コンクリート崩壊
溝渕利明(著)
/PHP新書
作品情報
高度成長期に大量に造られたコンクリート構造物は、建造後40年以上経とうとしているが、本当に安全なのか?アメリカでは1930年代に数多く造られたインフラが30~40年後に次々と崩壊し「荒廃するアメリカ」と呼ばれた。日本でも点検を怠ればその轍(てつ)を踏む恐れがあるが、なんと法律では点検は義務化されていないのだ。本書はコンクリート工学の専門家が、新石器時代まで遡ってコンクリートの歴史をひもときつつ、中性化やアリカリシリカ反応など鉄筋コンクリートの「病因」を解説し警鐘を鳴らす。特に塩害は要注意で、海岸に建てられた鉄筋コンクリート構造物の寿命は50年とも推測される。これらの危機に備えるべく、本書は維持管理のための「コンクリートドクター」の配備を提案する。さらに、JR東海の大規模改修や首都高速道路の大規模修繕についても取り上げる。
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商品情報
- シリーズ
- コンクリート崩壊
- 著者
- 溝渕利明
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2013.07.12
- Reader Store発売日
- 2015.02.27
- ファイルサイズ
- 13.9MB
- ページ数
- 248ページ
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この作品のレビュー
平均 3.2 (9件のレビュー)
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中国は3年でアメリカの100年分のコンクリートを使ったという
鉄筋コンクリートなしではインフラは成り立たないが高度成長期に作られた構造物が築50年を超え始めている。圧縮に強いコンクリートと引っ張りに強い鉄筋、しかもコンクリートそのものが鉄をさびから防ぐという素晴…らしい組み合わせだが、それでも老朽化は進む。最新のものでは鉄筋に錆び止めのコーティングを施し耐久性を大きく増しているそうだが既にある構造物は老朽化診断をされていないものが多い。
日本の橋梁は約15万あり内4万1千は1970年代までに作られた。東海道新幹線は東京ー大阪間515kmのうちコンクリート橋が148km、鉄橋が22km、トンネルが70kmありこれらを会わせると延長のほぼ半分に当たる。JRは予防保全工事の前倒しを発表しており工事規模は10年間7300億円になったと言う。首都高は主に鋼構造だが延長が300kmを超え全線の1/4が大規模修繕、更新の検討対象に上がっている。費用資産は7900~9100億円だ。さらに今後10年で新たに110km修繕対象が増え3200億かかる。高速道路(東日本、中日本、西日本)の長期保全計画は大規模修繕2兆円、大規模修繕に3.4兆円でこの修繕が更新に変わるとさらに5.2兆円追加になる。いずれも代替路線を手当てしないと修繕も進まない。さらに深刻なのが下水道で総延長44万km、50年超が1万kmになっている。硫化水素が発生するため検査自体ほぼ行われていない。ダムについてはそのものの崩壊は無いとしても堆砂のために機能が落ちているものは増えて来ている。
「コンクリートから人へ」の民主党政権を批判しているのだがこうなったつけは無計画に増やし過ぎたのも一因だろう。いずれにせよ公共投資の中心は新設から維持保全や更新に変わらざるを得ない。それでも修繕費が積上り人手不足で金も手も回らないと言う所が問題の様だ。続きを読む投稿日:2015.03.01
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コンクリートの性状について知るには良い書だが
コンクリートとは、いかなる材料であるかということをわかりやすく説明してある。コンクリートを専門にしている人間には当たり前であるが、素人には知られていないこと、たとえば圧縮に強く引張に弱いという性質や、…鉄筋と熱膨張係数がほぼ等しいといった物理的性質を記述することにより、理解を助けている。中性化や塩害、アルカリシリカ反応など、基本的なコンクリートの劣化システムについても記載があるなど、本書はコンクリートの維持管理上の問題点を網羅したように見える。コンクリート単体では長寿命たりえるが、鉄筋との出会いによって短命になってしまったというのも専門家以外にもわかりやすい、良い表現だと思う。
しかし、本書は冗長に思える箇所も多い。たとえば現在のコンクリートと古代コンクリートは組成が異なるのだから、紙数を多く費やす意味はほとんどない。
落橋の例として挙げている韓国の聖水大橋は鋼トラス橋、インドネシアのクタイ・カルタヌガラ橋も鋼吊り橋、ミシシッピ橋も鋼トラス橋、新潟の朱鷺メッセ連絡橋も鋼橋である。しかも、いずれも設計や施工のミスが指摘されている橋だ。コンクリートの劣化や維持管理とは少々趣の異なる話である。
民主党政権により土木事業の予算が削られ、維持管理費もおろそかにされたという指摘も、土木建設業に携わってる業界の人間としては怨嗟の声を上げたくなることだ。ただし、小泉政権の時から公共事業費が大幅に削減されているということは一言も触れられていない。大学の「土木工学科」が不人気学科になって「環境」とか「都市工学科」に名前を変えていったのはこの頃からである。
また、必要なことを書いていない。現場経験を重ねるにつれてわかることだが、コンクリートの劣化損傷原因の第一は施工にある。最も多いのが、鉄筋のかぶり不足。設計上は30mmあるはずのコンクリートのかぶりが数mmしかないという床版はざらにある。打ち継ぎ目の施工が悪いコンクリートには隙間が生じて水が漏れ、PC鋼材を防護するはずのグラウトがシースに充てんされていない。中空床版橋では円筒型枠が浮き上がって床版厚が薄くなっていたり、円筒型枠の下に空洞が生じていたり。
ポンプによる圧送のための加水については少し触れてあるが、こうした施工段階における問題点はほとんど指摘がない。
土木に従事している者にとって、自らの痛みを伴うことであるが、こうしたことも明らかにすべきである。
もっともらしく「コンクリートの寿命は50年」などと触れ回っている人がいるが、適切に施工されたコンクリートは本来もっと寿命が長い。コンクリートの専門書には「50年」と書いてあるものなど全くない。
2007年に国土交通省は「長寿命化修繕計画策定事業費補助制度要綱」を発表し、都道府県は5年、市町村は7年の間に点検調査を行い、長寿命化計画を策定すれば補助金を得ることができることとなっている。逆にこの計画を行っていない橋には補修の補助金が下りてこないので、各自治体は大急ぎで点検調査を行っている。5年毎の点検も義務付けられた。
こうした基本的な情報も記載がない。
コンクリートの調査・点検・補修設計のできる人間が極めて少ないのは事実であり、育成が必要であることには賛成だが、「コンクリートドクター」に関する論も粗雑なところが残念。重箱の隅をつつくようだが、コンクリート診断士の更新は本書では3年毎と書いてあるが、4年毎である。続きを読む投稿日:2015.06.10
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