【感想】傷はぜったい消毒するな~生態系としての皮膚の科学~

夏井睦 / 光文社新書
(64件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
26
24
11
0
1
  • 湿潤治療を知りたいひとのために

     著者は、形成外科医としての経験から、傷の面を消毒してガーゼで覆うという従来の治療法に疑問をもち、水道水などできれいに洗ったあと、乾燥しないように創面を被覆材でおおうという湿潤治療を開発して、20年近く実績をあげておられます。この治療法は熱傷や褥瘡にも適応でき、ガーゼ交換の痛い思いをしなくてすむし、なにより、早くきれいに治るとのことです。
     本書には、実際の治療例が写真とともに示されております。また、なぜ湿潤治療がよいのか、消毒の歴史にも簡単に触れながら、わかりやすく理論的な説明がされております。説明されるといたって合理的と思われる湿潤治療ですが、たいていの医療機関では、湿潤治療ではなく、現在標準的とされている消毒とガーゼによる治療がなされております。あって欲しくはないですが、自分や知人がけがややけどをすることはありえます。そのような万が一のときににそなえて、本書を読んでおけば、適切な治療法を選択するたすけになります。
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    投稿日:2014.09.18

  • けっこう論理的

    少々くどくて独善的な語り口のせいかホントかいなと思うところもありますが、湿潤療法なんてなぜだかウチの会社の休憩コーナーにも張り紙がされていたし、常在菌の話など人体のトータルなバランスを重視する考え方は時代の流れかもしれません。

    なんで大腸吻合部を消毒しないでOKか(できるわけないのだけれど)なんて疑問を持った、著者の論理思考は分かりやすいです。創傷治癒機能が転用されて脳神経系ができたという仮説も面白く読みました。
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    投稿日:2014.02.09

  • ひどい

    何年か前、酷い靴ずれが出来た時に人に勧められて湿潤療法を試しました。
    確かに痛みが少なく早く治った気がしたので興味を持ち、読んでみました。

    湿潤療法の理屈は分かりました。
    が、冒頭からずっと「通説に疑問を持たず権威に追従する馬鹿な医者ばっかり」「自分はパイオニア」という記述で溢れかえっていて、うんざりします。
    また、必要とは思えない(かつ不適切な)例え話も多く、とにかく冗長です。構成にも疑問を感じます。

    以下のような、適切でなかったり的外れと思われる記述や乱暴な議論が多いです。読み進める気力が段々失せていきました。
    ・パラダイムの説明・紹介(「このように、根拠はないのにその時代の誰もが信じていること」[第5章ラスト]や第9章)
    ・新しい治療法に対し慎重な態度をとることを「道を歩いたら迷うかもしれないから歩かないほうが安全だ、という考えだと思う」[第4章第5節]
    ・ゲーデルの不完全性定理を紹介して「医学の問題を医学で解決するのはおかしいことになる」→「私は医学書も医学論文も読まなくなった」[第4章第5節]
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    投稿日:2014.09.05

  • 実際に怪我をして

    実際に真皮が剥がれるほどの怪我をして外科医に行ったら、この湿潤療法で治療してくれた。かなり深い傷であったので痕は残ったが比較的早く、しかも痛くなく傷がふさがった。本書の書き方にはかなり反感をかうような胡散臭いところがあるが、主題である湿潤療法は正しいようである。それにしても医学の常識はどんどん入れ替わってゆくのだな ということを実感した。続きを読む

    投稿日:2022.05.30

ブクログレビュー

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  • mysterymanbo

    mysterymanbo

    湿潤療法の生みの親、夏井先生の衝撃の書!
    切り傷や火傷なら、消毒液ではなく傷口の汚れを洗い流す「水」と傷口を覆う「サランラップ」と鎮痛効果が期待出来る「白色ワセリン」があれば、自宅でキレイにしかも短期間で治せるって話、貴方は信じられますか?
    何よりも治療前に半信半疑だった患者さんの傷口がキレイに完治した結果が治療法の正しさを証明しています。
    では、なぜ簡単で効果的な治療法があるのに医学界で共有されないのか。その理由についても多くのページを割いて解説しています。
    昔は、今では考えられない危険で治癒効果の無い瀉血療法や水銀療法などが当たり前だった時代が確かにありました。当時の医者もいくら治療しても病気が治らないどころか悪化したわけですから、無駄で間違ったやり方だという事は知っていたはずでした。では、なぜ効果の無い治療法を続けたのか?それは、患者が治療を欲したからと他の医者も広くやっていたからです。とにかく苦しむ患者のニーズに何とか応えたいという気持ちと、有効な治療法が見つからない中でそれが医者として処置出来る唯一の治療法だったわけです。みんながしていたから、それが正しい治療法だったというのが真相です。
    医学がこれだけ発展した現代ですが、近い将来、キワモノ扱いの「湿潤療法」が外傷医療方法の定番と認知される日を楽しみに待ちたいと思います。

