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マリアビートル
伊坂幸太郎 / 角川文庫
殺し屋たちの狂想曲の正統進化
16
前作の『グラスホッパー』と違い,登場人物全員が殺し屋業界もしくは悪意にどっぷりと浸かっています.とんでもない奴らが主役を務めているのにも関わらず,どの人物にも魅力があり単純なダークヒーロー的な作風にな…っていないのも評価が高いです.また,唯一読者に魅力を感じさせず悪に徹する中学生の存在も新幹線という閉鎖された空間と相まって,緊張感を醸し出しています.前作の登場人物がチョコチョコと出てくるので読んでおいた方が楽しめる部分は増えると思いますが,作品の面白さはこちらの方が上なので,読まずとも十分に楽しめると思います. 続きを読む
投稿日:2013.10.20
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英傑の日本史 激闘織田軍団編
井沢元彦 / 角川文庫
独自の視点からの歴史人物観
4
学術的な文献ではないため裏付けや根拠に乏しいところが多いのですが,その分主観が多く反映されていて読みやすい歴史本になっています.
多くの歴史書で本能寺の変とともに退場してしまう信長以外の織田一族や織田…家臣についても,それぞれ所見を述べており,敗者にもある程度フラットな視点を向けるようになっています.
歴史好きな人が語る話が好きであれば,興味深く読めると思います. 続きを読む投稿日:2014.02.19
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アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック, 浅倉久志 / 早川書房
一読しただけでは分からない
3
これを原作とした映画『ブレードランナー』はSF映画の金字塔と呼ばれているそうですが,何となくそれが分かる内容です.
アンドロイドを狩る側と狩られる側の心理を多分に哲学的に書いています.
私の知りうる…限りでの比較となりますが,アニメ『攻殻機動隊』が近い世界観をしているのかなと思います.ただ,アクションなどの娯楽シーンはほとんど無く,現代のアニメや映画に慣れ親しんでいる自分としては物足りなさを感じてしまう部分もありました.しかし,物語の奥深さは先述の作品群と比較にならないほどの広がりをもっていると感じます.
一度読んだだけだと高い評価はできませんが,手元に置いておいて何度も読み返してみたくなる魅力を持った作品だと思います. 続きを読む投稿日:2013.11.10
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疾走(上)
重松清 / 角川文庫
闇に墜ちる少年の心理
2
まっとうな少年があっという間に転落していく過程を二人称による独特の語りとともに書かれた作品です.最後まで救いがあるわけでなく一貫して闇を書いているという点は,同じく少年犯罪を書いた貴志祐介氏の『青の炎…』と対照的な作品だと思います.少年の結末を回避する方法は無かったのかと考えさせられる作品でありました. 続きを読む
投稿日:2014.01.25
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絡新婦の理(1)【電子百鬼夜行】
京極夏彦 / 講談社文庫
蜘蛛の名が示す犯行
1
すべてが犯人の思い描く図面の上にのる-女郎蜘蛛(絡新婦)の名が示す通りの巧緻な犯罪が繰り広げられ,中盤まではその展開に期待させられます.しかし,解決へと向かう終盤では新規登場人物が少ないことも相まって…,終結の大方の予想がつき,壮大な犯罪の割には意外性もなくあっさりと終わってしまいます.シリーズもの故の悪い点が出ている部分はありますが,蜘蛛の気味悪さまでを巧みに表現したよいミステリ作品だと思います. 続きを読む
投稿日:2014.01.25
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世界でもっとも美しい10の科学実験
ロバート・P・クリース, 青木薫 / 日経BP
美しい実験とは
1
高校,中学での物理,化学の教科書や資料集で一度は目にしたことがある実験を詳細に掘り下げたというのが本作であります.美しいものとは多面性を持つもので,他人に説明されたところで分からない部分は分からないで…しょう.本作に紹介されている実験もその例に漏れることはなく,基礎実験に面白みを感じられない人にとっては退屈な内容となるでしょう.ちょっとした理系の専門書を読むのに抵抗がないなら,読んでみるといいかもしれないです. 続きを読む
投稿日:2014.01.25