はやおきさんのレビュー
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横道世之介
吉田修一 / 毎日新聞出版
様にならない、だけど心に残る
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バブル華やかなりし頃の東京、そこに大学進学ではじめて暮らす、長崎の片田舎の青年、世之介くんのお話です。
青春小説らしく、様々な出会いがあり、甘いロマンスや、悲しい別れもあり……、あるんですけど……、…これがどうにも、様にならない。
友人作りも何となくの成り行き、大学もサボってばかり、サークルはなぜかサンバのサークルで……あ、サンバは別にいいか。でも、サンバに打ち込むわけでもなく、やっぱりダラダラしてて、かっこ悪い。
主人公の世之介くんが、良く言えばマイペースな性格、悪く言えば相当なボンクラであるため、一般的な小説では盛り上がりそうな場面で、何となく間が抜けてしまいます。
何をしても、ズレているというか、締まらないというか……、のほほんとしていて、青春の悩みという深刻さがありません。いや、彼にとっては深刻なんでしょうけど、読むほうとしては、おいおい、しっかりしろよ、ってなっちゃう。
この主人公のキャラクター造形や、ストーリーの盛り上がりを敢えて抑えた筆致には、作者の丁寧な物語作りと、優れたセンスを感じます。
小説的なるものに入れ込みすぎず、程よいリアリティを感じさせてくれると思いました。
ただ、そんな怠惰な大学生の、何の変鉄もないながらも、そこそこ充実した毎日を読まされて、……くそ、ボンクラのくせに楽しそうにしやがって。なんて、イライラしたりもして(笑)
けれど読み進めるうちに、世之介くんのペースにだんだん取り込まれていくのがわかります。
そして最終章「三月 東京」、彼のカメラを通して、東京の姿が写し出されます。
それは、彼自身のように退屈で、格好いいところなんてひとつもなくて、本当、様にならないものです。
けれど、今の閉塞感に満ちた東京とも、当時の虚飾まみれのバブリーな東京とも異なる、新鮮で、暖かい景色です。
まるで世之介くん自身のような東京の姿というか。
この小説は「今」と「あの頃」、「地方」と「東京」、そして様々な人の生活が混ざりあってできています。
けれどそれら全てを見る目、世之介くんというフィルターを通して写る「世界」は、楽天的な優しさに満ちていて、いいなあ、なんて思いながら、泣きそうになってしまいました。
続きを読む投稿日:2013.10.04
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スマホ中毒症 「21世紀のアヘン」から身を守る21の方法
志村史夫 / 講談社+α新書
読む価値なし。金返せ。
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まず、タイトルにある「スマホ中毒症」ですが、筆者の造語です。
何をもって中毒とするのか。具体的な説明はありません。
なぜ「アヘン」に例えられているのかも、最後まで読んでも分かりません。
つまり、タイ…トルと本文の内容は、一切関係がありません。
では、どんな内容なのかというと、どうやらテクノロジー批判、IT文明批判のようです。
「ようです」とつけたのは、この本の驚愕すべき無内容さ、知識人が書いたとは思えない、非論理的な文章のせいで、論旨を把握することが困難だったからです。
「ケータイの予測変換で浮気がバレる!心当たりの方は要注意!」
「ITが進歩すると人間が退化してスーパーのレジが混む!」
「文明人は免疫力が低下しているのでO157などの食中毒にかかりやすい!」
このようなトピックが、特に脈絡もなく並べられ、読者の理性と寛容と忍耐力を試します。
一事が万事、この調子で展開され、特に中盤以降は、ITすら関係なくなります。
「さとり教育の若者は草食系」と批判した口で「足るを知ることが大事!」と鼻の穴を膨らませたり、寅さんが好きだといって寅さんの話をしだしたり、ブータンは幸せの国と褒めてみたり、旅の良さを語り、ふと山村暮鳥の詩を思い出して載せてみたりとやりたい放題。
例のダライ・ラマの言葉と、3.11についてのとってつけたような考察も加わって、数え役満といった雰囲気です。
要は、科学的、社会的な知見などまるでない、居酒屋の政治談議にも劣る無根拠な愚痴の本です。380ページの愚痴の束です。735円する愚痴のデータです。
なぜ私は、貴重な日曜の午前中を使って、こんな本を読まなければならないのか。
考えるだけで悔しさがこみ上げてきて、頭の芯が痺れるような無力感に襲われ、やりどころのない感情は涙となってしとど流れ落ちました。
この本を読んだ私にできることといえば、同じ苦しみを味わう人が出ないよう、このレビューを投稿すること、
そして苦痛の責任の一端をReader Storeに、ひいては運営するソニーマーケティング株式会社に求め、深い精神的な痛みを慰撫すべき誠実な対応を促すことのみです。 続きを読む投稿日:2014.01.26