    続きを読む

    投稿日:2023.03.12

  • さなさな

    さなさな

    傷の治癒過程やなぜ湿潤治療がいいのかについて分かりやすいのはもちろん、化粧業界のマッチポンプ、医療や科学のパラダイムなど、ここまで書いていいのかなと思うような内容どした。
    生物の進化の話で締めくくられているのもいい。お肌の常在菌大事にします。続きを読む

    投稿日:2022.04.09

  • ぽんすけ

    ぽんすけ

    ・2009年発行。著者は医者。
    ・消毒せず乾かさないと傷が治る(外傷の湿潤治療)。キズパワーパッド。白色ワセリンを塗ってラップする。
    ・傷のじゅくじゅくは最強の治療薬。浸出液(=細胞成長因子)を外に逃さない。
    ・情報は共有されてこそ価値がある。
    ・消毒薬はどうやって細菌を殺しているか。破壊のターゲットはタンパク質。人間の細胞膜蛋白も破壊する。
    ・根拠はないのにその時代の誰もが信じていることをパラダイムという。
    ・臨床医学はパラダイムだらけ。なぜなら人間の体はブラックボックスだから。
    ・ひとつのパラダイムから次のパラダイムに置き換わる現象をパラダイムシフトといい、科学の歴史には何度もパラダイムシフトが起きている。
    ・人間は常在菌なしには生きていけない。人体の全細胞数より腸管の常在菌の数の方が多い。
    ・皮膚や頭皮から分泌されるもので温水で溶けないものはない。石鹸やシャンプーは不要。
    ・化粧品は肌を老化させる。ほとんど乳化剤(界面活性剤)が含まれているから。皮膚常在菌に必要な皮脂が分解され続け、その代わりに栄養にならないクリームが覆っている。
    ・マッチポンプ=マッチで火をつけ火事になってからポンプで消す=裏で問題のタネをまき、問題が大きくなってから収拾を持ちかけて何らかの利を得る。ユーザー側の無知を前提にしている。
    ・ほとんどの皮膚の痒みは白色ワセリンをすりこむことで軽快する。
    ・皮膚を乾燥させるもの=クリーム、乳液、石鹸、ハンドクリーム、尿素含有クリーム(=界面活性剤を含んでいるため)
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    投稿日:2021.12.30

  • Matsueda Sosuke

    Matsueda Sosuke

    Kindleにて読了
    これは化粧品に関わるものとしてはきちんと考えなくてはならない内容だ。。科学的に言って化粧品の何が悪いのか、、この本の上ではあくまでサブ的な触れられ方だが。。

    投稿日:2021.09.02

  • なー

    なー

    このレビューはネタバレを含みます

    え、消毒って、過去の産物なの?
    確かに口内炎って消毒しないけど、化膿したことない。
    筆者は門前仲町の「なついキズとやけどのクリニック」院長であり、創傷被覆材「プラスモイスト」の開発者でもあり、超絶技巧的ピアノ弾きでもあるそうな。
    ワセリン愛好家としてはウンウンと納得できる話多し。
    あと、第11章の「脳は皮膚から作られた⁉︎」仮説が特に面白かった。神経伝達物質が元々は創傷治癒物質で、その特性がそのまま神経質伝達物質として適用されたってんである。あ、鎮痛剤が火傷の痛みに効かないってのも知らなかった。何気に重要よね?

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    投稿日:2019.12.08

  • たくわん

    たくわん

    p.54 さまざまな面で発達を続ける現代医学の中で、傷の治療の分野だけが19世紀の治療のままであり、そのことに誰も気がついていなかったのである。
    → ソフトウェア開発でも同じこと言えるかな?
    3層WebシステムとかメールとかDNSとかIPv4とかsyslogとか。。。
    問題意識があって刷新しようという試みが繰り返されてるけど、破壊的イノベーションまでには至ってないのよね。
    続きを読む

    投稿日:2019.09.29

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