【感想】影との戦い ゲド戦記1

アーシュラ・K.ル=グウィン, 清水真砂子 / 岩波少年文庫
(89件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
32
31
9
1
0
  • 世界3大ファンタジーにしてジブリ映画原作。こっちが本物です

    世界3大ファンタジー「ナルニア国物語」「指輪物語」「ゲド戦記」の一角にして、ジブリの宮崎吾郎監督初監督作品「ゲド戦記」の原作。
    映画版は、複数あるゲド戦記の原作の内容がなぜかごちゃまぜになっていて、本質を捕まえているとは到底思えず、原作読了者としては「?」が頭の中から取れないままだったのを覚えています。

    映画の方はあんまり評判がよくない印象ですが、宮崎駿監督がずっと映像化したかったという本作は、非常にテーマが深く、10~20代前半での、個人が体験する自我が確立する過程を、ファンタジーの形を借りて克明に描いた傑作だと思います。

    ユング心理学での「影」の考え方に強い影響を受けて書かれたこの「影との戦い」は心理学的な観点から見ても高い価値が認められていて、文章は低年齢層向けに平易に書かれているものの、内容は深く、暗く、重く、本質的です。
    出版は1968年と古く、本作を読むと、現代の少年漫画などでよくある、自分の悪意を受け入れて主人公が強くなる(NARUTOでもあったな)描写のひな形はこれなんだと思えます。

    「ナルニア国物語」「指輪物語」と比べると、登場人物は少なく、世界観も限られているので、テーマが分かりやすいかもしれません。
    連作で、1作ごとテーマは大きく変化していきますが、一貫してあるのは人の心の有り様を深く掘り下げていく視点にあるように思います。
    秋の夜長にはよくはまる物語ではないかと。
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    投稿日:2015.10.15

ブクログレビュー

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  • ねずま

    ねずま

    全編を通してセリフや心情描写が少なく、淡白な文章が続くので、血沸き胸踊る冒険活劇というよりも、主人公の内面の苦悩に迫る純文学を読んでいるような感覚になる。

    主人公の人物造形がけっこう好き。少年期のゲドは高慢で虚栄心に満ちていて、そのくせ臆病。私の共感性羞恥をガリガリに呼び覚ます。胸がざわざわしすぎて、最初はページを繰るのが遅かった。けれど決して嫌いじゃないんです、そういう主人公。『はてしない物語』のバスチァンみたいで。

    後半、成長した青年ゲドは、自分の慢心と非力に打ちのめされ、無口で思慮深く少し卑屈。これまた「しっかり!」とそわそわさせられるけど、嫌いじゃないです。ウジウジ具合が程よくて思わず応援したくなる。

    【以下、ネタバレあり】
    「影」については、解説でユングを引いて考察されているけれど、そういう専門的な知識がなくても、自分の恐れや負の部分、直視したくない部分のことだろうなと、読んでいると想像がつくよね。己との戦いということだよね。ビジュアルとしては漫画版『ナウシカ』の皇弟を思い起こしてしまった。あれは「自分の闇の部分」ではないけど忍び寄る感じが、それっぽい。オタクの存在やテレノン宮殿も、私にはかなり『ナウシカ』を想起させる描き方なので、宮崎駿はけっこう影響を受けていたんではなかろうかと勝手に思っている。

    「名前」についての考え方が東洋的な気がした。「真名」を知られると力を掌握されてしまうってなんだか陰陽師っぽいよね。
    ガレー船が出てきたり、時代がすごく古いような描写がされていて、これは「キリスト教文化」の影響を受ける前の西洋、いや、そもそもそんなものが無い世界の話を描いているんだろうなと思う。非西洋を描いたら東洋に近づいてしまうというのは何やら面白いね。

    この作品、読みながら既視感を覚える箇所が多かった。宮崎駿だけでなく、多くの現代ファンタジーのそこかしこに影響を与えているのかもしれない。
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    投稿日:2024.05.19

