keyuraさんのレビュー
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四月は君の嘘(2)
新川直司 / 月刊少年マガジン
祝連載完結&最終巻刊行
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わたくし的には裏読みを許して呉れる懐の深い作品でした。永遠の女性ベアトリーチェ・糟糠の妻ジェンマ・母ベッラ、三人の女性の愛と献身の物語として、ベアトリーチェの裏ストーリィを上書きした少女マンガとして楽…しませて頂きました。鬼と化した母に奈落に突き落とされた少年ダンテ。前門の黒猫後門の黒猫に阻まれて進退窮まつた彼の前に輝ける光の導き手として降臨したのは永遠の女性ベアトリーチェその人だつた。彼女は「付いて来い」と言つて彼を音無き闇のみなぞこから引き摺り上げると、「さあ、旅に出よう」と言つて音楽と云ふ自由の世界の旅へと彼をいざなつた。二人は最強のコンビ。比翼の鳥となつて音楽と云ふ自由の空の高みへと何處迄も何處迄も翔け昇つてゆく筈だつた。しかし、天が二物も三物も惜しみなく与へ彼をして「君は自由そのものだ」と言はしめた彼女にも致命的な弱点があつた。審査員が何でこんな子が無名なのだと驚き、彼女が同じ学校の生徒であると彼が知らなかったのもそれが原因。彼が少年Aでなければならなかつたのもさう。彼の音楽は教室の片隅で彼の上着を掛けられて微睡む彼女に捧げられたものになつた。音楽の話としてはこれでお仕舞ひ。さて、結果的に富と名声に囲まれて世を去つた彼は気付けば見覚えのある公園に立つてゐた。遊具の上で彼女がリコーダーを吹いてゐる。ケホケホとむせた彼女は目尻を拭ふと顔を上げて彼に目を向けると、ニヤつと笑つて言ふ。「やあ、少年A」。言葉も無く立ち尽くす彼に手を差し伸べて言ふ。「さあ、旅に出よう」。嗚呼、再びこの手を取ることをどれ程夢見たことか。それこそは彼のすべてであつたのだから。中断してゐた旅が始まる。と、作品は作品として、わたくし的にはこれが結末です。 続きを読む
投稿日:2015.05.22
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プラナス・ガール1巻
松本トモキ / 月刊ガンガンJOKER
いい時代になりました・・・
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ひばりくんと違つて堂々と男宣言して男の娘する設定にリアリティがある時代に遭遇出来るとは・・・隔世の感があります。いやあいい時代にになつたなと・・・sexはdestinyだけどgenderはchoice…であると・・・正に自由の真髄・要諦ここにあり。其れを受け容れる人々と其の社会に限り無き敬意と憧憬とを抱くかずにはゐられない。実はソニーポイントで只のゲット出来るの探してて変はつたタイトルに惹かれて入手したのだけど、これが大正解。即続編全てを大人買ひしてもう何十辺読み返したか知れない。何て本を見る眼があるんだらう。極私的目利きだな。自分でもまさかここ迄とは思はなかつたな。要は自分が面白ければよい。ほかの連中なんて関係ないよと、ひょっとして言つてはいけなかつたか・・・時代の最先端、男の娘を図らずもchoiceする自分てもしかしなくても凄いんだ! 続きを読む
投稿日:2014.06.12
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四月は君の嘘(1)
新川直司 / 月刊少年マガジン
いつもポケットにクライスラー
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誰も来てゐない。子供の遊びにまぜてもらふ。彼は来るだらうか。来る。彼女が引きずつてでも連れて来る。合奏で鳩が寄つて来る。子供達がはしやぐ。いきなり風に煽られ、膝を押へる。「春一番だ!」子供達の歓声。レ…ギンス、枝に掛けたままだ。顔を上げると、ケータイを構へた彼と目が合ふ。最悪。私の怒りが彼の顔面に炸裂し悲鳴が上がる。二年待つた。もう待てない。待ちたくても待てない。「わたしのピアニカ!」女の子が声をひきつらせる。どうしてやめてちやつたの。ひとの夢をどうしてくれるッ。「ボクのピアニカも」男の子がべそをかく。大丈夫。ぶつけたりしないから。振り回して迫る。今度は恐怖の悲鳴。楽器を武器にするな? いい科白だ。「俺のリコーダー」男の子のひきつった声。安心して。振り回さないから。馬乗りになつて締め上げる。彼の苦しげな顔を見てると何だか口許がほころんで来る。君を知らない者はゐない。誰もが君に憧れた。でも、君は誰も知らない。覚えてゐて欲しい。忘れないでゐて欲しい。さう想ふ。闇よ、墜ちるなかれ。さう切に願ふ。世界はいろどりを取り戻し、カラフルに息づき始める。リコーダーを握る手に力が籠る。呼んでゐる。来た。役者は揃つた。猫をかぶるとしよう。さあ開幕。叶へて見せる。私の最期の夢。 続きを読む
投稿日:2015.01.16