【感想】寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」

鵜飼秀徳 / 日経BP
(19件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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7
3
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  • 日本人にとって宗教とは?


    「地方消滅」の前にすでに地方では「寺院消滅」が始まっている。記者でもあり僧侶でもある著者が丹念に地方を取材してまとめた衝撃の日本の宗教の今。
    檀家制度によって支えられていた寺院が人口減とともにその機能を喪失してゆく。それは一地方の出来事にとどまらず、日本人にとって宗教とは何かという根本的な問題も突きつけてくる。特に一章を割いてまとめられた江戸時代の寺請制度から戦後の農地解放までの仏教の権力化と世俗化の歴史が端的にそのことを示している。
    取材の最後に著者は寺院の存在意義を「あなた自身を見つけられる場所だから」と定義するが、戦後の社会構造や家族制度の変化の中で「ふるさと」との結びつきを失いつつある都会に住む人にとって、それがどれだけ切実な問題かと問われると甚だ疑問と言わざるを得ない。
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    投稿日:2015.11.06

  • 消滅してもいい

    もし、あなたが人生に躓いた時、誰に相談しますか?
    もし、あなたが自分以外の近親者が亡くなり、葬式をしなければならなくなった時、誰に相談しますか?
    これらの答えに、寺や近所のお坊さんなどという答えが出てくるならば、あなたにとって寺は必要で、今後護持していかねばならない存在だ。

    しかし、私は、日本の寺院は、これらに全く応えていないと思っている。
    ゆえに、包括宗教法人である「本山」とか「大本山」だけを残して、維持できないところはさっさと消滅すればいいと思っている。
    日本の寺と坊主は、権力と結びつき、自堕落な生活を送ってきた。権力者自体が仏教を成立させてきた経緯があるから幾分仕方がないとも言えるが、
    それに反発した僧侶達が鎌倉新仏教を形成したのだ。その反骨精神があった鎌倉新仏教も、江戸時代に幕府に取り込まれ、すっかり牙が抜かれてしまい、
    権力の傘に安住してしまったおかげで、現在の凋落へと向かっている。まさに、自己責任だ。各宗派は反省すればいいのだ。

    江戸時代の権力に取り込まれたおかげで、現代でも「家の宗旨」が重要で、個人が寺と向き合い、個人で僧侶を信頼し、個人が宗教を信じるという構図を描けていない。
    私はある仏教宗派で、信徒となる儀式を本山で受けたが、本山の職員に、「所属寺はどこか?」と聞かれ、「ない」と答えると、「早く見つけてください」と言われてしまう。
    しかも、どうすれば、所属寺を見つけるのかも教えてもらえずにだ・・・。なぜ、本山の所属ではダメなのだろうか。
    別に、本山の住職に葬式をしてくれとも思っていないが・・・全く理解不能だ。

    また日本は、仏教というよりも、
    ・先祖崇拝
    ・空海、法然、親鸞、日蓮といった宗派の祖師崇拝
    ・禅、護摩炊き、高野山、比叡山といった儀式やお山信仰
    が強すぎて、仏教なのか土着宗教なのかよく分からないのが実情だ(それがいいという方もいるのだろうけど・・・)。
    著者は僧侶資格(これは民間資格で、宗派が定めた規則に基づき与えられるもの)を持つらしいが、先祖崇拝を言い過ぎで、
    先祖崇拝ばかりを言う僧侶なら私は、全く不要だと思ってしまう。(大体、「僧侶」も、妻帯者であれば「僧侶」ではないのだが・・・。)
    なぜなら、私は、仏教という宗教のフィルター(それは、「永遠の真理(真如)」だと思う)を通して、日常おこる様々な出来事を乗り越えるバックボーンとしたいのだ。
    お盆で「おじいちゃん(もっと古い人でも良いのだが)が還ってくるよ~。」とか言って、茄子やキュウリで馬を作ったりすようなことは、どうでもいいのだ。
    著者は宗教的意味がなければ、京都の五山の送り火がただの山焼きになってしまうというが、先祖崇拝が仏教なら、送り火は、私にとっては、ただの山焼きに他ならない。
    私は著者とは全く意見が合わない。著者はおそらく、現在寺院は、青息吐息の状況だが、宗教(仏教)は必要とされており、決して寺院は死なないと言いたいのだろうが・・・。

    私は、現在の寺院で維持できないところは一旦消滅させ、現代社会にマッチした宗派構造を構築した方がいいのではないかと思う。
    いっそ、包括宗教法人が「株式会社」を設立し、葬式や回忌法要をビジネスとして成立させ、集めた利益を包括宗教法人に配当という形で回し、
    一定の数の地方寺院を維持するとか、大胆な発想が必要なのだと思うのだが・・・。これも坊主丸儲けと言われる要因になるか・・・。