  • りゅうちゃん

    りゅうちゃん

    ついに超大作ファンタジー小説を読み始めた。
    2023年の自分の誕生日にセット買いし、今年こそはと2024年から読み始める。
    ジブリ映画のゲド戦記は何度か見たが、やはり原作を読みたい気持ちになり手に取った。

    訳本だが、すごい。ファンタジーで想像し辛いかと思いきや、ゲドの心象からカラスノエンドウとの友情、影との戦いをしっかりと表している。
    魔法使いは均衡を保つために生き、目的を果たす。
    ゲドは影を放出することで挫折するも、才能を活かし成長し、影を対処する。
    一緒に冒険をした気分だ。
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    投稿日:2024.04.30

  • MOMENT

    MOMENT

    それほど長い話ではないのに世界観が壮大で、描写が細かくない分、想像力の入る余地なら大きく楽しい。さすが読み継がれていくファンタジー。

    投稿日:2024.03.31

  • 下山はじむ

    下山はじむ

    68歳の老人が読んだ所感
    現実を忘れて、ファンタンジーの世界に感情移入するのはなかなか大変です。むずかしいのは事前に自分が作者の世界に同調する必要があることです。たとえて言えば、おもしろいであろうと期待して映画館に見に行く感じ、途中で期待外れとわかっても、お金を払ってまで見に来たからには最後まで見る覚悟をもつ、みたいな。
    1.魔法使いは、日本で言えば高僧。偉人のようにあがめられる慣習がある世界。
    2.魔法使いは、魔法の専門学校を卒業して地方に派遣されている。東大寺で修行した僧が国分寺に派遣されるような感じ。魔法の専門学校も東大とか早稲田とか慶応とかみたいに、いろいろ流派があるらしい。
    3.情景描写が多く自分で、文字から映像を想像しなくてはいけない。それを楽しむ必要がある。これはマンガと逆ですね。
    4.アースシーという世界の海図を、読みながらたどっていくのも旅行気分で楽しい。ジクソーパズルのようでもある。
    5.上陸する島ごとに、「ヤマタノオロチ」のような伝説がある。(各所に東洋的な世界観がある)
    6.ノコギリソウとか人の名前に違和感あり(ねじまき鳥クロニクルみたい)。覚えきれないので、相関図を作成したほうが良い。
    7.時々、展開が唐突で、シーンとシーンの経過時間の説明がない。映画のシナリオを読んでると思えばいいのか?
    8.風の谷のナウシカのテト、オーム。もののけ姫のおっことぬしみたいのが出てくる。(宮崎駿さんはゲド戦記を何度も読んだと言っていた、原点はこれか?)
    9.100マイルは160km、100kmは62マイル
    10.最初に「昔々あるところに」がないのに、最後に「だったとさ」という語り部のことばがあり、違和感を感じた。(最初に説明はあるが、「じゃ、お話をはじめようか」がないのだ。幕があがり急に役者がしゃべりだす感じ、幕が開く前に語り部が登場してほしかった)
    などが雑感です。
    大人が読んでもタメになるかは、ちょっと疑問。68歳でタメになる人は、よほど順調で挫折のない人生だったのでは・・・。
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    投稿日:2023.09.29

  • 小春

    小春

    夏読55冊目。
    #ゲド戦記 シリーズ1作目。
    15歳の少年ゲドが、ロークの学院で禁じられた魔法を使い、影を呼び出してしまう。
    そして影を探す旅に…
    まだまだ青臭く、初々しいゲド

    投稿日:2023.08.28

  • 海と青硝子

    海と青硝子

    ずっと前に読んだ時には難しかったなぁ。児童文学と言っても、この深さ。年とってから再読して分かりました。ゲド自身の闇の部分である「影」。恐ろしいけれど逃げずに最果てまで追って追って、真の名を呼んで一体化するシーンが迫力満点!
    精巧な地図がいいですね。ゲドのいる場所や旅のルートを辿れるので、ワクワク感がアップします。
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    投稿日:2023.07.21

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