【感想】ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密

トマス・H・クック, 駒月雅子 / ハヤカワ・ミステリ
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 3.2
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  • 猟奇殺人マニアの為の必読書

    ハンガリーの血の伯爵夫人エリザベート・バートリや、トム・ロブ・スミス著「チャイルド44」のモデルであるロシアの殺人鬼チカチーロ、また、フランス、オラドゥール村におけるナチスドイツの大量虐殺など、歴代の血生臭い事件の挿話が随所にちりばめられ、猟奇殺人好きには、垂涎の一冊です。親友の死の謎を突きとめる為、主人公が実際、各場所へ趣くのですが、物語の進行と共に、それぞれの殺人事件の禍々しい雰囲気が色濃く漂って、
    クック特有の精神世界へ、どっぷりとハマって行ってしまいます。
    ただ、最後に暴かれる肝心の真相が以外にもありきたりで、少し、期待外れの感が残りました。
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    投稿日:2014.05.21

ブクログレビュー

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  • birdboy

    birdboy

    人生には決して取り返しのつかない瞬間がある。その瞬間のために心に空いた闇を埋めようとしたが叶わなかった男。終始漂う絶望感。今作は結構読むのが辛かった。

    投稿日:2016.01.20

  • Menina

    Menina

    「子供は戯れに蛙を殺すが、蛙は真剣に死ぬ」
    随所にさりげなく織り込まれた言葉が、真相がわかったときに突然意味を成してくるのがクックの作品。

    これまでの作品同様、主人公がどうしても腑に落ちない事件を掘り起し、少しずつ過去が明らかになってくる。そしてまた、主軸に父と息子があるのも同様。

    ただ、以前と比べて謎解きと意外さの面白さは影をひそめ、ミステリとはいえども文学的要素が強くなってきている。それはこの前に読んだ『キャサリン・カーの終わりなき旅』でも同様。

    丹念に織り込まれたタペストリーの糸を少しずつ解いていくようなクック作品、今回も満足はするにはしたのだが、好みは、と言われればもう少し前の作品のほうが好き。

    そうは言いつつも、未読の作品をまた見つけたら読まずにはいられなくなるはず…。
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    投稿日:2015.03.31

  • korosk

    korosk

    ザックリあらすじ。
    主人公フィリップのかけがいのない友で作家ジュリアン・ウェルズが突然自殺した。
    友が何故自殺したのか、どうすれば友を救えたのか、フィリップはジュリアンの自殺の謎を解明するべく彼の足跡ををたどる旅に出る。
    やがてジュリアンの若き日の罪が探り出されていく。キーワードとなるのは、「子供は戯れに蛙を殺すけれども、蛙は真剣に死ぬ」

    時折でてくる詩的な表現がとても美しい。
    ジュリアンの書いた小説は実在の殺人者達の物語。とても残酷で実話だけに、心に迫ってくるものがある。
    それが彼の心の中の暗闇が深い事を象徴しているようだ。
    とても良くできているが、一気に読む感じではない。はっきり言って、ちょっと「こ難しい」感が拭えない。
    物語全体に静かで冷たい空気が流れているような感じ。
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    投稿日:2015.01.29

  • シュン

    シュン

     トマス・H・クックは、人間の内面に旅する物語が多いせいか、空間よりも時間を縦に穿孔してゆく作品が多い。それも鋭い鋼のメスでではなく、浸透する雨垂れの一滴一滴で、静かにしっとりと穿ってゆく文体で。

     なので本書の内容には驚かされた。クックという、心を描くことでファンを掴んできた作家が、このように歴史や国や時代としっかり結びついた長大なスケールの物語を書いたということに対して。初めての試みに巨匠と言われる作家が取り組みを見せたことに対して。

     そう言えば『キャサリン・カーの終わりなき旅』においても、この作家は神秘的ともオカルト的とも取れる新種の作品を書いて我々を驚かせたのではなかったか。今、この巨匠は徐々に自らの可能性を拡大しようと試みているのかもしれない。

     本書は、親友である作家が、ボートの上で両手首を切って、穏やかでありながら、しかし決然と、自らの命を絶ったことから始まる。親友の死を止められなかったことを悔いてやまぬ主人公は、彼の作品を通じて舞台となった場所に彼が求めてきたものに死の謎を見定めようと長い旅を始める。まさにジュリアン・ウェルズの人生をなぞる親友の旅である。

     しかし、亡き親友は、世界中に残虐な事件を追いかけ、インタビューし、それらの残虐さと救いのなさを書き綴るものであり、その傾向にはエスカレートすら見られる。なぜ彼がそうしたものに惹かれていったのか。謎は深まるばかりであるが、一人の行方不明となった女性を彼が追いかけていたという事実に、主人公はついに辿り着く。

     その女性の生涯こそが、スパイ疑惑、裏切り、ゲリラ組織などの渦巻く南米のカオスの中にあったことで、この小説はスケールを大きくしてゆくのであり、それはこれまでのクックには全くと言っていいほど見られることのなかった舞台であり世界である。

     それでも文体は明らかにクックならではの緻密に織り込まれたタペストリーのような精緻さであり、その読書的味わいは少しも損なわれることがない。今後、クックという作家がどこへゆくのか、との高まる興味と期待に胸を弾ませているのは、おそらくぼくだけではあるまい。
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    投稿日:2014.10.27

  • たまもひ

    たまもひ

    うーん、積み重ねられる心理描写を、「繊細で丁寧」と見るか、「冗長」と見るか…。最後まで引っ張られる謎も、牽引力があるような、思わせぶりが過ぎるような。

    クックって私にはちょっと困った作家だ。いろいろ文句をつけたくなるのに、目にすると読んじゃう。で、中途半端な気持ちになる。我ながら不思議。続きを読む

    投稿日:2014.04.16

  • garbo

    garbo

    共有した時間を元に、作家の人物像を懐かしく語っているが、旅が進めば進むほど作家の意外性がクローズアップされ、友情に対する価値観が徐々に揺らいでくる。この辺りの微妙な心理の変化は、ミステリというよりは、純文学のヴェールをまとった雰囲気がある。

    ささいなきっかけから人生が流されていく皮肉さを描く手腕はクックの真骨頂だが、本作品は、追想の旅がいつしか探偵劇に変貌していく展開が秀逸で、ゆるやかに進行しつつもプロットは緻密。読後、振り返ればミステリだと認識できるが、読書中はそういう意識は薄いので、退屈さを感じる時間の方が多かったかな。

    「子供は戯れに蛙を殺すが、蛙は真剣に死ぬ」、「善とは悪の極めて巧妙な変装である」──この印象的なふたつのフレーズが真相なのよね。
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    投稿日:2014.03.16

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