yomoさんのレビュー
参考にされた数
6
このユーザーのレビュー
-
その女アレックス
ピエール・ルメートル, 橘明美 / 文春文庫
-
だれがコマドリを殺したのか?
イーデン・フィルポッツ, 武藤崇恵 / 東京創元社
欠点もありますが、クラシック本格ミステリのファンなら一読の価値はあります。
1
1924年にイギリスで出版され、創元推理文庫創刊当時に「誰が駒鳥を殺したか?」のタイトルで刊行されたものの新訳版です。なにせ昔の作品なので、現代の目から見れば本格ミステリとしては問題がありますし、イ…ギリスの階級意識が背景にある登場人物の考え方に多くの日本人は今一つなじめないと思うので、「ミステリ史に残る名編」という紹介文は大げさだと思います。しかし、大胆な真相や強烈な犯人像は、クラシック本格ミステリのファンなら一読の価値はあるかと思います。 続きを読む
投稿日:2015.04.16
-
ユダの窓
カーター・ディクスン, 高沢治 / 創元推理文庫
痛快な逆転劇が楽しめる傑作
1
本格ミステリの巨匠・ジョン・ディクスン・カーの代表作の一つ(というか、カーター・ディクスン名義ではたぶん一番有名な作品)が創元推理文庫で登場です。裁判で殺人事件の被告を弁護することになった名探偵ヘン…リ・メリヴェール卿ですが、状況は圧倒的不利。プロローグの描写で読者には被告が犯人ではないはずと分かっていますが、裁判が進むにつれ、ますます被告以外に犯行は不可能なように見えてきます。もちろんこのまま裁判に負けては話にならないので、後半逆転劇があるのですが、不利な状況をひっくり返していく手腕が素晴らしい。痛快な気分が味わえる傑作です。
ただ、密室トリックが有名な作品ですが、それにはあまり期待しないほうがいいかも。昔ハヤカワ・ミステリ文庫版で読んだとき、正直肩すかし感がありました。いや、素晴らしいトリックだという意見もあると思いますが。
あと、ハヤカワ・ミステリ文庫で新訳するという話があるので、そちらで揃えたいという人は待ったほうがいいかもしれません。 続きを読む投稿日:2015.09.06
-
領主館の花嫁たち
クリスチアナ・ブランド, 猪俣美江子 / 東京創元社
本格ミステリではなく、あくまでゴシック小説
1
本格ミステリの名手の作品ですが、この作品はあらすじにも書かれているように「ゴシック小説」です。単行本が出たとき、そうは言っても本格ミステリ要素があるのではと期待して読んで、面白かったもののやや肩透か…し感がありました。まあちょっとした仕掛けはあるのですが、そちらにはあまり期待せず、ゴシック小説としてヒロインたちがどうなるかドキドキしながら読むというのが適切だと思います。
同じ作者の「猫とねずみ」みたいに強烈に怖い話ではないので、「予測不能、美麗にして凄絶なるゴシック小説」というのはやや大げさだと思いますが、筆力の高い作者なので面白く読めます。 続きを読む投稿日:2016.12.18
-
怪盗ニック全仕事2
エドワード・D・ホック, 木村二郎 / 東京創元社
安定して楽しめる
1
怪盗ニックシリーズ全集の第2弾も安定して楽しめます。紹介にあるとおり、今回変化球エピソードが多いし、そういうチャレンジ精神は好きですが、一番のお気に入りは「海軍提督の雪を盗め」ですね。雪が足りないス…キー場のため近くの雪の多い山から雪を盗むという話。大胆な盗みの手口とやや異色の結末が効果的です。盗みの手口としては、わずかなチャンスを活かす「マフィアの虎猫を盗め」や、盗みを繰り返すことで次第に条件がきつくなっていく「将軍のゴミを盗め」に感心しました。 続きを読む
投稿日:2017.05.05
-
怪盗ニック全仕事3
エドワード・D・ホック, 木村二郎 / 東京創元社
ある意味ここからが本番
1
怪盗ニックシリーズ全集の第3弾です。これまでの「1」と「2」の計30編は早川書房版の短編集でほぼ読めるので、今まで読んだことがない作品を読みたいというファンにとってはこの「3」からが本番かも。収録1…4編中まったくの初訳は4編だけですが、雑誌やアンソロジーに載っただけの作品が数編あるので、かなりのファンでも半数くらいは初めて読む話のはずです。
一番気に入ったのは「ゴーストタウンの蜘蛛の巣を盗め」。蜘蛛の巣を盗むって…シリーズ屈指の「変なもの」を盗む話だと思いますが、ちゃんと理由があります。他には、ニックが日本を訪れる「駐日アメリカ大使の電話機を盗め」(ホテルオークラとか三越百貨店とか出てくると何となく嬉しい)や、ニックと恋人グロリアの関係にある変化が起こる「きのうの新聞を盗め」あたりが注目です。
ところで、「1」と「2」が15編ずつなのに「3」が14編収録の訳は「4」で分かります。
続きを読む投稿日:2017.05.05