【感想】新装版 マックスウェルの悪魔 : 確率から物理学へ

都筑卓司 / ブルーバックス
(36件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
10
10
8
1
0
  • マックスウェルの悪魔が奏でるエントロピーの騒がしさ。

    人は反エントロピーを生産しているらしい。宇宙が増大させるエントロピーに反抗する数少ない知性体らしいが…。
    ボルツマン、ギブス、アインシュタイン、ボース、フェルミ、ディラック、シャノンとエントロピーと統計は発展をとげ、熱、化学、量子、情報と様々な分野に必須のものとなっている。
    永久機関は成り立たないし、人類はエントロピーの増加で滅びる可能性があるらしい。
    あまり、夢がある未来には思えないなあ。
    マクスウェルの悪魔がいて永久機関が成り立って、反エントロピーが本当にあれば…、どうなるんでしょうねえ?
    実際は永久機関が無いのだから、この宇宙に永遠のヘブンは無いし、人類はいずれ滅んでしまうということでしょうか?
    こういった柔らかくそれでいて奥の深い一冊はよいものですね!
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    投稿日:2016.03.06

  • 都筑卓司さんは現代物理の宣教師

    中学生の頃、都筑さんの書かれたブルーバックスはすべて、むさぼるように読んだ。そう、中学生でも十分に読める内容。都筑さんは、身近な例や物語を用いて高度な内容を易しく説明する天才なのだ。
    ちらちらと数式も出てくるけれどそれは味付け用のスパイス程度。氏の著作群は基本、現代物理の考え方をわかりやすく紹介する意図で書かれたものなので、気にせず気楽に氏の文章を楽しめればOK。
    特にこの「マックスウェルの悪魔」は名著である。
    永久機関、ミクロとマクロ、時間の向きとは?
    氏の巧みな文章が、日常に沈滞したあなたの想像力を最大限に刺戟します。
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    投稿日:2014.03.26

ブクログレビュー

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  • ISSP Library

    ISSP Library

    物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
    東大OPACには登録されていません。

    貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
    返却:物性研図書室へ返却してください

    投稿日:2023.12.15

  • Kazu

    Kazu

    夕もやにかすむ街はずれの空地、くさりかかった丸太や、土管が乱雑に並び、掘り返しの穴には水がたまって、垣根の竹が汚水の中に落ち込んでいる。
    ……
    と、ある傾きかけた家の台所で、坊やが泣いていた。
    ……
    あかりもない台所はすでに薄暗い。まもなく坊やの父親も、一日の仕事から帰ってくるだろう。
    ……
    さきほどまで物干し竿の洗濯ものを動かしていた風も凪いで、あたりは気味の悪いほど静まりかえっている。
    ……

    このような文章が出だしから数ページ続く。物理学の本だというのに!
    そうだった。久しぶりの感覚だ。これが、都築卓司さんの BLUE BACKS だ。
    今回は、どんな世界に連れて行ってくれるのか、とワクワクして読んでいた昔の自分に戻ったような気分になった。

    熱は熱いものから冷たい方向へとしか流れない。
    この熱の一方通行性という確固たる真理を打ち破るべく、マックスウェルの悪魔は登場する。

    分離から混合の方向へ移行するのを、エントロピーの法則とよぶ。
    100℃と0℃の水を混ぜると50℃で安定化する。50℃の水が100℃と0℃の水に分離することはない。
    エントロピーは時々刻々に増大していく。

    熱の一方通行性、つまり現象の進行があるうちは時間が存在する。
    今は太陽や地球が分離した状態にあるが、やがて混合する。
    宇宙の全てが混合し均一化すると何も起こらなくなり、時間の存在や向きという概念も怪しくなり、エントロピーに変化がなくなる。

    エントロピーとは、でたらめさかげん、複雑化、多様性、平均的なものへの推移。

    生物の遺伝のからくりや人間が作り出す様々な物は、混沌から秩序を生み出しており、エントロピー増大の法則に反している。
    マックスウェルの悪魔は人間の中に宿っているように思える。

    地球温暖化は山火事や巨大台風などを起こし、人間を含む生物が作り出した秩序あるものをぶち壊している。
    エントロピー増大の法則に反していると考えられる人間は、地球という単位で考えるとエントロピー増大の速度を速めることに貢献している。

    池谷裕二さんの「生きているのはなぜだろう。 (ほぼにちの絵本)」を読んだ時と同じような気持ちになった。
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    投稿日:2022.11.19

  • White phoenix

    White phoenix

    上手くたとえ話を交えながら書かれているのでわかりやすい。自由エネルギーとエントロピーの関係のイメージを掴むのに良い。(ただ平和鳥の原理は結局よくわからなかった。)

    最終章は物理だけの話ではなく人間社会へと話が及ぶ。情報の爆発により人間が滅亡する話は2021年に読んでも説得力があり、本当にそうなりそうに感じる。把握・判断すべきことに溢れすぎている現状を打開するにはやはり判断を機会に委ねるしか無いのか。

