなら最高点を付けたくなる、そんな本。

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    投稿日:2024.01.14

  • 大村実

    大村実

    清涼院流水コズミック世紀末探偵神話
    読みまして、左ページを見ると出版社と著者のふりがな、よくよく見ると

    せいりょういんりゅうすい さんでした。

    はじめまして初版1996年より27年たちまして、読みました。
    こんな感じでしたか!事前情報がよくなかったので入手してから時間たちました。
    でも、、、面白かったです。
    題名はいまいちです。しっくりしません。
    日本探偵倶楽部 読んでいて恥ずかしいかも。
    九十九十九 ライトノベルみたい。
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    投稿日:2023.08.17

  • マタン

    マタン

    このレビューはネタバレを含みます

    キワモノ出たーーーーーー!!
    まじめくさって読むと大けがします。
    本スローイングした人もいたそうな(笑)

    まあ、真相部分はあれですね、
    あれ。
    あれなんですよーとしか言えない代物です。

    その代わり探偵メンバーに関しては
    面白いのでそこだけ重点的に読んでいけばいいのでは

    まじめに読むものじゃないわ。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.06.21

  • モモマサ

    モモマサ

    とにかく面白い。探偵一人ひとりに推理法があり、班ごとに分類されたり…そして本でしか味わえない魅力的な謎と犯人! 時代が早すぎた作品。JDCシリーズの再開を熱望しています!!

    投稿日:2022.09.25

  • フラビオ

    フラビオ

    2022年7月11日読了。「密室卿」なる怪人物からの「今年1年間で1200人の密室殺人を行う」なる犯行予告は遠く時代を超え、日本・イギリスにまたがる超絶犯罪の幕開けだった!対する超人的探偵集団JDCのメンバーの推理は…?恐ろしく分厚いメフィスト賞受賞作、ミステリ界に衝撃を与えたという清涼院流水のデビュー作だが…あらすじから呆れかえる、こんなバカミステリ(褒め言葉)を書き切る手腕には脱帽しかない。「いやゆうてもそれ無理やろ」とツッコんでも意味がない、とにかくこの世界観に浸り切って脳のどっかがおかしくなったであろう得難い読書体験を得られた。なんだろう?もっと文体を工夫したり無駄をなくせばもっと読みやすく面白い小説になるような気もするのだが、この作者の作品はこうでないと面白くならないのだろうか…?続きを読む

    投稿日:2022.07.11

  • がらがら

    がらがら

    「今年1200の密室で1200人が殺される」という密室卿を名乗る人物からの犯罪予告が届き、全国で毎日密室殺人が起き始める。

    ぶっ飛んだアイディアのミステリー、自分が予想する真相は見事に全部外れた。

    真相については賛否両論ありそうだけど、個人的には面白いと思った。 ただ流石に長すぎる。

    無駄と思えるほど登場人物が大量に出てくる上に、名前も読み辛いため誰が誰だか殆ど認識せずに読み進めた。

    講談社文庫の作品らしいといえばらしいけど、もっとコンパクトにして欲しい。
    続きを読む

    投稿日:2022.06.02

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