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上田早夕里 / 光文社文庫 (94件のレビュー)
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総合評価:
Shuttle0131
5
苦しむために陸に上がる。重力を耐える。百目の前日譚もあり…。お買い得かも
最後の話は、華竜の宮に繋がる短編です。人の物語はやはり自然の中が映えます。そして特に人は海から生まれ、海に還ります。その本能がそうさせるのか、海から陸へ上がるときの苦しい選択がなぜか切ないです。重力を…まともに感じる瞬間です。そしておそらく、人は宇宙から生まれ、宇宙に還るのでしょう。世間の重力から解放されるために。社会の痙攣から逃れるために。「華竜の宮」も是非読んでみてください。 [追記] 「妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街」に繋がる短い話もあります。話が中途半端だなとは感じていましたが、正直、この話がシリーズになるとは思っていませんでした。妖怪好きの私としては、この展開、期待持てます。 で、結局この本、意外とお買得になりました…。続きを読む
投稿日:2013.09.25
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にゃんちゅう王子
3
不思議な哀愁を漂わせる短編集
短編集です。 舞台は大半が海に覆われた地球だったり、毒キノコに占領された街だったり。 その異常な状況と戦い正常化させるようなストーリーではありません。 そこに暮らす人の、本能として持っている愛がテーマ…です。 「愛」というより”思いやり”の方があたっているかも・・・ ですから読み終わるとジワッと胸に哀愁感が漂います。 物語的にはなにも進展,決着していないのですが・・・ 完全決着,納得型SFを好まれる方には中途半端、もしくは予告編的な小説として解釈されてしまうかも。 遠い未来、「そう言えば昔こんな人を見かけた。」的な物語りかな。 最後の「小鳥の墓」は短編ではありません。 書き下ろし中編です。そのため主人公の心の描写がかなり現実的に細かく描かれ、他の作品とはタッチが異なります。 管理された理想郷に馴染めず、反発してゆく主人公。 ラストは驚かされました。 社会ってヤッパ怖いなーなんて・・・・ 個人的には「小鳥の墓」より他の短編作品の方が好きです。 続きを読む
投稿日:2013.12.03
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2
魚とロボット、どちらがより人間か?
SF作家、上田早夕里氏の短編集。表題作の「魚舟・獣舟」は、陸地の大半が海水に飲み込まれてしまった世界が舞台。人々は、人間の遺伝子を元にして生まれた魚舟という、十数メートルもある巨大な魚の背に乗って生活…し、僅かに残った陸上では、人間そっくりのロボットが使役されています。人の遺伝子を持った異形の生物と、人間と瓜二つのロボット。果たして人とは何なのか? 短い短編ながらも読み手の心を揺さぶる物語です。本書に収録されている「真朱の街」では、科学の発達した未来都市に住む妖怪たちを描く怪作。上田早夕里氏の持つ独特な世界が味わえる1冊となっています。(スタッフI)続きを読む
投稿日:2013.09.20
saori
もっと詠んでいたい
短編集。全編とも質は違うものの、湿度が高く生き物の臭いが濃厚かつ文明も高度に発達した世界が舞台。それぞれの世界が魅力的で、もっとこの世界がどんなふうなのか読んでいたいのに、短編なのであっさり終わってし…まうのが残念。世界としてはそれぞれ違う方向へ発展し問題を抱えているものの、人間は本質的にかわらなかったようで突飛な展開もなく物語としては安心して読めました。続きを読む
投稿日:2013.09.27
まさし
ドライでハードボイルド
全編共通するのは、あまりハッピーとはいえないキャラたちが主人公ということ。 でも視点はキャラクタから一歩引いた距離感が保たれているので、ハードな内容でも重くなく、ドライでハードボイルドな印象。この淡々…とした調子、嫌いじゃない。続きを読む
投稿日:2014.03.30
レビューネーム未設定
1
SFの仮面を被ったミステリーやホラーの短編集です。
表題作は双子の片割れを躊躇なく殺すであろう男と、双子の片割れに躊躇なく殺された女の話しで、それ以降も死んだり殺したりでワタシの好きなタイプではありませんが、心に引っ掛かるものが微妙にあったので読了しま…した。 でもSFに絶対必要だと思っているセンスオブワンダーが感じられなかったのでこの作家の他の作品は読まないでしょう…。続きを読む
