【感想】舟を編む

三浦しをん / 光文社文庫
(1253件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
557
430
160
16
2
  • 流石、本屋大賞受賞作

    本屋大賞受賞作なら無難、との軽い気持ちから読み始めたももの、期待以上に楽しませてもらいました。
    辞書作りの行程だけでなく、携わる人々の思いも初めて知り、感銘をうけました。

    投稿日:2019.07.09

  • 地味な仕事に似つかわしくないほど熱すぎる奴ら

    辞書作りという傍から見て地味な仕事に没頭する人たちの話です。
    コミックとか小説に比べて認知度がないので“こんなのテーマに取り上げて読む奴いるの?”と半ば懐疑的な考えで読み始めました。
    ところが、馬締光也の辞書にかける思いとその思いに触発される仲間たちに私もどんどん引き込まれていきました。

    どんな仕事でも一生懸命やる人たちがどれほど熱くかっこいいか改めて感じさせられました。
    この本に出会えたことに感謝です。
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    投稿日:2017.11.10

  • 特典あり!「恋文」を読みましょう

    2011年初版の単行本も素晴らしい装丁でしたが、既にお持ちの方であっても、電子版での再読をお勧めします。なぜなら、文庫化特典として、「馬締の恋文」が収録されているからです。
    私は、本書の一番の魅力は、「恋文文学」である点にあると考えます。もちろん、出版業界の「お仕事モノ」として読んでも感動できますが、本書を読みとく上では、この「恋文」が重要な役割を果たすからです。

    (1)言葉のプロは一日にしてならず
    本書は、辞書を作る人たちの物語です。主人公は、長年月をかけたプロジェクトを受け継ぎ、その柱となる人物。飛び抜けた適性を持っていますが、その才能は、長い時間を経て実を結ぶタイプのもの。最初は「意余って力足りず」の状態です。
    その象徴として登場するのが、件の恋文です。

    (2)恋文は準備できない一発勝負
    私も、初めて本気のラブレター(電子メールでしたが)を書いたときには難渋しました。秋の大型連休の間中、家族に「今の若い人は朝から晩までスマホばかりね」とからかわれながら、夜も眠らずにああでもないこうでもないと書いては消しているうちに原型は跡形もなくなり、ついに頭が朦朧として、力尽きるように送信ボタンを押したことを覚えています。受け取った相手からすれば、困惑するしかない出来だったでしょう。
    主人公の恋文も、まあ誉められたものではありません。便せん15枚の超大作。漢詩が複数引用されるなど、およそラブレターであるかどうかも判読不能な代物です。しかし、これは仕方がない。仕事や婚活なら計画的に進められますが、恋は不意討ち。一生に一度の相手と思い詰める人がいつ現れるかなど、事前には予想がつきません。気づいたときには気持ちが頭を追い越して、猛然と走り出しているのです。上手く言葉にすることは、その最中には無理というものでしょう。だからこそ、古来より、恋文には代筆者がつきものであり、万葉・古今の名歌が今に語り継がれるわけです。

    とはいえ、本書は辞書を編む人の話。人生をかけて言葉の海を漕ぎ進む主人公が、代筆を頼むわけにはいきません。夢中で書いた15枚が、当事者以外の人々にも面白がられ、次の世代へと大志をつなぐメッセージになるのです。ここが、上手い!
    人から人へ、言葉が見事にその記憶を伝えた様子を読んだとき、そこにはきっと、確かな感動があるはずです。

    こういった次第ですので、ぜひ、巻末の恋文をお読みください。
    下手は下手なりに頑張って、書き手の人となりをよく伝えております。キャラクターのコメントにもあるように、必要なことは一応押さえてもいます。
    全文読了後に本文を再読されれば、主人公の成長ぶりが、一層味わい深く感じられることでしょう。

    (3)最終章、もう一つの手紙
    本書では、もう一通、大事な手紙が登場します。
    こちらは、短い。しかし、万感の思いが込められています。主人公たちよりも遠くへと旅する、先達からのメッセージです。
    文章は、長く書くよりも短く書くほうが、書き手の技量は上になります。もちろん、全てを言葉にすることはできない。しかし、やるべきことをやり遂げ、魂が次代へと引き継がれていれば、そこは心配しなくてもよいのです。
    諦めずに努力を続けなさい。そうすれば、やがて君たちもこの境地に達するのだぞ、と優しく励まされる気持ちになる一通です。

    私は小学校の時、「金を残す人は優れている。名を残す人はそれより高級。しかし、人を残す人は、さらにもっと上である。そんな人になりなさい」と教えられたことがあります。どうすれば「人を残す人」になれるのか、本書に納められた二通の手紙が、その手がかりを教えてくれた気がします。

