【感想】グランド・ブルテーシュ奇譚

バルザック, 宮下志朗 / 光文社古典新訳文庫
(19件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
2
5
9
1
0
  • フランスの文豪バルザックの短編集。面白かった。

    本作はフランスの文豪バルザックの短編集から構成される。内容としては短編小説四つ、評論一つを収めており、訳文もこなれており、だいたい女子向けライトノベルを読み通した程度の読解力で読み通せると考えられる。

    投稿日:2018.12.16

ブクログレビュー

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  • transcendental

    transcendental

    19世紀フランスの作家バルザック(1799-1850)の短編4編と評論1編。大都市パリの喧噪と汚濁に塗れながら、もはや「回帰すべき田園」も無ければそこで幻想されていた「人間の本来性」なるものも喪失してしまっていることを痛切に認識し、近代社会という暴力的に運動する機構のなかで落魄した群衆の匿名的な情念と生理の有象無象それ自体のうちに何か美的なものを見出す新たな美意識を、ボードレール(1821-1867)に先駆けて描いている。この現代的な美意識にあっては、ギリシア以来古典的な「真-善-美」の三位一体が解体されている。

    「英雄や発明家、街の物知りや、ごろつき、悪人、有徳の士や背徳者。だれもが貧困に押しつぶされ、困窮に窒息し、酒におぼれ、強烈なリキュールで精神を鈍磨している。・・・。この悲しみの町で、どれほどの冒険が敗北を喫し、どれほどのドラマが忘れ去られてしまうのか、あなたには想像もつかないにちがいない。そこには、おそろしいできごとや、すばらしいことが、いくらでもあるのだ! 想像力だけでは、そこに隠されている真実にまでは届かず、また、だれも彼らの中に入りこんで真実を発見できはしない。悲劇にせよ喜劇にせよ、こうした驚嘆すべきシーン、いわば偶然が生み出した傑作を見いだすにはどん底にまで降りていく必要があるのだ」(「ファチーノ・カーネ」1836年)
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    投稿日:2019.04.27

  • saigehan

    saigehan

    むんわりと「おとなのれいあいルール」を語る?お呼ばれして、ふんわりスフレケーキを
    お紅茶と共に頂く。

    ↑別に否定してませんよ。自分としては賞味期限の最初から存在しない、のけぞるような酸味の漬物と、開封後一年以上経過してる日本酒出された方が安心する。

    時々自分が玉子の殻のような気がする。紛れもなく同じ玉子だけど、本体と混ざってはいけない。見つかったら排除される。


    まあでもこの、提灯スカート履いて、うちわで風船ラリーしてるような団体に混じりたいと思わない。

    どうだ、この俺のひねくれた否定の仕方。
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    投稿日:2018.10.23

  • kei1122

    kei1122

    このレビューはネタバレを含みます

    久々のバルザック。短編4編と評論1編。
    本題に入る前の前口上も楽しい。「心して読め!」と
    作者からくどくどと言われる感じ。

    『グランド・ブルテーシュ奇譚』はちょっと怖い
    大人の童話っぽくもありました。いやー怖かったです。

    評論は「書籍業の現状」では十九世紀における
    「コミュニケーションの高速化」の影響に言及している。
    この高速化は現在もますます加速していて最後には
    どうなるのかとふと思う。

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    投稿日:2016.10.15

  • 深川夏眠

    深川夏眠

    多数の作品から成る『人間喜劇』より厳選された
    短編4編+評論「書籍業の現状について」を収録。
    「早過ぎた埋葬」(!)系の表題作が猟奇的だが、
    それにしても、この時代(19世紀前半)のヨーロッパでは
    流階級の人々が配偶者に隠れて若い恋人とあれやこれや……は
    普通のことだったんだろうかと首を傾げる。
    きっと珍しくはなかったんだろうな――と思っていたら、
    巻末の年譜にバルザック自身の「あれやこれや」が記されていて
    笑ってしまった。
    未亡人を口説いている最中に
    家事を引き受けてくれたメイドさんのような女性と「できちゃって」
    いただとか、やりたい放題。
    人生の経験値が高ければ、それだけ
    様々な人物造形を緻密に行えるテクニックが身に着くだろうけれど、
    いやはや何とも(笑)。
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    投稿日:2016.07.11