投稿日:2013.09.24
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もー
このレビューはネタバレを含みます
表題作は最初の33ページ。この作品だけでも良いと思い買った。 華竜の宮を読んでいるので世界観や背景は分かっている。火薬で魚舟を傷つけるところは「ああ・・」となった。獣舟が進化する描写も良く、買った甲斐があったと思った。 華竜の宮では見られなかった魚舟に対するドライな感情を持った人物が主人公であったので、共感する部分があった。遺伝的にイジられているとはいえ「皆が皆魚舟に執着するわけでは無いだろう」と思っていた違和感が払拭された。 他の作品を読んでからでないと分からないが、この作者の作品はいつも悲しい。物語の背景に悲しさや寂しさが濃淡を変えながら漂っている様に感じる。 解説には「傑作(短編)選」や「その年の最高の短編」の文字があるが、これが誇張ではないと感じる。 どの作品もバイオサイエンスを強固な基盤としているのだが、第二軸として人間の心理やファンタジーを絡めることで驚くような広がり、多様さを感じる。 それでも読んで感じる雰囲気は一貫しており、(作品の幅を持たせるために)無理に要素を追加している感じはせず、作者の度量、手腕に感嘆する。 最後の書き下ろし中編では心理描写の巧みさに舌を巻いた。異常心理でありながら共感してしまうような描写に、思春期のエネルギーや心の揺らぎ、賢い主人公を完全に包括する社会実験の枠組み。SF作品であるが、そう分類したくないほどに強烈な人間の描写がある。この作品はSFを描画不足の隠れ蓑にしていない秀作であると感じた。
投稿日:2024.03.24
あしげ
短編集 どれも、読みやすくおもしろい。 オーシャンクロニクルシリーズである表題の「魚舟・獣舟」は短いながらも世界観、物語の奥深さを感じる傑作。 「真朱の街」これは別で3冊シリーズ化している妖怪探偵・…百目の始まりの物語。個人的に、人ではない異形の物語にひかれるのでかなりおもしろかった。シリーズ化したものも読んでみたい。続きを読む
投稿日:2024.01.22
kikko999
ずっと気になっていた上田早夕里さんのオーシャンクロニクル・シリーズ。いきなり「華竜の宮」といきたいところだけど、まずは順番通り中短編集の本作から。とは言えリンクするのは表題作の1編だけ。ほんのさわりだ…けという感じながら、陸地の大半が水没した未来の地球を舞台にした独特な世界観は味わえた。他も妖怪探偵シリーズに繋がる「真朱の街」、デビュー長編「火星ダーク・バラード」の前日譚という読み応えある中編「小鳥の墓」、ゾッとするバイオ・ホラー「くさびらの道」など粒揃いで、様々な形態のSFを楽しめた。続きを読む
投稿日:2023.06.03
そうま
魚舟 ウォーターワールドみたいな世界。プラス、人が魚に進化?する。海と陸で生きるものの葛藤みたいな。。 壮大だけど、初期設定が広大過ぎてまとまりがない気がする。 くさびらの道 九州に真菌感染症が発生。キノコが生えて死者多数。 近い人を見せる菌の成分で被害拡大。 饗応 AI ロボットの束の間の休暇。 真朱の街 子どもが妖怪に拐われて百目鬼と探索。 ブルーグラス 海に沈めたドームグラスを探しに行く。 小鳥の墓 未来。教育特区に馴染めず外の世界に染まる少年。最後は殺人を繰り返す。 総じて初期設定は面白い。ただ、人間の残念な所は変わらない、、なんか後味が悪い。 読んじゃったけど。
てっちゃ
不思議な非現実的なストーリーの世界観であり、一方で説得力のある内容であるため、読み終えた後になんとも言えない満たされない気持ちが残る笑(読めば共感してくれるのではと)。読む中で、ストーリーの背景・設定…にあるメッセージ性を強く感じた。個人的には、作者の思いをあまり感じず、考えずに、ストーリーの世界を想像しながら読みたい派なので、ここは好みが分かれる気がしたが、読み応えがあることは間違い無く、評価も高いことも納得。続きを読む
投稿日:2023.06.02
kickarm
魚舟の世界観、足りない!! 「オーシャンクロニクル」シリーズの最初の1冊 関連するのは「魚舟・獣船」だけで、他は別なSFで全部で6編が入ってます。 「魚舟・獣船」★★★★(ストーリーは出来てて、あえ…てこのシーンを初出しで使ったんだな。作戦成功ですね。) 「くさびらの道」★★★★★コロナ禍で身につまされる。 「饗応」★★★★疲れたAIの話 「真朱の街」★★★妖怪の話 「ブルーグラス」★★★★近未来の黄昏 「小鳥の墓」★(この文庫の約半分がコレですが退屈で、途中で止めた。) でした。続きを読む
投稿日:2023.02.03
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