【感想】この世の彼方の海

マイクル・ムアコック, 井辻朱美 / ハヤカワ文庫SF
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
3
2
2
0
0
  • エルリックサーガとローマ帝国的価値観

    エルリックは極め付きのストア主義者であり、かなりの部分がローマ帝国皇帝の酷薄さと美しすぎるラテン帝国の残滓を映し出しているように思います。
    それにしても、エルリックはもてますねえ。
    後世に生きる我々としてはエルリックの末裔たちによくフィクションでお目にかかりますが、実際どうなんでしょうか、皇子でかっこよくて病弱で酷薄、誠実、気まぐれときていますが。
    あるいは、エルリックのモデルはイギリス病に苦しんでいたかつてのイギリスジェントルマンを風刺しているのかもしれません。
    それにしても、エルリックはもてますねえ(笑)。
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    投稿日:2016.10.05

  • 第一部の終幕と第二部への幕開け

    メルニボネの滅亡による第一部終幕とも言える、エルリック・サーガ第二巻です。
    エルリックに最初の悲劇が訪れます。
    陰鬱な世界観と悲劇が描かれますが、不思議と後味の悪さのような読後感はありません。
    主人公が人間ではないからか、世界観があまりに現実場離れしているからか、読み物として楽しめます。続きを読む

    投稿日:2014.06.17

  • <夢見る都>から全ては始まりました

    本巻にはエルリックサーガの最初のクライマックスである、<夢見る都>が含まれています。エルリックは従兄弟のイイルクーンに再び裏切られ、ぶち切れてイムルイルを滅ぼしてしまいます。イイルクーンを血祭りに上げ、思わずサイモリルまでもストームブリンガーの贄にしてしまいます。ここでエルリックの救われぬ人生が定まってしまいました。逃げるときに大量の新世界の味方まで見殺しにしちゃったので、メルニボネの住人のみならず新世界の人間にまで嫌われてしまうのです。

    ムアコックはストームブリンガーとエターナルチャンピオンの構想を、最初からキッチリ設定していたわけではないようで、エルリックシリーズが進むにつれ、ストームブリンガーのキャラが立って行きますし、多元世界や法と混沌の永遠の闘争といったアイデアが示されていきます。ストームブリンガーは登場の時点ではモーンブレードと同等の始終不気味にうなる魔剣程度のあつかいでした。ストームブリンガーは抜いたら最後、誰かの魂を啜らずにはおれない、しかも親しいものならなお良いという恐ろしい性質がありますが、徐々に目立つようになります。そして、この世の彼方の海では、コルム・エレコーゼ・ホークムーンとエルリックという、4人のエターナルチャンピオンが揃って戦います。人気の無いエレコーゼですが、自分は好きなのでちょっと嬉しい。

    あとは、エルリックはサイモリルを殺しちゃったことをいつまでも後悔するんですが、そのわりに毎回女性キャラとねんごろになります。イイルクーンを信じて(サイモリルを始め、側近は反対していた)国を任せちゃったこともそうですが、エルリックちょっとアホなんでは?とよく思います。

    本巻は長編、中編、小編、小編がまとめられた本なので、少しコメントを書いておきます
    ・この世の彼方の海
    長編です。4人のチャンピオンが戦うエピソードがあり、その後、禿頭のスオミーガンと出合います。二人で窮地を脱した後、サクシフ・ダンに半ばはめられてルクレン・アを冒険することになります

    ・<夢見る都>
    有名なエピソードです。サイモリルが結構あっさり死んじゃうのにビックリ

    ・神々の笑うとき
    シャーリラとともに「死せる神々の書」を探索します。ムーングラムが登場。ムーングラムはたしか、最後までエルリックに同行します。ダルジの猟犬とか、霧の巨人とか、印象的な敵が出てきます。シャーリラが書を求める理由と、クライマックスのしょぼさにビックリ

    ・歌う城砦
    イシャーナ女王が出てきます。あとパン・タンの魔術師が出てきます。珍しく、アリオッホがカッコイイです。あと、エルリックとイシャーナが鍵のかかった部屋で一晩睦みあうわけですが、その隣の部屋で一晩中待ってたムーングラムに涙を禁じ得ません
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    投稿日:2014.07.27

ブクログレビュー

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  • こまいぬ

    こまいぬ

    このレビューはネタバレを含みます

    再読。


    こんな早い段階でアベンジャーズ的な話が来ることに驚く。
    そして悲劇も早めにやって来る。

    エルリックはシニカルな割には人を信じ過ぎてしまうあたりが複雑すぎる性格。またはお坊っちゃま気質というべきか。
    相棒には恵まれるのもそんな複雑な性格のおかげ?


