通りすがりの読書家さんのレビュー
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楽園の日々 アーサー・C・クラークの回想
アーサー・C・クラーク, 山高昭 / ハヤカワ文庫SF
巨匠の青春時代?
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クラークとはいえ、エッセイなのだから軽く読み終えるだろう…
と、たかをくくって読み始めたのですが、意外にもボリューム満点でした。
内容は、若い頃に影響を受けた様々なSF作品に関しての私感を、当時の思…い出、あるいは人物との出会いや交流などを交えながら描かれており、スタンリー・キューブリックやロバート・A・ハインラインといったSF界における重鎮達が次々と登場します。
中でもあのクトゥルフ神話で有名な、H・P・ラヴクラフトにまで言及されていたのは、私には意外な驚きでした。
そういえば、クラーク氏の作品「幼年期の終わり」や「宇宙のランデヴー」などはラヴクラフトっぽい雰囲気もあるかな~…
などと勝手に妄想しながら楽しく読むことができました。
古典SFファンなら迷わずオススメです。 続きを読む投稿日:2015.11.28
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ダンタリアンの書架1
三雲岳斗 / 角川スニーカー文庫
アニメをみた人も楽しめます
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アニメ化されている作品ですが、ダリアンの服装設定など、所々に違いがあって、
原作はこうだったのか!などと発見で楽しむのもあり。
また、本作品の魅力は、登場人物も含め、その独特のダークでミステリアスな…世界観にあるように思います。
第一次世界大戦後の英国が舞台となっていることが、我々日本人からすると、異世界的な趣を醸し出していて、
"この世に有りうべからざる禁断の書物"や"悪魔の書架"などといった設定が違和感なく溶け込んでいます。
登場人物たちも、それぞれに魅力的で、特に本1巻においては第5話に登場する焚書官ハルと相棒のフランが、
主役級の存在感を漂わせており、今後ダリアン達との関わり合いがどうなるのか楽しみです。
この1巻では第1話と2話、そして断章がアニメ化されていないので、そこも読み甲斐のあるところです。
ともあれ、読む人によって、独特の世界観が好きか嫌いかにハッキリ分かれる作品と思いますが、
私はお気に入りです。
続きを読む投稿日:2015.04.15
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バビロニア・ウェーブ
堀晃 / 東京創元社
ハードSFらしい作品
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現実世界では先日、13億光年彼方の重力波を歴史上初めて観測することに成功した、というニュースで持ちきりになりました。
そのあまりにも巨大なスケールと人類の偉業には感嘆するばかりです。
この作品は太陽…系から3光日の距離に謎のレーザー光束を発見した人類が受けた恩恵と、それよりも謎を探りたい科学者達の行動が描かれています。
科学者達が何か実験を進めようとするたびに予期せぬ事態が発生…
いったいバビロニアウェーブとはなんなのか?
読む者に様々な想像をさせる作品だと思います。その一つのヒントになるエピソードで作品は終わり、将来の人類と宇宙のあり方に希望をもたらしているところも良かった。
また主人公が科学者ではなく、太陽系内の貨物定期航路パイロットであるところも秀逸で、生い立ちや性格などもよく練られていると思う。
全体的には他のレビュアーの方も書かれているとおり、何者かの意思を感じさせるような不気味な展開にはアーサー・C・クラーク氏の”2001年宇宙の旅”を彷彿され、サスペンス的要素もあって楽しめた。
続きを読む投稿日:2016.02.14