【感想】ハル回顧録

コーデル・ハル, 宮地健次郎 / 中公文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

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  • 主流の歴史観

    国際連合を作り上げ第二次大戦を勝利に導いた正統な歴史記録です。日本で出版されているものは日本バイアスがかかっているのだから、回顧録のようなアメリカ側の記録や、ソ連、イギリスの記録を読むことは歴史を知るうえで非常に大事なことだと思います。
    ド・ゴールへの冷たい評価と、ナチスドイツとの対決姿勢、イタリアへの懐柔、そして大日本帝国との交渉。History is spiltとは言いますが、もし、イタリアが懐柔に応じていたら、もし、大日本帝国が会戦を前提としていなければ、などと考えたことがあるなら、アメリカ側の資料を読むことによって歴史の避けられない厳しさを知ることができるのかもしれません。
    オバマ大統領が被爆地を訪問し、安倍首相が真珠湾の式典に参加した昨今、戦後の終わりを感じるのに当って、過去の過ちを考えるのによい回顧録です。
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    投稿日:2017.08.11

ブクログレビュー

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  • koochann

    koochann

    第2次世界大戦が始まったときの米国務長官ハルの回顧録は圧倒的な迫力だった。ヒトラーの台頭、それに対抗する英仏の不仲、米国の参戦を警戒する米国内の動き、仏ド・ゴールの微妙な動きへの警戒、米大統領選挙でのルーズベルト3選(1940年)、4選(1944年)へ向けての動き、日本の不穏な動きの情報把握と真珠湾への予感、そして米時間12月7日(日)の朝。1994年から早くも始まった独日敗戦後への主導権争い、対面し、握手をしたスターリンの印象。ハルの病気引退、ルーズベルトの死。80年ほど前の歴史的な政治の裏幕が、歴史の謎解きのようにドラマティックで面白い。現在の米国の政治と連続線上にあり、「さもありなむ」と理解できる一方で日本の位置付けが全く正反対になっていることだけは不思議な感覚に感じられた。続きを読む

    投稿日:2020.10.11

  • shimu2

    shimu2

    [質朴と献身と]第二次世界大戦期のほとんどを国務長官として務め上げ、国際連合の設立や連合国の指導に大きな役割を果たしたコーデル・ハル(日本においてはいわゆる「ハル・ノート」でよく知られる人物です)の回顧録。ルーズヴェルト大統領との関係や英・ソを含めた各国首脳とのやり取り、そして世界におけるアメリカの指導力について詳細に語られています。訳者は、アメリカに関する多くの論文や翻訳作品を残された宮地健次郎。原題は、『The Memories of Cordell Hull』。


    時代の分水嶺に主導的役割を果たした人物の回顧録なので、興味深くないわけがない。「ハル・ノート」の作成、真珠湾攻撃の伝達や「無条件降伏」に関する各種の反応はもちろんのこと、戦後急速に関係が冷え込むソ連との「蜜月」、特にスターリンに寄せた信頼など、今日から振り返ってみると示唆に富む内容が盛りだくさんでした。また、本書から受けたハル氏の印象は、質朴であるとともに手続を重んじ、自らの分をわきまえる外向的な理想主義者といったところでしょうか。

    〜私がモスクワ会談で考えていたことは、全世界にわたる征服と支配の計画を持ち、野蛮な手段を行う強力な独裁者が現われるに至った現在の事態に、世界は思いきった処置をとらねばならぬ、ということを強調することであった。こういう世界の無法者は、彼らが世界の罪のない民族を簡単にかたづけたと同じように簡単にかたづけるべきだと私は考えていた。〜

    双方向の視点を獲得するためにも☆5つ
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    投稿日:2016.06.08

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