    この巻の解説にさらっとネタバレされた気がするが気にせず読み進めていこう。

    ささ、次巻へ。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.05.10

  • 佐々木葵

    佐々木葵

    エルリックサーガの二冊目。
    メルニボネを後にして旅を続けるエルリックとストームブリンガーの冒険が描かれている。

    このシリーズは異次元の平行世界でも同じような冒険が行われているという設定があるらしく、ここでその設定が初めて現れる。
    ある国の海岸で今にも死にそうになっているエルリック(いつものことだが)の前に、船が現れる。その船には数人の戦士が乗っており、その戦士たちとともにエルリックは戦うことになる。その戦士たちの中に「お前にあったことがある」という戦士がいる。それが、平行世界の設定の一幕。

    そうやって戦い続けるエルリックが、とうとうメルニボネに帰る時がやってくる。
    それは彼にとって残酷で冷酷な現実をつきつけることになる。

    そのワンシーンを読んで、「えっ!?」と声を上げてしまった。

    詩的で想像力をかきたてる文章や読者をひきつける魅力があるシリーズ。
    続きを読む

    投稿日:2015.07.25

  • 青海

    青海

    二巻になると筆がこなれてきたのか、単に私がペースアップして読めたのか、さくさく楽しく読めた。
    舞台が多重世界含めて広がったので、紡がれるストーリーにも深みが出た気がする。
    サイモリルはもう少し描写が多くても良かったなー。続きを読む

    投稿日:2012.02.09

  • 松倉東

    松倉東

    解説で詳しく説明されているが、この巻の最初に収録されてある「この世の彼方の海」はエターナルチャンピオンシリーズの設定を飲み込んでないと辛いかもしれない。
    この話は読み飛ばしても結構なので、次の<夢見る都>をどうぞ。続きを読む

    投稿日:2010.06.12

  • kiyosi

    kiyosi

    『この世の彼方の海』
    スパイ容疑をかけられ逃亡するエルリック。途中乗り込んだ船で出会ったエレコーゼ、コルム、ホークムーンの永遠のチャンピオンたち。未来への冒険。アガックとの戦い。海賊との戦い、新たな味方スミオーガン。メルニボネの貴族サクシフ・ダンの時を超えた恋と呪い。アヴァン・アストランの冒険。襲いくる謎の生物。アリオッホの求めた犠牲。

    『夢見る都』
    イイルクーンの裏切りにより「竜の島」が乗っ取られ愛するサイモリルは魔法をかけられる。スミオーガンなど新王国の軍勢を率いて攻撃を開始するエルリック。破壊される永遠の都。

    『神々が笑うとき』
    「死せる神々の書」を探す女シャーリラ。ムーングラムとの出会い。

    『歌う城塞』
    ジャコールの女王イシャーナの要請で城塞のい挑むエルリックとムーングラム。イシャーナの恋人魔術師セレブ・カーナの陰謀。城塞を支配する混沌バロとの戦い。

     2010年6月1日読了
    続きを読む

    投稿日:2010.06.01

  • ヤバラッコ

    ヤバラッコ

    文庫新刊コーナーにあったのでびっくり。再編成(編集?)本のようで昔より分厚くなってました。アンチヒーロー物として発想された小説。皇子だけどひ弱く、魔剣をもつときだけ元気。コルム・ホークムーン・エレコーゼとあわせてエターナルチャンピオンシリーズを構成し(キャラはエルリック、話はコルムが好きです。「紅衣の公子コルム」サーガを幾度読み返したことか)、大団円を読み終わった後、私はもうファンタジーを読めなくなってました。大団円後もエルリックサーガは英国で新刊が出つづけ、そのため今回の再編成本刊行になったようです。80年代日本のヒーローファンタジー物に多大な影響を与えてるとおもいます。続きを読む

    投稿日:2006.05.17

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