    そんなわけで、わたくし的には「恋文文学」である辞書編集者の物語。特典の恋文ともども、ご愛読いただけると嬉しいです。
    そしていつか、恋文を書くべき相手が目の前に現れたら、恥ずかしさを振り切って、きちんと言葉を届けてください。また、もしも、誰かの恋文があなたに届けられたなら、その勇気と無謀に乾杯して、みんなで楽しく読みましょう。
    言葉の海を旅する、すべての人に幸いあれ。
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    投稿日:2017.10.10

  • 辞書とはいったいどれだけの時間を費やして作られるものだろう

    最近はあまり辞書を使うこともなくなってしまったのだけど,これを読むと,また手元に1冊置いておきたくなってくる。

    投稿日:2017.10.01

  • 辞書は言葉をつかった作品

    辞書作りとは・・・、どれだけの時間と、労力がいるのか。どう作りあげていくのか。
    辞書作りに、携わる人々をみて、辞書の重みを感じることができました。
    辞書は、まるで、芸術作品。材料は、言葉。
    作り手により、少ししづつかわる様は、まるで、画家により描かれ方がかわるキリスト絵画の様。
    辞書って、おもしろい!深い!
    続きを読む

    投稿日:2017.01.31

  • ラブレターが最高

    映画化もされましたし、今はTVでアニメも放送されています。2012年の本屋大賞 大賞受賞作品です。
    辞書編集部のお話ですが、普段考えることもない辞書製作の話はとても興味深く、楽しく読めました。
    辞書を読む人って??って思ってましたが、読み終えた今はちょっと見方が変わりました。いろんな辞書を読んでみるのも楽しそうだなぁと思います。実際に読むことは無いと思いますが・・・。
    主人公のマジメくんが書いたラブレター(恋文)が全文掲載されています。これは最高に笑えます。
    普通に読んでいけばマジメくんのキャラを理解したうえで、最後にこの恋文を読むことになるので、面白さ倍増です。
    続きを読む

    投稿日:2016.11.22

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ブクログレビュー

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  • まさじい

    まさじい

    テレビを見て、ラジオで辞書の面白さを知り、小学3年生に辞書の使い方の指導に手こずり、そして、この本を読み始め、三日で読み終えた。いや、まだマジメさんのラブレターは読んでいない。かつて身近にあった辞書はなくなり、電子辞書にかわり、今はスマホにたどり着いた。ピンポイントで目指す言葉に辿り着くことになった今、辞書で見つけた言葉の周辺にある言葉との偶然の出会いは無くなったなあと強く感じている。
    さて、どの辞書を買おうかな?
    続きを読む

    投稿日:2024.05.05

  • TAKI

    TAKI

    TVドラマ観てから、原作であるこちらの作品を読んでみました。辞書作りにかける熱い思いを個性の強い面々から感じて、一気に読み終わりました。

    投稿日:2024.05.05

  • まい

    まい

    馴染みのない言葉も出てくるが、そこへの拒否反応は抱かせない自然で読みやすい流れだった。
    登場人物の個性の豊かさに、読み進めるなかでいつの間にか知人であるかのような錯覚すらしてしまう。
    全く違う業界で仕事をしている自分にも、働くことやその熱意について語り書けてくるのが、何とも不思議な感覚だった。続きを読む

    投稿日:2024.05.05

  • とんだりはねこ

    とんだりはねこ

    昔一度読んだことのある作品。作者特有の柔らかい言葉で、軽妙に、それでいて日本語の深い味わいを感じさせてくれたことが印象に残っていたけれど。
    ドラマを見て、再び、文庫本を買い、再読。
    まじめ君はじめ、個性ある面々。思わずぷっと吹き出すやりとりや独白。
    松本先生の遺したお手紙。
    笑って、泣けて、うなづけて。
    こんなに面白かったんだと再認識。
    続きを読む

    投稿日:2024.05.04

  • ユージ

    ユージ

    ものづくりの裏話的な作品が好きな私にはとてもハマった。プロジェクトXのドキュメンタリーに恋愛や人間ドラマを絡めて味付けしている感じで良い。面白くて一気読み。

    キャラが魅力的。それぞれの人が、好き嫌いに関わらず、与えられた仕事を責任持ってやって一つのものを作り上げる。しかももの凄い長い時間をかけて。

    映画やドラマになっているのは知っているけれど、あえて自分なりのキャスティング。

    馬締 米津玄師
    香久夜 櫻井ユキ
    タケ 田中真弓
    荒木 岡部たかし
    松本先生 笹野高史
    西岡 コカドケンタロウ
    佐々木 横澤夏子
    岸辺 岸井ゆきの
    宮本 仲野太賀
    続きを読む

    投稿日:2024.05.04

  • ことり

    ことり

    大好き。
    好きな役者さんが出るのでドラマを見て、それから小説を読んだ。こんなにささやかで、力強くて優しい小説があるんだと思った。

    どの登場人物も好きだけど、自分は西岡さんが好き。自分自身に強い情熱や、熱中できるものがなくても、それを持ってる人に乗っかって、それを後押しして、その人たちの力になることはできるよね。続きを読む

    投稿日:2024.05.04

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