  • koba-book2011

    koba-book2011

    夫ある女が若い愛人が出来た。夫にばれそうになる。さあ、どうなる。

    1800年代のフランス。なんだかんだ、まだまだ男尊女卑。
    名誉を重んじる貴族の世界。

    バルザックらしき若者が、田舎町グランド・ブルテーシュで、謎の封鎖された豪華な館を見つけます。
    立ち入り禁止になっています。

    年老いて亡くなった貴族の夫人の館。
    遺言で、死後50年(だったかな)は、誰も入ってはいけない、と…。
    その謎を、ヒトから聞いて知っていくミステリー。

    話は遡ります。
    地方貴族の美人な奥さんが居る訳です。これ、つまり年老いて死んだ館の貴族夫人の若かりし日。
    奥さんですから旦那さんがいる訳です。
    なんだけど、この奥さんが、スペイン人の貴族と不倫の恋に落ちます。

    このスペイン人の若い男性っていうのが、捕虜なんですね。戦争の。
    捕虜なんだけど、まあ、貴族の時代ですから、その地方でゆったりもてなされている。
    脱走しなければ、名誉ある待遇な訳です。

    そして、夫の目を盗んで屋敷で密会します。そこに夫が帰ってきます。逃げる暇がなくて、続きの小部屋に隠れます。
    怪しんだ夫が部屋に入ってきます。緊張です。緊迫です。
    夫は、小部屋に、間男がいる、と気づくわけです。
    ところが、妻が、誰もいない、という。あたしを信じないの?という。そこを開けたら、信用してないってことね。終わりよあたしたち。みたいなことを言います。

    さあどうする。
    どうなる。

    ネタバレになりますが、まあこの本を読もうという人はまず居ないでしょうから(笑)、書いちゃいます。

    夫は開けません。

    ただ、その場から一瞬も外さず、逃がしません。

    そして、召使に命じて。
    左官屋さんを呼びます。

    妻が見ている前で、小部屋の入り口を煉瓦で埋めてしまうんです。
    妻がいろいろ言います。でも、「誰もいないと言ったじゃないか」「…」。

    そして、妻は倒れてしまいます。
    夫は、看病せねば!…と…妻が嫌がるのに、ぴったり部屋に付き添います。
    夫か、夫の意を受けた召使が、必ず、必ず、24時間、部屋にいます。
    そして…2週間…それ以上…。

    怖いですねえ…。

    と、言うお話です。


    「グランド・ブルテーシュ奇譚」
    これは、表題になるだけあって、実に面白かったです。戦慄です。

    バルザックさん、と言う人も、読んだつもりで読んだことが無かった(と思う)んですね。
    特段理由なく、ふらっと購入して読んでみました。短編集。
    時代背景とかの勉強をさほどせずに、「まあ、分からないことは飛ばせばいいや」というくらいの雑な読み方。

    他に
    「ことづて」
    若き日のバルザックらしい青年。旅の空で意気投合した、これまた若き青年。
    この青年には人妻の愛する人がいる。今から会いに行く。
    だけど事故死してしまう。
    その悲報を、仕方なく、その人妻に伝えに行く。
    でも、行ったら当然夫もいる…

    「ファチーノ・カーネ」
    若き日のバルザックらしき青年が、老いて盲目のイタリア人から、身の上話を聞く。
    運命の恋に翻弄されて、受難したイタリアの日々。隠された財宝…。

    「マダム・フィルミアーニ」
    未亡人のマダムと若き青年の恋愛。
    名誉とモラルの為に財産を手放すことで、ふたりは愛を深める。

    「書籍業の現状について」
    エッセイと言うか、論考というか。
    19世紀のイギリスやフランスの出版界。
    芸術に理解の無い資本家に出版を握られてて問題だ、みたいな。

    表題作以外は、さほど感心はしなかったんですけどね。
    わりに、「年上の女性(人妻)と青年の情事」が好きなんだなあー、という(笑)。
    こういうところから、「フランスっぽい」というイメージができるんだろうなあ、と思いました。
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    投稿日:2014.11.28

  • 愛夢

    愛夢

    このレビューはネタバレを含みます

    バルザックはやっぱり面白い!
    谷間の百合、ゴリオ爺さんの次に読んだこの短編集。
    表題作の浮気する妻への夫の復讐の話と、お金の話、ファチーノ・カーネが好き。
    素直に読み終わって違和感を覚えたマダム・フィルミアーニはフィルミアーニ夫人は死亡確認書や遺言など、必ず手に入ると信じていたからこその行動なんじゃないかと邪推。それに見事に騙される男達、と見たら面白いんですが…。
    是非人間喜劇全てを文庫化してほしい。

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    投稿日:2013.04.20

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