    久保亮五先生の人類滅亡時期の予言に関するエピソードはボルツマンを彷彿とさせた。
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    投稿日:2021.09.19

  • fanta

    fanta

    こちらからあちらに下がっていくことはできるが、あちらからこちらに上がってくることはできない。

    これが現実だ。


    できることとできないことを認識すること。現実を捉えるとするならば、このことを自覚できている、その状態こそが最も必要な手段になることを、それこそ、自覚できるようになる。

    統計から物理学を構築するという方法が、全体として、構成する原理を指し示すことができる。それは、部分としての現実と必ずしも繋がることなく、現実を引き寄せることができるという事実を形に為した。

    もっと身近な話をしようか。

    ぼくたちはいつも間違える。すぐに間違える。必ず間違える。間違えることが常態であって、間違えないことが正しいことではないからだ。だから、間違えたことを掴まえることが真っ先に大事になることは、それこそが間違えてはならないことだとだれもが理解しているつもりだ。だが、間違えたときにこそ、間違えない振る舞いをすることが、ほんとうに難しい。ほとんどがそうはなることができない。つまり、エントロピーが増大するしかないことがここでも表れている。エントロピーは増大する。エントロピーを物理学の、統計力学の、情報学の小難しい理論だとしてしか捉えないことが、物事が一方向にしか立ち表れることができない力を示している。

    間違えるものとして、間違えることを前提に、自らを、社会を捉える。それは全体を掴まえることができる、という力になる。エントロピーという概念が生まれてきたことは、そのことにおいてこそ、理由があるんじゃないかと映ってくるんだ。

    間違えたときにこそ、立ち止まればいい。振り返ればいい。もう一度考えてみればいい。たったそれだけを振る舞うことができれば、下っていくことしかできない、落ちていくことしかできない、自分を立ち直らせることができる。踏み止まらせることができる。同じところに戻ることは決してできないけれど、為らざるをえない自分なんてものに為らなくていい可能性が目の前に表れてくることになる。このことは、まるで物理則のように、とても簡単な「当たり前」の法則のように、ぼくには思える。

    でも、その法則が通用しない。法則は分かっているのに、それが自らのことにならないのが、この社会、この世界なんだと気づく。それはそれで、一つの逃れられない、物理法則なんだと証明されてしまっている。いまに、日常に、繰り広げられている状態に、それしか表れてこないことが、まさに「エントロピーは増大するしかない」ことと置き換えてしまっていいことなのかもしれない。


    自覚していたい。
    マックスウェルの悪魔なんていないとしても、自分は留まり続けよう。
    その意志だけはなくならない。

    乱雑に、膨大して、ちりぢりになっていく世界と、反対的に、可能性を固定化していく、ひとつに、部分に集合していくしかない人間の行き先に、いつまでもどこまでも、動かず動かされず、同じ場所に留まり続ける自分という悪魔で、居続けたい。

    ぼくの意思は、きっとそれができるものだ。
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    投稿日:2021.04.23

  • yoshidamasakazu

    yoshidamasakazu

    マックスウェルの悪魔

    身近な科学本レーベル ブルーバックス の真骨頂。

    宇宙の熱的消滅や人類滅亡は フィクションが過ぎる気もするが、自然の脅威 エントロピーと 救世主 マックスウェルの悪魔 という見方は面白い


    イメージしか捉えられないが
    エントロピーは
    *混合、一方通行性、全体主義化
    *情報量が増えていく様子、わからなさの度合い
    *エントロピーは増え続ける〜集団の中では 人間はエントロピーを増大させる


    マックスウェルの悪魔は
    *分離したり個別化したり
    *自然の流れを変える
    *エネルギーは持たないが、分子や原子の動きをコントロールできる


    エントロピーの法則
    *分離から混合の方向へ移行する
    *熱の一方通行性(熱いものから冷たい方向にしか流れない)〜温度差のあるニ気体が接触すれば 平均化する

    エネルギーを持っているとは
    *位置エネルギー(高い位置、引いた弓、伸ばしたバネ)
    *運動エネルギー(物体が走る)
    *熱エネルギー
    *電気エネルギー

    エネルギー保存則(熱力学の第一法則)
    *エネルギーは形を変えることはあっても、全体としての量は一定〜不変性を主張

    熱力学の第二法則
    *分離の状態はやがて混合の状態に追い込まれる〜移動の方向を示す
    *第二法則に対抗するのがマックスウェルの悪魔


    科学にマクロとミクロの学問区分があるとは知らなかった。「同一のものであっても、全体(マクロ)と個々(マクロ)では違う表情を見せる」という言葉は示唆的
    続きを読む

    投稿日:2020.08.24

  • ken23677

    ken23677

    純粋に物理の本です。マクスウェルの悪魔とは、エントロピーを減少させることができる不思議な悪魔です。

    たま~に「マクスウェルの悪魔の実験に成功」という記事を見ます。発電の分野などに関して夢のあるお話です。

    物理が好きな人には面白いと思います。
    続きを読む

    投稿日:2019.09.27

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