Shuttle0131さんのレビュー
参考にされた数
213
このユーザーのレビュー
-
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)
竜田一人 / モーニング
こんな視点があったか…。ちょっと不思議な読了感
6
まさに淡々とした日常として福島原発内での「ある仕事」のシーンが、別に何かに向かって力むでもなく描かれています。この読了感は、正直かなり「さわやか」です。
福島原発での過酷な作業にはこんな種類の、また、…いろいろなレベルでの仕事があるんだと認識させられながらも、それとはまったく関係のない、非常に懐かしい感覚「仕事をするってこんな感じ」だよなあ、というどこかうらやましい思いが強く想起させられました。読後、「福島って…」という悲壮感ではなく(それは、それで考えさせられますが)、それを前向きに受け止め、巧みに咀嚼してしまった後に、いわば「爽快感」みたいなとても素敵で気持ち良い感覚を残します。続きがもっと読みたいです。 続きを読む投稿日:2014.06.29
-
新訂 妖怪談義
柳田国男, 小松和彦 / 角川ソフィア文庫
遠野物語を読んでもわからなかった、柳田がここにいます。
6
この本の位置づけを書いておきます。遠野物語は遠野で語られていた伝承をまとめてありますが、この本は今や妖怪(彼は別の言い方もしてますが)と言われているモノたちの呼び名、中身を全国の伝承を通してまとめてあ…る書です。我々は水木しげるたちによって描き出された「妖怪」に慣れ親しんでいますが、ここで描かれているそのものはその原初のデータです。こうしてまとめられていることは、正直奇跡です。妖怪ファンの方、是非ご一読を。 続きを読む
投稿日:2015.03.15
-
あ・うん
向田邦子 / 文春文庫
生身の人と人が付き合い、生きていくって、やっぱりこういうことかな。
6
門倉と仙吉、そして、たみ。この3人だけではなく、登場する人たちがその日その日を地に足つけて生きている昭和の一コマ。この平成のドライでスマートな生き方ではない、かなり泥臭く、でもエネルギッシュで、人情の…薫る素敵なエピソードが流れるように語られます。あの戦争の後で、失った何か大きなものを感じさせてくれます。大正から昭和初期にかけて、我々は今にはない別のものを確かに持っていたのかも。著者が生きていたらこの先の話も読めたかもしれないと考えるとちょっと別の意味で切ないです。 続きを読む
投稿日:2015.05.05
-
人間ドックの9割は間違い
牧田善二 / 幻冬舎新書
言いたいことはよくわかります、が…。
6
自分にとっての人間ドックの位置づけを改めて考えさせられる本でした。確かに著者が指摘するように惰性で受けているだけだし、本気で何かが見つかるとも思っていないけど、だからと言って、今の時点の技術で、もれな…く、できることを、徹底的に検査しておくというのは、正直ちょっとしんどいです。それとも著者がいうような検査が今後標準になるのだろうか?変な話ですが、この本を読んでいる間、気分が悪く、病気になりそうな感じがしました。 続きを読む
投稿日:2015.07.04
-
楡家の人びと 第一部
北杜夫 / 新潮社
美しい文章に彩られた、あるファミリーの年代記、群像小説です
6
この小説のすさまじいところは、北杜夫自身の祖父から始まるほぼ実在したと思われる人々の話を見てきたように生き生きと描き切っているところです。一体どんな想像力を働かせればこんなことができるのか。いわゆる他…の私小説がかなたに霞みます。昭和を生きた家族のそれぞれの視点の、立場の、境遇の深い洞察と、美しい文章。北杜夫の腹を抱えて笑える小説しか読んだことがなかったので(それはそれで傑作ですが、特に「船乗りクプクプの冒険」とか)この小説は結構衝撃でした。 続きを読む
投稿日:2016.02.10
-
反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―
森本あんり / 新潮選書
これが本場の反知性主義? 日本のは確かに違う
5
私には本当にわからないキリスト教からの道徳規範形成。でもこの本によりマックス・ヴェーバーの比較宗教社会学から見た宗教倫理からの資本主義の産出と同じくらい納得感ありました。かの国と我が国はどのように「親…密な同盟国」なのか?この目線から正直わかりません。わが国の反知性主義はどうやらこれとは違うようなので別考察が必要かも。とはいえ、この本は目を通しておいて損はないと思います。 続きを読む
投稿日:2016.01.02