    私にとっては、読めば読むほど、著者の主張に真っ向反対する意見になってしまう不思議な本でした。
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    投稿日:2016.09.04

ブクログレビュー

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  • ktsubaki1012

    ktsubaki1012

    h10-図書館2019.1.13 期限延長2/3  未読了 返却2/3再借出4/6 期限4/20 読了4/12 返却4/14

    投稿日:2024.04.26

  • 正木 伸城

    正木 伸城

    メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1695249587135811682?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw

    投稿日:2023.08.26

  • habuko

    habuko

    アマゾンお坊さん便がニュースになったかなり前に読み終わったのでうろ覚え。お寺の経営は大変だな~とか、今は昔とは時代が違うから仕方ないよね~とか、工夫で逆境を乗り越えてお寺営業続けてる人もいるのか~とか。事業継承にこんな感想を持ってしまうよじゃ、お寺さんがやっていることってもはや宗教じゃないね。続きを読む

    投稿日:2018.08.25

  • グアルデリコ

    グアルデリコ

    なんで日本の仏教は、上座部仏教と違って妻帯者OKなのかなとか、色々疑問があったのですが、本書を読んで結構スッキリしました。そして、お寺さんってどのような経営になってるんだろうとか、税金回避で儲かってるんじゃないかとか、そもそも実態はどうなんだろう、というお寺に関する素朴な疑問もスッキリ解決しました。続きを読む

    投稿日:2017.11.05

  • nuhuaueo0

    nuhuaueo0

    この本で紹介されている過疎化が進む地域の寺院の荒廃ぶりは想像以上だ。ただ荒廃・衰退していく教団事情について述べるだけでなく、このような現代の仏教が直面する問題に対する、僧侶・尼僧たちによるユニークな取り組みについての紹介もある。続きを読む

    投稿日:2017.03.01

  • k-masahiro9

    k-masahiro9

    このレビューはネタバレを含みます

     都会暮らしのビジネスパーソンに、親の死後、初めて寺との付き合いが生じる。ビジネス界の常識は、田舎のしきたりの中では非常識になることもある。金銭や地方の慣習に対する考え方の違いをめぐって、菩提寺に見切りを付け、無宗教の霊園に改装する人も出てきている。(中略)結果的に死者をないがしろにしてしまっているのは、哀しいことである。(p.43)

     石井さんは、尼層の役割を「”優しさ”の連鎖をつくること」だと強調する。社会的、経済的に強い立場の者は、未来に向いて歩いてゆける。しかし、世の中には過去が重荷となっている弱い者もいる。そうした人が、ふと腰を下ろせる場が必要だ。それが尼寺の存在、ということなのかもしれない。(p.106)

     地域独特の「余計なこと」ってありますよね。人付き合いとか、お墓参りとか、しきたりとか、季節の行事とか。われわれは合理的な考え方でどんどん「余計なこと」を省いてきたのでしょうが、浅慮だったとしか言いようがないです。(p.113)

     「寺」という言葉の意味をご存じですか。「同じ状態を保つ」という意味です。「ぎょうにんべん」を付ければ、同じ状態で佇むことを意味する「待つ」。それが、主君を守備する「侍」の務めでもあります。もっと言うと、「やまいだれ」を付ければ、なかなか治らない「痔」ということですよ(笑)。(p.118)

     諸法無我とは分かりやすく言えば、「世の中のすべてのものは常に変化している。そこに『我』という中心的なものは存在しない。一切が万物との関わりの中で生かされている」という仏教の根本的な教えの一つである。(p.149)

     市井の人々に近いところ、世俗で生きているからこそ、できることもあると思います。世俗で迷う人々と同じ視線に立つことで、悩み、苦しみに対して想いを馳せ、共有できる。日本の僧侶ができることは、仏教の理念や理屈を並べたてることだけではなく、今の生活を大事にしながら、人々に徹底的に寄り添い、その願いに応えようと努力することだと思います。
     「清貧」でなくとも、そこがぶれなければ僧侶に対する信頼は揺らがないでしょう。寺の存続問題も、「僧侶が人々に寄り添えるか」、つまるところはその「覚悟」それだけだと思います。(p.238)

    (解説・佐藤優)宗教が衰退しているのは、死に対する意識が変化しているから、と私は見ている。葬儀を行わず、墓をつくらない人が増えているのは、死に対する意識の変化だ。
     生のみを追求して、死は無意味であるという発想は間違いだと思う。人間は必ず死ぬ。それだから、限界を意識し、充実した生を送ることができるのである。(p.274)

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    投稿日:2016.11.02

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